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■渋滞や危険軽減に一役

 Q 車の電子情報という言葉を聞いたよ。何のこと?

 A 自動車メーカーなどが持っているカーナビの走行記録など膨大な電子情報のことだよ。ビッグデータとも呼ばれているね。情報技術の進歩やナビの性能があがり、活用が広がり始めているんだ。

 Q どんなことができるのかな?

 A 渋滞を避けて、すいた道を通ってスムーズに目的地に行けるんだ。運転時間が約2割短くなり、燃料消費が減ったことで車から出るCO2を16%減らすことができたという検証結果があるよ。

 Q すごいね。どんな仕組みなの?

 A 車メーカーは、各地で走っている車のナビと通信して、どこをどのぐらいのスピードで走っている、といった現在進行形の情報をホストコンピューターに集める。国道など幹線道路だけでなく道路網の端々まで車の流れを把握して、これまでに蓄積してきた膨大なデータで割り出した渋滞パターンとも比べて分析。渋滞しそうな場所と時間を予測して、各地の車に混まない道を案内するんだ。

 Q 便利なんだね。ほかには何ができるの?

 A 事故の防止にも一役買っているよ。ナビからはどこで急ブレーキをかけたという情報もあがるので、道路に危険が潜んでいるブレーキ多発地点が分かる。そこにさしかかる前に運転者に注意を促すナビもあるんだ。

 埼玉県はホンダのデータで判明した急ブレーキ多発地点を調査。路面に「速度注意」の表示をしたり、木の枝で見通しが悪かった所は伐採したりした。その結果、急ブレーキの回数は約7割減ったんだ。

■災害活用で広がる可能性

 Q 渋滞を避けるのと事故を防ぐほかに、何に使われているのかな?

 A 災害時の活用も始まっている。東日本大震災では、食料など支援物資の輸送に役立ったんだ。新しい電子情報の活用法として注目を集め、10月に東京で開かれた、ITS(高度道路交通システム)世界会議でも初めて重要テーマになったんだ。

 Q 大震災ではどう使われたの?

 A 震災直後は、津波や地震で、どの道が通れるのかすら分からない状態だった。そこで自動車メーカーなどは、車の走行記録をもとに通れる道を示した電子地図をつくり、震災直後から携帯電話でも見られるようにインターネットで公開した。このルートを参考にして、各地から多く支援物資が運ばれたんだよ。一方、車の走行記録から当時の被災地の状況も分かりはじめてきたんだ。

 Q どんなこと?

 A データを使った東北大学などの研究で、震災直後、被災地の海岸部の道路が避難する車で大渋滞していたことが判明した。ほとんど動けない状態の車が、津波に遭ってしまっていたんだ。研究は続いていて、新しい避難計画の策定などに役立てようとしているよ。

 Q 大震災の経験は生かされるのかな?

 A その機運は高まってきているよ。車メーカーの走行記録と、警察や消防など公的機関が持つ事故や火災などの情報をつきあわせれば、より正確な電子地図ができる。よりスムーズな避難や物資の輸送ができるようになるよね。東京都は車メーカーと協力して、こうした仕組みづくりを研究していて来年度中の運用開始を目指しているよ。

■情報保護、共通化に課題

 Q これから、車の電子情報の活用は広がっていくのかな?

 A トヨタ自動車が6月から自治体や企業向けにデータの販売をはじめるなど、商業利用も始まっているよ。ナビの走行記録から車の通行量の時間帯ごとの変化やピークが把握できれば、人やモノが集まりやすい場所や時間が分かる。

 自治体向けは、防災計画やハザードマップをつくる際の基礎資料などに活用される見込みだ。企業向けはショッピングセンターなどの出店場所の選定や、トラック輸送など物流の効率化が期待されているよ。

 Q 走行記録から新しいビジネスが生まれたり、経済効果がでたりするということ?

 A そうなんだ。車を含めた多様で膨大な電子情報の活用で、国の情報通信白書は「年間7兆7千億円の経済効果が見込める」と試算している。

 Q すごいね。普及への課題は何かな?

 A 車にかぎらず、膨大な電子情報の利用では住所、生年月日などの個人情報やプライバシーの保護を徹底することが必要だね。また、災害時利用ではデータの収集と分析に迅速さが求められる。そのためには公的機関や民間各社で、それぞれ異なるデータ収集システムなどの共通化も課題だね。

 Q 走行記録の利用でプライバシーは守られているのかな?

 A 車のナビデータを活用する際、個人情報保護法に基づいて、車の持ち主を特定しない仕組みになっている。「誰の車」がいつ、どこを通ったという情報ではなく、「1台の車」の走行記録として利用しているんだ。(この項は大和田武士が担当しました)