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■今年は「連戦連勝」

 Q 今年は株価が上がって、株式市場は盛り上がったね。新しく上場した会社も多かったと聞いたよ。

 A 今年の新規上場は58社。去年より増えたのは10社で、急増とまでは言えない。上場するには、取引所の審査だけで2カ月かかる。さらに過去2年分の会計監査も必要だ。「市場が好調だから、上場しよう」と思い立っても、すぐにできるものじゃないんだ。ただ株高が、上場を準備していた会社の背中を押しているのは間違いないね。

 Q 58社は多いの?

 A ITバブルの2000年には楽天など200社超が上場した。その後も120社超の水準で推移した。でも08年のリーマン・ショックで急減。09年にはわずか19社まで減って、低迷していたんだ。

 Q ふーん、回復の途中という感じだね。

 A そうだね。しかし今年は勢いがあった。11月末までに新規上場した37社をみると、市場で初めて付いた株価(初値)が、上場直前に株式を投資家に売り出した価格(公開価格)を全て上回ったんだ。上場した途端に株価が上昇しているわけだから、投資家が「株価がさらに上がる」と見て買いに来ているということ。証券業界は「連戦連勝で、今年は全勝か」と、活況に沸いている。「勝率」は例年8割ほどで10、11年は5割程度だったから、確かに勢いはあるよね。

 Q 初値は公開価格より、どれくらい高いの?

 A 平均2・5倍にもなっている。最も高かったのは、ジャスダック上場のバイオ企業でiPS細胞の研究試薬などを手掛けるリプロセル。公開価格が3200円のところ、初値が1万7800円と5・6倍だ。ちょっと過熱気味だね。

■安い?公開価格

 Q 初値が高いのはわかった。でも、なぜ公開価格なんていうのがあるの?

 A 会社は上場直前に、新株を発行して活動資金を集めたり、創業者らが持っている株式を売って「創業者利益」を得たりするが、公開価格はそのときの株価だ。上場するには、会社は定められた株主数を満たすことなどが求められる。だから上場前に株価を決めて、売買する必要があるんだ。上場時の売買価格の参考という意味もある。

 Q 価格はどうやって決めるの?

 A まずは上場する会社が、証券会社と協議して「想定価格」を提示。収益性や類似企業の株価などを考慮して決められる。その後、機関投資家の意見や需要動向を調べたうえで想定価格を調整して決めるんだ。ブックビルディングとも呼び、1カ月ほどかける。上場前、この公開価格で機関投資家や個人投資家からの申し込みを受け付ける。最近は応募が多く、抽選が行われる。

 Q 初値と公開価格がこんなに差が付いていいの?

 A 初値が高いことは、市場では「成長性が評価された」と受け止められ、経営者にとってもうれしいことなんだ。株価が高ければ、新株を出して資金を集めるときも有利だ。ただ、「もっと高くてもよい」と、公開価格に不満を持つ経営者も少なくない。創業者利益に直結するからね。

 Q そうでしょう。

 A 公開価格は、類似企業の株価から最大3割程度も低いという指摘もある。業界では「IPOディスカウント」と呼ばれている。新規上場の会社は、実績がない場合も多い。株式を売る証券会社にとっては、公開価格が安い方が売りやすいという声もあるね。

■2年後には100社超?

 Q そもそも、会社にとって上場のメリットは?

 A まずは資金調達だ。時価総額で今年最大の上場銘柄はサントリー食品インターナショナル。上場時に新株を発行して2800億円を調達し、欧州での企業買収などに充てた。

 Q ほかには?

 A 社会的信用の向上もあるね。新規上場をIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)と言うが、まさしくパブリックな存在、公器となることだね。11月20日に電子書籍取り次ぎのメディアドゥがマザーズに上場した。藤田恭嗣社長は「ライバル企業は大手の傘下にあり、信用力で差があった。上場によって取引先に安心感を与えることができる」と話した。藤田社長は大学3年生のときに事業を始め、今年で20年。上場を目指してやってきた。「やっとこの日を迎えることができた」と感慨深げだった。

 Q 新規上場が増えれば日本経済に活力が生まれるね。

 A その通り。業界関係者は「IPOは社会に貢献し、その仕組みを変える力を持っている」と力説する。実際、東証の上場企業は約3400社あるが、上場後20年以内の会社が半分を占めるんだ。歴史のある企業も大事だけど、新陳代謝は確実に進んでいる。新しい時代には新しい会社が必要なんだ。

 東証も2年前にIPOセンターを作って、新規上場を目指す会社の相談に乗ったり、説明会を催したりしている。金融庁も上場に必要な決算書や内部統制の手続きを緩め、負担を減らす考えだ。現在の経済情勢が続けば、IPOは2年後には100社を超えるという予想もあるよ。(この項は加藤裕則が担当しました)