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ドバイショックで建設株急落、国内企業の成長戦略に影響も

2009年11月27日14時15分

 水野 文也記者

 [東京 27日 ロイター] ドバイショックが東京株式市場を襲っている。ドバイ政府系企業の債務返済延期要請を受けて、日本企業にも少なからずの影響を及ぼ思想だとの観測が広がり、建設株を中心に下落相場に拍車をかけた格好だ。

 関連企業の足元の業績にインパクトを及ぼすと同時に、市場が縮小傾向を示す国内に代わって大きな成長分野と捉えてきた中東地域の混乱は、国内建設、建機業界の成長戦略にも大きな影響を与えそうだ。

 ドバイ政府は25日、政府系持ち株会社ドバイ・ワールドと系列の不動産開発会社ナヒールの2社が、ドバイ・ワールドのリストラクチャリング(事業再構築)に向けた最初の措置として、数百億ドルの債務について返済延期を債権者に要請することを計画していると発表した。

 ムーディーズは一部の企業をジャンク等級に引き下げ、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はドバイ・ワールドのリストラについて、S&P基準ではデフォルトに相当する可能性があると指摘した。

 27日の株式市場でこの影響が直撃するとみられたゼネコン各社の株価は、大林組<1802.T>が東証1部で値下がり第1位となったのをはじめ、大手4社が値下がり上位にランクイン。市場心理を冷え込ます要因となっている。

 ドバイ関連の工事では、大林組と鹿島<1812.T>のドバイ都市交通システム建設工事をはじめ、多くの工事受注残高を抱えている状況。各社の案件をみると、ナヒールが発注した工事も目立つ。これまでもドバイ関連工事については資金回収リスクを指摘する声も出ており実際、各社の決算で海外工事部門の採算悪化要因となっていた。一部の案件では損失計上を余儀なくされていたが、今回の政府系企業の返済延期要請で深刻度が増してきた。

 <悪化するゼネコンの国内ビジネス、中東での代替構想に冷水>

 特に開発ラッシュとなっていたドバイなど中東地域は、大手ゼネコンにとって今後の成長戦略を描く上で重要な地域に位置づけられた経緯がある。公共事業の削減が進み、国内ビジネスだけでは将来の展望が開けないため「市場の厳しさに対応する方策を考えることが必要。海外はその選択肢でリスクを計りつつ取り組む」(清水建設<1803.T>の黒澤成吉専務)としていただけに、足元の危機に対する対処のみならず、今後の展開にも影響を及ぼすと想定されている。

 JPモルガン証券では、建設セクターについて「中立」から「弱気」に引き下げたが「大規模な損失処理に合わせてエクイティファイナンスが行われる可能性がある」(アナリストの穴井宏和氏)という。大和証券SMBCでは、大手ゼネコンはドバイ関連プロジェクトに関し、最悪のケースで潜在的なリスクは各社それぞれ数百億円程度と推定していた。

 <建機業界の成長戦略にも暗雲> 

 ゼネコンが苦境に陥れば、建設機械業界にもその影響が波及する。コマツ<6301.T>や日立建機<6305.T>の中東向け売上高構成比率は、第2・四半期時点で両社ともひとケタ%にとどまっており、足元の業績に及ぼすインパクトは限定的となる可能性が高い。しかし「新興国向けの売上高構成比が高まり、これが収益を支えている」(コマツの木下憲治CFO)現状で、先行き新興国リスクが高まって、プロジェクト熱が冷やされる状況となれば、成長戦略に影響を及ぼすことになる。コマツの2010年3月期の地域別売上高構成比は新興国が64%(前期実績57%)、日米欧が36%(同43%)となる見通しだ。

 そのほか「原油価格の上昇によって、中東諸国の投資についての姿勢が前向きに変わってきた」(日揮<1963.T>の須賀啓孔取締役)と回復が期待され始めたプラント業界や、同地域で各種プロジェクトに参画する大手商社にも暗雲を漂わす。今回の件をきっかけに、回復してきた新興国向け投資がリスクを回避する機運の高まりから減退、ビジネスに支障をきたす例が増えると懸念する市場関係者は少なくない。

 <邦銀への影響、金融庁は限定的と認識>

 この問題は、新興国向け融資に取り組んできた邦銀にも影響を及ぼしそうだ。一部の大手銀行でドバイ向け融資残高は数百億円規模に達するとの観測もある。ただ、邦銀関係者によると「現時点での影響は限定的。業績に深刻なインパクトを与えることはない」という。金融庁の幹部も「邦銀への影響は限定的になりそうだ」とみている。

 むろし、邦銀に対しては足元よりも、中長期の間接的な影響が心配との見方があった。大手証券の情報担当者は「ドバイショックによって欧州系金融機関が大きなダメージを受けるとみられるが、これがさらなるBIS規制強化に結びつく要因にならないとも限らず、目先の損失よりも先行きが懸念される」と話す。

 世界景気の視点では新興国にとどまらず、金融機関にダメージを与えることで欧州経済にも波及するリスクが生じ、ドバイのビジネスに無関係な企業についてもダメージが生じることが心配されている。

 大和証券SMBC・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏は、70年代のブラジルの例を引き合いに出して分析している。ブラジルは1960年に現在の首都であるブラジリアを建設。その後、開発ラッシュとなり「ブラジルの奇跡と呼ばれる発展を遂げたが、結果的に財政負担を残し、累積債務問題が発生。融資していた米銀が何年も苦しむことになった。ドバイの問題では欧州系金融機関が同じ道をたどらないとも限らず、経済の停滞から中長期的に欧州向け輸出に影響が出る可能性もある」と、木野内氏はみている。

 他方、新興国の経済成長が世界的な景気回復をリードする構図に変化は起きないとの見方も少なくない。エース経済研究所・社長の子幡健二氏は「同じUAEのアブダビが最終的に支援に乗り出せば、ドバイ問題はそれほど深刻にはならない」とした上で「欧州経済への影響が心配されるほか、新興国向投資の減退が懸念されているが、実需の拡大が伴う中国やインドなどリスクの小さい地域への資金集中は変わらないだろう。ドバイショックは、国や地域など投資先の選別が厳しくなるきっかけになるのではないか」と話す。

 実際、建設業界からは「国内公共事業が期待できない大型の土木工事については、先行きも海外展開をテーマにする考え。北米や豪州などでその準備をしている」(大林組の原田昇三専務)との声も出ており、引き続き海外進出を図りながらも、リスクが相対的に小さい地域に展開する構えだ。

(ロイター日本語ニュース 取材協力:布施 太郎記者 編集 田巻 一彦)

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