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プロ野球・横浜の買収に意欲 USEN宇野の膨張力

(AERA:2005年10月31日号)

 ライブドアや楽天の派手な動きに目を奪われがちだが、ネットと放送の融合で、最も先行しているのはUSENだ。(AERA編集部・大鹿靖明)

  ◇      ◇

  来客を見送りにエレベーターホールまで足を運び、深々と頭を下げる。老舗企業では珍しくない光景だが、若くして成功した新興企業の経営者の中でそんな芸当が自然に板についているのが、USEN社長の宇野康秀(42)だ。

  明治学院大在学中に学生イベントの運営に携わり、卒業後、リクルートコスモス勤務を経て人材派遣会社インテリジェンスを創業する。後にジャスダックに上場する同社からは、宇野を兄貴分と慕うサイバーエージェント社長の藤田晋が巣立っている。

●「負の遺産」を整理

  父親は有線放送界のガリバー、大阪有線放送社(現USEN)を起こしたが、電柱に無断でケーブルを張るなど違法営業が常態化。1985年には当時の郵政省の業務停止命令を無視して営業を続けたことで、大阪府警に逮捕されたことすらある。98年に急死した父の後を継いで急遽登板した宇野が真っ先に取り組んだのが、この父の「負の遺産」の整理だった。

  「2〜3年前に宇野くんが『どうもすみませんでした』と謝りにきた。億円単位の迷惑料を払うことで合意しました」

  無断で自社放送を録音されて有線放送で流されてきた在京ラジオ局の元幹部は、そう振り返る。宇野は電力会社や放送局などに違約金や賠償金を支払うことを約束して、関係を改善。過去の整理に数百億円もの特別損失を計上してきた。そんな宇野からすると、ライブドアの堀江貴文や、今回の楽天の三木谷浩史のような、挑戦的スタイルはとりにくい。宇野は楽天の社外取締役を務めるが、楽天によるTBSへの提携申し入れに関する取締役会決議の際には、離席して決議には加わらなかった。

  「堀江さんによって『ITとメディアの融合』が一般に広く浸透した功績はありますが、そのスピードがあまり性急でもいけないんです。堀江さんは1割でも可能性があればトライするが、ボクは8〜9割の確証がないと動かない。いろんな『立ち位置』があるんです」

  今春、アエラのインタビューにもそう答えていた。

●仲間になって共通言語

 
宇野がとった手法は、よそ者として突如乱入するのではなく、業界内の仲間になることで相手の警戒心を解くことだった。

  昨年には、内紛で揺れたレコード会社エイベックスの筆頭株主となるとともに、赤字が慢性化していた映画配給会社ギャガ・コミュニケーションズを傘下に収めた。映画や音楽業界に橋頭堡を築いたところで今年4月、日本初のパソコンテレビGyaO(ギャオ)を始めた。登録した視聴者はすでに300万人にのぼり、ネットによる動画配信サービスでは抜きんでた地位を築いた。

  「業界内の仲間になることで『ITの連中って分かってないな』という反発を抑え、コンテンツの権利保持者の感覚を理解できるようになる。そのときに初めて、共通言語で話せるようになるんです」

  むちゃはせず、老舗映画会社の日活の買収交渉では、日活労組の猛反発を受けると、結局あきらめている。一方でTBSとは良好な関係を築き、過去の映像資産をギャオに提供することに最も積極的なのがTBSと毎日放送だ。

  時価総額自体は新興ヒルズ系の会社より劣るが、前身から40年の歴史がある会社だけに、売上高は1541億円(05年8月期)と、ライブドアや楽天の3〜4倍。だが、他のIT起業家と比べて、押し出しがいまひとつ弱く、周囲からは「堀江さんや三木谷さんのようにもっと前面に出てほしい」という声があがっていた。

  その宇野が10月20日の記者会見では、楽天がTBSと共同持ち株会社を作り、横浜ベイスターズが売りに出ればという、二つの「もし」の前提つきで、こう語った。

  「ベイスターズと資本関係を結ぶなど、何かご一緒にできればいいなと思っています」

  宇野からすると最大限踏み込んだ発言だろう。(文中敬称略)


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