2009年5月1日17時25分
[ニューヨーク 30日 ロイター] 2007年5月、米プライベート・エクイティ(PE)のサーベラス・キャピタル・マネジメントは、自動車大手クライスラーの買収という大きな賭けに出た。買収額は74億ドル。
クライスラーを四半期決算の開示義務がない非公開企業とし、長期的な経営再建を通じて莫大な利益をあげるシナリオだった。
買収当時、サーベラスのジョン・スノー会長は「当社は忍耐が資本だ」と述べていた。
買収から2年。クライスラーの破産法申請で、サーベラスの面目は丸つぶれになった。
シカゴ大学のスティーブン・カプラン教授(PE専攻)は「景気動向に大きく左右される業種を好況時に買収すると、こういうことになる。非常にリスクが高く、失敗に終わるケースが多い。今回もその一例といえる」と述べた。
サーベラスはクライスラーへのエクスポージャーを公開していないが、クライスラー買収は他の投資家と共同で実施したため、同社のエクスポージャーは買収額の74億ドルをはるかに下回る。
関係筋によると、サーベラスが総資産の5%以上を1つの案件に投資することはない。
このため、クライスラー本体と金融部門クライスラー・フィナンシャルへのエクスポージャーは最大でも17億ドルとみられ、クライスラー・フィナンシャルへの投資では利益が出る可能性があるという。
<高いリスク>
PEは2005年から07年にかけて、積極的に投資を拡大した。
その後、投資先の企業が破たんする例が相次いだが、クライスラーのような有名企業が破産法を申請したのは初めてだ。
情報開示を最小限に抑えてクライスラーの経営再建を進めてきたサーベラスは、クライスラーの破産法申請で、投資の失敗を世界中に知らしめた格好になった。
クライスラー買収の9年前に成立したダイムラーとクライスラーの合併は360億ドル規模。クライスラー買収当時、市場では買収価格が割安との見方も出ていた。
PEによる米大手自動車メーカーの買収は、過去に例がなかった。サーベラスはクライスラーとクライスラー・フィナンシャルの株式の80.1%を74億ドルで取得。
投資の内訳は、クライスラー本体の強化に50億ドル、クライスラー・フィナンシャルの強化に10億5000万ドル、ダイムラークライスラーへの支払いが13億5000万ドルだった。
サーベラスは、クライスラー買収の1年前に、米ゼネラル・モーターズ(GM)
クライスラーの再建が進んでいないことは、周知の事実だった。同社の2008年通期決算は80億ドルの赤字、国内販売は前年比30%減の145万台だった。
フィフス・サード銀行のポートフォリオマネジャー、マーコ・ミケリック氏は「景気の回復が進んでいれば、売却のチャンスもあったかもしれない。これほどの販売急激は予想していなかったはずだ」とし、クライスラー買収は時期的に早すぎ、出口戦略も甘かったとの見方を示した。
ハーバード・ビジネス・スクールのジョシュ・ラーナー教授(PE専攻)も、クライスラーはサーベラスが想定していた以上に厳しい状況に追い込まれたと分析している。
同教授は「サーベラスの買収があってもなくても、クライスラーの経営は悪化していたとみられる」と分析。「サーベラスによる経営再建は間違っていなかったが、嵐があまりにも激しく、沈没は避けられなかった可能性がある」と述べた。
<大やけどは免れる>
サーベラスは昨年、政府がクライスラーを救済する場合、救済の結果生じた利益はすべて放棄すると表明。債務の株式化にも同意しており、クライスラー本体への投資の回収は早い段階で断念していた。
サーベラスが被った損失は小さくないが、クライスラー・フィナンシャルへの投資はまだ利益を上げる可能性が残されている。
あまり報道されていないが、サーベラスは、バイオ医薬タレクリスを豪CSL
ミケリック氏は「(クライスラーは)サーベラスのポートフォリオの一部でしかない。どのようなPEでも投資の失敗はある。今回は世界中に失敗が知れ渡ったが、大やけどをしたわけではない」と述べた。
(Megan Davies記者;翻訳 深滝壱哉)