[上海 29日 ロイター] 中国の景気に回復の兆しが出ていることを受け、短期金融市場では目先の利下げ観測が消えているもようだ。
上海の大手国内銀行のIRS(金利スワップ)トレーダーは「成長回復で、市場の利下げ観測は完全にくじかれた」との見方を示している。
中国人民銀行は6月と7月の2度、政策金利を引き下げ、2011年末以降3度にわたり預金準備率を引き下げた。これにより1兆2000億元(1927億ドル)の新規貸出余地が生まれたと推定されている。
トレーダーやエコノミストはこれまで、世界的な通商の低迷や欧州の景気減速を背景に、一段の利下げを予想。これは将来の金利水準を織り込むIRSに如実に表れ、短期・長期物に下押し圧力がかかった。その結果、IRSレートは7月中旬、世界金融危機以来の低水準をつけた。
ところがIRSレートはその後徐々に回復、過去2週間には大幅に上昇した。投資家が目先の利下げ観測を捨てたばかりでなく、2013年の追加利下げも確実ではない、と考えていることが浮き彫りになった。
前述の上海のIRSトレーダーは「人民銀行が預金準備率引き下げにも積極的でないとすれば、どうして利下げがありえようか」と述べた。
<利下げサイクル終えんか>
市場の金利予想を最もよく反映するのは、人民銀行が設定する人民元建て1年物預金基準金利をベースとするIRSだ。
1年物預金金利をベースとする期間2年のIRSレートはここ2週間の大半、2.75%を上回った水準で推移している。中国政府が予想を上回る経済指標を発表した11月12日の2.7225%から上昇しており、7月末の2.394%と比べ大幅に上回っている。
1年物預金金利は現在3.0%。人民銀行が通常25ベーシスポイント(bp)の幅で政策金利を動かすことを考えると、2年物IRSは、市場が2014年より前の利下げに懐疑的であることを示唆している。
7月末時点は1年以内に少なくとも2度の利下げを織り込んでいた。
アジア系銀行のIRSトレーダーは「政策金利ベースのIRSは、利下げサイクルが終えんに向かっていることを示唆している」と述べた。
また「これは、人民銀行が7月上旬の直近の利下げ以来、リバースレポレートを安定的に維持している結果とも考えられる」とも述べた。
<リバースレポレートも利下げ打ち止め示唆>
トレーダーの話にあるように、中国人民銀行はこのところ、金利期待の誘導ツールとして短期のリバースレポを活用することを好んでいる。
期間7日のリバースレポレートは、7月の上旬ごろには3.80─3.95%だったが、人民銀行はそれ以来、公定レートを3.30─3.40%の間で固定している。つまり、人民銀行が短期資金調達コストのこれ以上の低下を望んでいないことを示すシグナルと考えられる。
指標の7日物レポ金利をベースにしたIRSは7月末以来、政策金利ベースのIRSよりも徐々に高くなっている。つまり、短期の資金調達コストについてより悲観的であることを意味している。
7日物レポ金利をベースにした期間2年のIRSレートは29日昼ごろは3.4%となり、昨年10月以来の高水準に達した。
7日物レポ金利ベースのIRSは、政策金利期待を直接示唆するものではないが、7月中旬には1年以内に4度の利下げを織り込んでいた。
<利下げ期待も根強く残る>
ただ、地合い改善に向けた利下げ期待も、一部で根強く残っている。
国内株式市場は依然として振るわない。輸出など一部の指標には改善の兆しがみられるが、地方政府や国有企業の債務など懸念材料もある。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)のマネジングディレクター、キア・ウーン・キエン氏は「回復を確信していない」とし「利下げを正当化できる材料にはことかかない」との見方を示した。
(Lu Jianxin記者、Pete Sweeney記者;翻訳 吉川彩;編集 佐々木美和)