アサヒ・コム ここから検索メニュー
検索使い方
検索メニュー終わり

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ 朝日新聞社からアスパラクラブクラブA&A携帯サービスWeb朝日新聞サイトマップ文字拡大・音声

天気住まい就職・転職BOOK健康愛車教育サイエンスデジタルトラベル囲碁将棋社説コラムショッピングbe

ここから本文エリア現在位置asahi.comトップ >  ビジネス > 中小企業経営特集

LLP解禁、起業へ動き 「有限責任事業組合」あすスタート

2005/07/31

 失敗しても出資者の責任が限定される株式会社の利点と、経営が自由で税制面も有利という民法上の組合の特長を「いいとこ取り」した有限責任事業組合(LLP)制度が8月1日スタートする。米国のハリウッドに倣って、映画やアニメの製作で才能を発揮した人により報いるビジネスモデルを目指したり、大企業で埋もれた技術を商品化したり、中小企業が力を合わせて事業を強化したり……。産業界や起業家たちが新たな発想で動き始めている。(佐野哲夫、杉井昭仁)

●製作者主導の映画を

 LLPが適しているとされるのが、映画やアニメなどのコンテンツ、先端技術など「知恵やセンスの塊」をビジネスにする産業だ。コンテンツ開発・投資会社のシンク(東京、森祐治社長)は、米ハリウッドのプロダクションや日本の大手商社などと、解禁当日の8月1日にLLPを設立する。世界的に大ヒットしたハリウッドのSF映画のアニメ版を製作し、07年に公開するためだ。

 日本の映画やアニメは、映画館など配給ルートと資金力を持つ大手映画会社とテレビ局などが「映画製作委員会」を設立して作られ、著作権や利益分配もほぼ独占する形が定着している。

 「作品を実際に考え、作るのはクリエーターたちだが、下請けに甘んじてきた。このままでは優れた才能が集まらなくなる」と森社長。流れを変えるには「ハリウッド型」のビジネスモデルを日本に持ち込むしかない、と思い至った。

 映画監督のS・スピルバーグさんらが94年に設立した映画会社、ドリームワークス。スピルバーグさんら創業者の出資は1割に満たないものの、経営の実権を握り、クリエーター主導でヒット作を連発してきた。

 「LLPを使えば、日本でも同じことが夢ではない」。シンクは日米韓仏の製作会社などにも出資してもらい、総額8億5千万円を集め、配給はハリウッドを通じて行う。

 解禁を見越す形で、LLPに近い形の映画作りがすでに始まっている。盲導犬と全盲夫婦の交流を描いた「ベルナのしっぽ」。映像・出版の製作支援会社、クリーク・アンド・リバー(東京)が製作している。著作権の管理は会社を設けて行い、製作費は投資ファンドが出したが、「製作者の意欲を高めるため、利益配分を大きくした」(清田智執行役員)。

 ホラー映画「リング」などで知られるプロデューサー、一瀬隆重さんらの映画企画会社、エンターテインメントファーム(東京、小谷靖社長)もLLPを考えている。作品販売権を担保に銀行から製作費の大半の4億円を借りてホラー映画2本を撮り、近く公開する。

 小谷社長は、LLPをテコにすれば海外市場もにらんだビジネス展開が可能だと踏んでいる。
●休眠特許「大化け」も

 「大企業に眠る技術シーズ(種)を育てるのに、LLPは良い器です」。新規事業のコンサルタント会社、リーディング・イノベーション(東京)が都内で開いたLLPセミナー。同社取締役で元古河電気工業常務の小泉達也さんの声に力がこもる。聴き入るのは電機や鉄鋼、IT(情報技術)関連の会社などの技術者ら約100人。

 大企業が特許を生かせずに抱え込んでいることが、日本経済がぱっとしない一因でもある。社内ベンチャーに力を入れる企業は多いが、本社の影響力が強すぎてか、成功例は少ない。LLPで自由に挑戦すれば「大化け」するかも知れない、との期待が集まる。

 「LLPの社員は出向扱いになるのか」「知的財産の管理はどうすればいいのか」など、踏み込んだ質問が相次いだ。

 太平洋を一望する茨城県の鹿島コンビナート。石油元売り大手のジャパンエナジーと子会社の鹿島石油、三菱化学の3社は、隣り合う事業所で原料調達や中間製品の利用を共同化する新運営組織にLLPを考えている。

 法人税がかからない利点に加え、取締役会などが要らない。「生産・処理工程の一体化や設備増強などを早く決められる」(ジャパンエナジー幹部)

 大阪市生野区で板金溶接工場を営む笹尾恭三さんは、仲間の町工場とLLP設立を計画している。液晶テレビやデジタルカメラなどの部品を作っているが、組み立てメーカーへの営業活動や設計をLLPに一本化する。「お互いに不得意な分野を補い、納期の厳守や品質向上につなげたい」と笹尾さん。

 70万部を超すベストセラーとなった「さおだけ屋はなぜ潰(つぶ)れないのか?」の著者で公認会計士の山田真哉さんと仲間の税理士たちも、8月1日にLLPを設立する。仲間で作る起業家支援グループで、セミナーや出版を通じて独立を考えるサラリーマンなどに会社設立や起業の助言をしているが、これを改組する。

 LLPは会社のような法人格がないので、不動産登記や利益の内部留保ができないなど短所もある。永続的な事業には向かず、成功が確実で株式市場から資金を集めたいような場合、解散して会社を改めて作る必要がある。出資者が抜ける場合の財産の再分配が難しいなど、注意点もある。

 山田さんは「税務や会計などの難しい話をやさしく伝えるには、我々がまずLLPを試さないと」と話す。

○リスク少、税も優遇

◇キーワード

<有限責任事業組合(LLP)> 失敗しても出資の範囲で有限責任を負えば済み、組合組織ならではの自由な運営ができる新しい事業組織。出資比率とは別に、貢献に応じた利益配分などが可能。法人課税はされず、出資者に課税されるため、会社よりも有利になる面が多い。米国では、会社に税金がかからない有限責任会社(LLC)の設立が80万社にも達した。日本でも新会社法の合同会社で同じ仕組みを目指したが、国税当局が課税方針を崩さないため、代わりに組合制度を使ったLLPが考えられた。英国にもLLP制度があり、起業が増えている。


中小企業経営特集TOP

▲このページのトップに戻る

asahi.comトップ社会スポーツビジネス暮らし政治国際文化・芸能ENGLISHマイタウン

ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.