[東京 30日 ロイター] 10月鉱工業生産統計が増産となり、内外需の悪化が予想したほど深くなかったことが明らかとなった。スマートフォン(多機能携帯電話)向け電子部品の大幅増産や、新車販売の好調な自動車増産が寄与したものだ。
予測指数からみる限り10─12月も3四半期ぶりの上昇転換の可能性が浮上し、早くも生産は最悪期から脱したようだ。しかし、現在確認できる経済統計が全般に悪い中では、年内の増産基調への転換には時期尚早との見方が大勢となっており、明確な回復は年明け以降とのシナリオを維持する調査機関がほとんどだ。
<悲観しすぎた減産計画の反動も>
ロイターの事前予測で10月の生産が上昇に転じるとみていたエコノミストはいなかったにもかかわらず、ふたを開ければ4カ月ぶりの上昇のサプライズとなった。企業は日中関係の悪化により景況感を一気に悪化させ、9月の鉱工業生産は前月比4%もの大幅減産となったが、実際には内外での出荷はそれほど悪化せず、10月は生産計画を上ぶれたとみられる。このことは、10月に在庫率が低下へ転じた点からも確認できる。
生産計画が上ぶれたのは、電子部品が2ケタの増産になったことが主因。スマートフォン向けのメモリや液晶素子が好調となり、10月も11月も計画を上方修正、12月も2ケタ増産が続く。BNPパリバ証券では「iPhone5やWindows8搭載のPCなど新製品の発売などを受け、グローバルなIT・デジタルサイクルが底入れし始めていることと整合的」とみている。
ほかにも電機はメガソーラー向けの太陽電池モジュールを中心に増産、金属製品も橋りょうの大型受注が続いている。
エコカー補助金切れで10─12月は大幅減産となるとの見方が広がっていた輸送機械も予想に反して増産となった。軽自動車の新型車が販売好調なことに加えて、北米向けの普通乗用車や自動車部品が寄与している。北米ではハリケーン「サンディ」の打撃による買い替え需要で11月は自動車販売の急回復が予想され、4年超ぶりの高水準になる可能性が見込まれていることも背景にありそうだ。輸送機械の生産計画は、11月は欧州向け減産でやや減少するが、12月には2ケタ増の予測となっている。
今回の結果は、多くの調査機関が当初想定していたよりもやや早いタイミングで生産活動が底入れに向かっている可能性を示すことになった。
<需要環境改善見当たらず、明確な増産は1─3月>
ただ10─12月の統計の示すこうした明るい見通しが実際に実現するのか、まだ懐疑的な見方も根強い。野村証券では「最悪期は脱したものの、増産基調へと明確に転換するのは年明けになる」とみている。
というのも、現時点で判明している10月までの経済統計が軒並み悪化しており、とても年内の急回復を想像しにくいためだ。貿易統計から日銀が割り出した10月の実質輸出は6か月連続のマイナスが続く。設備投資の先行指標となる機械受注は製造業だけみれば10─12月は前期比7%近い減少見通しだ。個人消費関連では10月の小売業販売額は自動車、家電、衣類とも振るわず前年比で3カ月ぶり減少となった。生産を取り巻く内外の需要環境が改善に向かっているとしても、まだはっきりとしたデータで確認できていない。
日銀でも、11月月報で10─12月の生産について、電子部品・デバイスは好調ながら、全体では引き続き減少する見込みとしているほか、1─3月は電子部品・デバイスと輸送機械も増加に転じる一方で多くの業種ではなお弱めの動きになるとして、横ばい圏内の動きを予想していた。
ただ月報の公表時点で今回の鉱工業生産は発表されていないため、日銀内部での議論にこの生産動向の変化が織り込まれるのはこれから。
民間調査機関は、楽観はできないがらも景気悪化局面から脱する時期が近付いているとみている。農中総研では「エコカー購入補助金終了や対中国輸出の落ち込みといった輸送機械工業の一段の悪化は食い止められており、先行きの調整余地は大きくない可能性もある。当面は底入れ時期を模索する展開が続く」と見通している。
(ロイターニュース 中川泉;編集 内田慎一)
*一部表記を変更して再送します。