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弱い雇用統計が米経済見通し下押し、マネーに潮目

2009年7月3日14時5分

 [東京 3日 ロイター] 6月米雇用統計の結果が予想よりも悪かったことで、米経済や世界経済の先行きに対する見通しが大きく下押しされる流れになっている。ただ、東京市場では株安も限定的で、日本株への相対的な期待感の高さを示す展開となっている。

 また、金利の世界でも超低金利政策からの出口模索の動きが大幅に後ずれするとの見方が広がり始めており、今回の米雇用統計がマーケットの大きな潮目になる可能性も出てきた。 

 <売り先行後、下げ渋りの株> 

 3日の株式市場では日経平均が続落。6月米雇用統計が事前予想よりも悪化し、米株が大幅安となり、海外勢などから幅広い銘柄に売りが先行した。下げ幅は一時200円に接近する場面もあったが「一部の国内長期運用資金が主力株の下値を買う動きをみせたほか、先物にまとまった買い戻しも入り下げ渋った」(大手証券エクイティ部)とみられている。

 6月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比46万7000人減と、ロイター予想の36万3000人減よりも大きく下押しした。失業率は前月より0.1ポイント上昇し9.5%と、ほぼ26年ぶりの水準まで悪化した。「もともと雇用統計は振れやすい指標ではあるが、減少幅が再び拡大したことで、最近強まっていた景気回復期待が後退する可能性がある。雇用は消費への影響が大きいだけに懸念要因だ」(明和証券・シニアマーケットアナリストの矢野正義氏)との声が出ている。

 <家計担う30─40代の失業率上昇>

 複数の市場関係者によると、米雇用統計では、年齢分布の中で30─40歳代の失業率が高くなってきており、家計部門への打撃が今後、大きくなる可能性が高まっていると受け止められているという。

 また、失業率の高まりによる個人ローンの延滞率の上昇なども予想され、米金融機関のクレジットコストが上昇し、この先の収益を圧迫することが予想される展開になってきたとみられている。

 雇用情勢の悪化はローンの支払いを滞らせ、住宅の投げ売りと住宅価格の下落を誘発するとの懸念も台頭。クレジット市場に緊張感が走っている。日本のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で指標となるiTraxxJapanシリーズ11は、3日朝の取引で、プレミアムが一時204ベーシスポイント(bp)と前日引け値(189bp)から上昇し、5月22日以来の高水準を付けた。

 三菱UFJ証券・シニア投資ストラテジストの吉越昭二氏は「失業率の悪化によって出口戦略の議論は後退する。カネ余りの状態は当面続く見通しであり、リスクマネーが市場から撤退することはないだろう。マクロ指標での一喜一憂は終了し、今後は個別企業の決算に焦点が移る」と指摘している。

 他方、ある国内投信の投資調査部参事は「2日の米株の下げと比較すると、日本株は比較的、底堅い動きだ。9750円では下値待ちの投資家の買いが入っている。個人投資家の材料株物色は引き続きおう盛のほか、信託も買い越しとなるなど、国内投資家のすそ野が多少なりとも広がっている印象」と指摘。

 さらに「グローバルにみると、中国、日本を含むアジア株は欧米と比較して堅調に推移しており、アジア株のポートフォリオとしてみた場合、日本株もある程度買われる状況に変わりはない」とみている。

  <円金利の低下鮮明に> 

 円債市場は、価格上昇(金利低下)の展開となった。米国の流れと東京市場での株安を受け、国債先物に買いが先行。中心限月9月限は一時前日終値より30銭高い138円50銭と3月27日以来、約3カ月ぶりの高値に上昇した。

 現物市場も強含み、10年債長期国債利回り(長期金利)は同2.5ベーシスポイント(bp)低い1.330%に低下し、4月1日以来約3カ月ぶりの低水準を付けた。

 中短期ゾーンの利回りは2年債0.3%、5年債0.7%と「足元の景気動向や金融政策見通しを踏まえれば、金利水準としては下限」(国内証券)とみられていた水準を割り込でいる。2年はロンバート型貸出利回り(0.3%)を割り込み、前日の引け値は0.275%(3日午前の出合いなし)、5年は前日比2bp低い0.670%を付けている。日銀の積極的な資金供給により金融機関の手元資金が滞留し、レート水準による妙味を感じられなくても、資金運用をせざるを得ない状況が続いている。 

 <資金余剰感が長期ゾーンに影響> 

 中短期ゾーンの利回りが低下し過ぎ、余剰資金は徐々に長いゾーンの債券にシフトしている。前日の10年債入札を無難にこなしたこともあって、これまで待ち構えていた買いがじりじりと金利低下圧力をかけている。残高を積み増す必要のある投資家は多く、短期的には増発のマイナス要因を完全に吸収する形で、金利の低下を予測する声が増えた。

 ドイツ証券・チーフ金利ストラテジスト、山下周氏も「FRBの出口戦略に先んじて日銀が出口を模索するとの連想は働きづらい」とした上で、国内の市場参加者がそうした見方を反映させるのであれば、比較的、短い年限の国債は安心し買えるため中短期の買い材料となり得るが「すでに2年物の利付国債は日銀補完貸し出しの適用金利である0.3%を割り込んでおり、5年物の利付国債に関しても節目の0.7%割れで取引されている。買いの手が他年限に向かいやすい状況となっている」と分析している。

 <T─Bill利回りも低下続く>

 さらに資金余剰の状態が顕著であるのは国庫短期証券(T‐Bill)で、3カ月物は午前の取引で同0.5bp低い0.145%に低下。T─Bill利回りはすでに、2006年7月のゼロ金利政策解除後では最低水準にある。

 無担保コール翌日物の誘導目標が0.1%、調達コストであるレポ(現金担保付債券貸借取引)レートが翌日物で0.11─0.12%程度で推移していることを踏まえれば「3カ月でこの(0.15%付近)水準はまったく妙味を感じられない」(国内金融機関)が、余剰資金を抱え「目をつぶってでも買わないといけない」(同)状況だ。短い期間設定であることがT‐Bill人気を支えているが、市場関係者によると、T‐Billを買えていない投資家も多く、その需要が2年債などの利付債に及んでいる側面もあるという。

 <低下圧力強い円金利>

 米雇用統計を受け、一時高まった米金融政策の「異例の措置」からの出口論や、利上げ観測などはほぼ完全に後退した。ただ、短期的な金利の低下余地については「米金利は十分過ぎるくらい悲観相場を展開させてきたので、短期、長期金利ともに低下余地は限定的」(三井住友銀行・チーフストラテジスト、宇野大介氏)との見方もあり、実際、前日の米国市場でも、株価が急落したにもかかわらず、債券は入札を控えた需給不安などが上値を抑え伸び悩んだ。宇野氏は今後、米国ではトリプル安となるリスクも指摘している。

 一方で円金利については、7月以降の増発を消化する金利上昇局面は6月上旬に長期金利が1.56%をつけた時点でピークアウトした、との見方が多くなっている。増発による金利上昇を収益チャンスと期待する声も出ていたが、需給環境が良好であるだけに「第2四半期に入り、投資家も早く残高を積まないといけない、という焦りが出てきているようだ」(国内証券)との声もある。

 年末にかけた金利の推移は、税収減や再増発などの需給への負担をどう読むかによって参加者の見方が分かれているが、少なくとも今月については需給環境、ファンダメンタルズ、外部環境のいずれからも金利上昇の手がかりは見当たらない、との見通しで一致している。三井住友銀行の宇野氏も金利の上昇局面は一服したと見込み、円債市場の9割を占める国内投資家の安定的な需要を背景に「年末にかけてはさらに、長期金利が1─1.25%のレンジまで低下する可能性がある」と予想している。

 <ドル/円、クロス円とも下げ渋り>

 ドル/円、クロス円とも海外市場での下げが一服。ドルは95円後半で底堅い推移になった。前日海外市場で弱い雇用統計を材料にダウが急落。リスク回避の動きが強まって、ドルと円がユーロや資源国通貨に対して全面高となり、ドル/円ではドルが売られて一時95.70円まで下げた。ユーロ/円は134.15円まで売られた。

 しかし、アジア時間ではドル/円、クロス円とも下げ渋り。早朝にユーロ/ドルにモデル系ファンドとみられる売りが出て1.3927ドルまで下落し、つれてユーロ/円も133.58円の安値をつけた。また、9時過ぎにもモデル系ファンドの売りがドル/円にでて海外安値(95.70円)に顔合わせしたものの、ここまでで下値を試す動きは一巡。その後は海外市場での下げのあとの買い戻しからドル/円、クロス円とも緩やかに値を戻した。「ドル/円では95.80円付近の買いが強い。ユーロ/円は以前下げ止まった133円前半をキープできれば底堅くなる」(国内銀行)との声が聞かれた。

 日経平均が一時180円以上値を崩したが、リスク回避によるクロス円の売りは限定的で、逆に買い戻しが先行した。米雇用統計発表からきょう早朝まで、ユーロ/円は200ポイント以上、豪ドル/円は150ポイント以上急落したためで、市場では「雇用統計への反応は為替が先行している。日経平均への反応は鈍い」(国内銀行)との声が上がった。 

 <米雇用統計と欧州中央銀行(ECB)理事会> 

 雇用統計が予想より悪かったとはいえ、すう勢的には一時に比べて減少幅が縮小している。「景気が市場の期待ほど改善していないことが確認された一方、いったん下げ止まっていることも事実。今、2番底まで織り込む必要はない。高金利通貨などへの売りが強まったが、これは買いに傾いたポジションに対する利食い売りの範囲だ」(国内銀行)との声が上がっている。 

 欧州中央銀行(ECB)理事会では予想通り政策金利を1%に据え置き、カバードボンドの買い入れ規模も拡大しなかった。しかし、トリシェ総裁が政策金利について必要な場合は追加利下げには引き続きオープンとしたほか、年内は経済活動が引き続き弱いとの見方を示したことで「ユーロにはネガティブな材料になった」(国内金融機関)という。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 宮崎亜巳)

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