[東京 20日 ロイター] 中国の反日デモは沈静化に向かい、日本の自動車メーカーの間でも、休止していた工場を再開する動きが広がってきた。部品の供給網が寸断されたタイの洪水や東日本大震災のときと異なり、生産への影響はこれまでのところ限定的だ。
しかし、中国の消費者が日本車を敬遠するリスクを指摘する声もあり、今後の販売への影響は不安が残る。
<車がデモで破壊される恐れ>
尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有問題をめぐって発生した中国の反日デモは、一部が暴動に発展。生産面では設備に被害はなかったものの、現地に進出する日本の自動車メーカーは従業員の安全確保を優先し、一部工場で生産を休止した。
トヨタ自動車<7203.T>とホンダ<7267.T>の一部工場で生産を停止している以外は、すでに各社とも操業を再開したが、米調査会社IHSオートモーティブの試算によると、生産への影響は合計およそ1万4000台。一台当たりの販売価格を1万8000ドルと仮定すると、2億5200万ドルの損失につながったことになる。ただ、格付け会社のムーディーズが20日、「(日本企業の)生産停止の影響は限定的であり、その回復は可能」とのコメントを発表したように、生産の遅れは生産ラインの残業や休日稼働で挽回できる。
生産面以上に懸念されるのは、日本車のイメージ悪化と販売への影響だ。中国市場には、欧州、米国、韓国とほぼすべての外資系メーカーが参入しており、消費者には多くの選択肢がある。BNPパリバ証券の自動車担当アナリスト、杉本浩一氏は「日本の自動車より、むしろ韓国の自動車を買った方が、デモに巻き込まれて車を壊されなくて済むとか考える人が出てきてもおかしくない」と語る。
<9月の中国シェアに影響>
トヨタは山東省青島市の販売店が放火されて全焼、その他の地域でも店舗や展示車両が壊されるなどの被害にあった。また、北京市にあるホンダの販売店は、運転の際に注意を呼びかけるメールを顧客に送った。さらにインターネットには、「この車は日本製、私の心は中国人」、「これから日本製品はボイコットする」などと書いた幕を掲げて走る日本車の写真が出回った。
日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ社長)は20日の定例会見で、9月の日本車の中国シェアに「影響がある」と述べた。
販売への影響は、日中関係の雲行きが怪しくなってきた8月にすでに表れていた可能性がある。9月10日に記者会見した中国汽車工業協会の董揚・常務副会長兼秘書長は、日本車販売が8月に減速したことに言及。尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題と関連しているとの認識を示した。日産自動車の志賀俊之最高執行責任者(COO)も、この問題が日本車販売に影を落としていると述べた。
<長期的な影響はないとの見方も>
2011年に年間販売1851万台(商用車含む)と3年連続で世界一になった中国の自動車市場には、米ゼネラル・モーターズ(GM)
アジアの自動車事情に詳しい香港のコンサルタント、マイケル・ダン氏は、中国には歴史問題を背景とした反日感情が明らかに存在するが、これまでも日本車の販売を妨げることはなかったと指摘する。両国政府が協議のテーブルにつけば、「日本の自動車メーカーに長期的な影響は残らない」と言う。
しかし、日中関係は今も冷え込んだまま。中国側は尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺のパトロールを強化させており、解決の糸口は見えない。ムーディーズは、極端なシナリオとしつつも、長期的には日本製品が中国市場で足場を失う恐れがあると指摘している。
(ロイターニュース 杉山健太郎、久保田洋子;編集 久保信博)