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■半導体産業を支える黒衣

 Q 「半導体製造装置」の業界で大きな再編があるんだって?

 A 世界首位の米アプライドマテリアルズと同3位の東京エレクトロンの経営統合だね。日米の大手2社が国境を越え、来年後半に統合を目指している。

 Q 半導体製造装置ってそもそも何のこと?

 A 文字どおり、テレビやデジタルカメラ、携帯電話、パソコンと幅広い電子機器に使われる半導体をつくるための機械のことだね。半導体のメーカーとしては米インテルや米クアルコム、韓国サムスン電子などが有名だけど、こうした企業の工場は最新の半導体製造装置でいっぱいだ。

 Q どのくらい種類があるの?

 A 半導体をつくる過程は主に二つある。円盤の形をしたシリコン製の素材に細かい回路を焼き付ける「前工程」と、細かくカットして製品の形に組み立てる「後工程」だ。不純物を洗い流すといった作業もあり、一つの半導体ができるまで数百種類の装置が必要とも言われるよ。

 Q たくさんあるね。

 A どの工程の装置を得意とするかは各社で違って、製品に不具合がないか調べる検査装置など、1種類だけを専業にするメーカーが多い。ただ経営統合する東京エレクトロンと米アプライド社はいわば総合メーカーで、世界シェア上位の装置がいくつもある。

 Q なるほどね。

 A いろいろな電子機器が店に並ぶのも半導体製造装置のおかげだし、装置の性能が高ければ半導体もその分、安くつくれる。家電量販店に行っても装置そのものを目にすることはないけど、暮らしを支える大きな役割を果たしていることは間違いないね。

■存在感強い日本メーカー

 Q 日本メーカーの競争力は高いのかな。

 A そうだね。米調査会社VLSIリサーチの2012年世界売上高ランキングをみると、3位に東京エレクトロンが入ったほか、アドバンテストや大日本スクリーン製造など日本メーカーが上位15社のうち8社を占めた。日本メーカーは合計で世界シェアの約4割を占めているよ。

 Q なぜ強くなったの?

 A 日本の半導体業界の成長とともに伸びた。日本勢が強かった1980年代に、国内半導体メーカーと蜜月の関係で最先端の装置を開発し、力を付けたんだ。日本の半導体はその後、日米摩擦による輸出規制の影響などで海外勢に押されたが、装置メーカーはその海外半導体メーカーに積極的に売り込み、競争力を保ち続けたんだ。売上高に占める海外比率が7割以上という企業も多い。

 Q 装置で強みを発揮できたのはなぜ?

 A 工場で安定して動くための充実したサポート体制が必要で、長年の信頼がものをいう。だから装置の市場は、先駆者の日本と米国の企業が今でも世界市場の8割近くを占める。韓国などアジア勢のシェアも伸びてはいるけど、まだ3%ほどだ。

 Q 日本勢は今後もシェアを保てるかな。

 A 国際的な競争は激しいね。例えば、基板に回路を焼き付ける「露光装置」ではオランダ企業が力を付けて、この10年で日本勢はシェアを大きく落とした。一方、不純物を取り除く「洗浄装置」など日本勢がシェアを伸ばしている装置も多い。最近、成長が著しい韓国や台湾の半導体メーカーにどれだけ装置を使ってもらえるかもかぎになりそうだ。

■開発費増で世界再編へ

 Q 半導体製造装置の市場は今後どうなるの?

 A お客さんである半導体メーカーが新しい製品をつくるために装置を新しくするサイクルが大きく影響する。ここ数年はリーマン・ショックの影響で設備投資が抑えられていたけれど、今年後半から来年にかけて市場は拡大していくと予測されている。

 Q 先行きは明るく見えるけど、米アプライドマテリアルズと東京エレクトロンの世界大手2社はなぜ経営統合するの?

 A 中長期的には業界を取り巻く環境が順風とはいえないからだ。基板に書き込む回路をどんどん細かくする「微細化」は限界に近づきつつあり、技術開発もどんどん難しくなっている。多くの半導体を使うスマートフォンやタブレット端末が急速に普及し、半導体もより「小さく、かつ高い機能」が求められる。開発にもお金がかかる。

 Q なるほど。

 A そこで、2社が一緒になれば開発の負担が減らせる。両社の技術を持ちよれば大きな技術革新が起こせる、と説明しているよ。

 Q うまくいくのかな。

 A 今のところは見通せないね。両社はオランダに親会社を作り、2社がその傘下に入る形で「対等の経営統合」をうたっている。ただ、日米で違う企業文化の融合がうまく行くかなど課題も多いよ。

 Q 今後も再編が続くのかな?

 A 世界大手2社の経営統合の決断は、業界の内外で驚きを持って受け止められた。業界の厳しさを実感しているメーカーも少なくない。危機感を持ったメーカーが新たな再編に動く可能性は十分に考えられるね。(この項は田幸香純が担当しました)