[PR]

■消費伸び、上がる価格

 Q 資材の価格が高騰していると聞くよ。鋼材も上がったのかな?

 A 鉄でつくった板や棒、管など、製品全体を「鋼材」と呼んでいるんだ。新日鉄住金の場合、鋼材1トンあたりの平均価格は、2013年度上半期(4~9月)が8万4400円。12年度下半期(12年10月~13年3月)の7万7700円と比べ、6700円の上昇だ。

 Q なんで上がったの?

 A まず、国内の消費量が伸びたからだ。被災地の復興需要にくわえ、自動車メーカーが使う量も増えている。昨年末からの円安で、車の国内生産が増えているからね。経済産業省の予測では、13年の国内の粗鋼生産は前年比3・4%増の1億1091万トンだ。

 Q 円安で鉄の原材料・鉄鉱石の輸入価格も高くなっているよね?

 A それもある。鉄鋼メーカーは原材料の上昇分を鋼材価格に転嫁しはじめている。安い海外の鉄の輸入が円安で約5%減る一方で、国内の消費量は増えている。値上げは、徐々に受け入れられている。

 Q 鉄鋼メーカーの業績にはプラスだね。

 A 新日鉄住金と神戸製鋼所の13年9月中間決算は、前年同期の赤字から黒字に転換した。JFEホールディングスも大幅増益になった。各社ともに業績が急回復している。

 Q 鋼材の値段はこれからも上がりそうなの?

 A 国内の鋼材消費はまだ堅調だ。でも、価格上昇のもう一つの理由、原材料の輸入価格は落ち着いている。為替相場は1ドル=100円前後で推移している。中国の景気減速などで、海外の鉄鉱石相場は下がってきた。今後の鋼材価格の動きは読めないね。

■価格交渉は大手2社主導

 Q 鋼材の価格はどうやって決まるの?

 A 鋼材は種類が多いけど、売る側も買う側も限られた企業だ。多くの人が参加する株式市場のような取引所はなく、鉄鋼メーカーと買い手の交渉で決まる。注目されるのは、鉄鋼最大手の新日鉄住金と、鉄を大量に使うトヨタ自動車の「チャンピオン交渉」だ。

 Q その2社はどうやって交渉するの?

 A 毎年6月と12月ごろ、原材料価格の変動や鋼材の販売状況などをもとに値決めをしている。2013年度上半期(4~9月)の交渉は7月下旬まで続き、1割ほどの値上げで決着した。値上げは2年ぶり。ここで決まった価格が、ほかの企業との交渉に影響を与える。

 Q なぜ、こんなやり方を長く続けているの?

 A 交渉力ある最大手同士が値決めするので、お互いの業界の環境を踏まえ、両者が納得できる水準を決められる。これが指標になることは、ほかの企業にもプラスがある。

 Q 何か閉鎖的だね。海外メーカーが安値で売り込んでこないの?

 A 自動車向けなど高度な技術が必要な製品は、特定の会社同士のつきあいが深く、よそから商品が入って来にくい。だから、こういう日本独自のやり方が成り立つんだ。以前、交渉は数年に1度しかなかった。価格を頻繁に変えるより、安定した方がお互いに利点があるからだ。

 Q 今はそんなわけにいかないね。

 A 鉄鉱石など原材料の価格は大きく揺れ動く。しかも、悠長な値決めをしていては、使う方のメーカーの国際競争力が落ちる。さすがに昔みたいなやり方は、通用しないね。

■過剰生産が悩みのたね

 Q 鉄鋼メーカーの業績回復は続くのかな?

 A 国内は好調だが、世界では厳しい競争が続いている。中国の鉄鋼メーカーが急速に生産量を増やし、世界的に鋼材は余り気味だ。国際的には、鋼材の価格は下がる傾向だよ。

 Q 中国の生産量はそんなに伸びているの?

 A 世界鉄鋼協会によると、2013年1~9月の中国の粗鋼生産は前年同期比8・0%増の5億8700万トン。伸び率は日本の5・7倍。生産量は日本の約7倍で、世界の半分近くを占めるまでになった。

 Q 中国メーカーは過剰生産で自らの首を絞めることにならないの?

 A 中国も経済成長率が鈍化し、政府は過剰生産の問題点を認識している。でも、各地の鉄鋼メーカーは競うように生産設備を増やし、なかなかコントロールできない。日本の鉄鋼大手は「あと10年ぐらいは鉄余りの状況が続くのでは」とみている。

 Q 国内と違い、海外は苦しい状況が続くね。

 A 海外は鉄鋼の消費量が伸びる市場だが、価格競争は国内以上に激しい。今は円安で一服しているが、海外からの安い鋼材が日本に再び大量に流れ込むことも、日本の鉄鋼メーカーは心配しているよ。

 Q 日本のメーカーは今後どうするの?

 A 世界で対抗できる規模を持つため、昨年10月に旧新日本製鉄と旧住友金属工業が合併した。さらに、自動車向けの高級鋼板など、価格競争の影響を受けにくい製品を追求している。ただ技術面でも中国などがいずれ追いつくとの危機感もある。研究開発の強化も日本メーカーの課題だね。(この項は大畑滋生が担当しました)