[東京 30日 ロイター] 総選挙に向けて自民党が「無制限の金融緩和」を打ち出したことをきっかけに、将来の物価上昇に賭ける海外ファンドの動きが活発になってきた。しかし、実際に政権をとるのかどうかや、その後の政策遂行をめぐる不透明感もあり、その盛り上がりは必ずしもインフレ期待には結びついていない。
「脱・デフレの可能性が高まったのでは。まとまった取り引きがしたい」。今月中旬、自民党の安倍総裁が金融頼みのデフレ脱却を鮮明にしたことを受け、在京の米系証券関係者は、顧客であるヘッジファンドからの相談に追われたという。
金融市場には、消費者物価指数(CPI)を原資産にしたインフレ・スワップという派生取引がある。物価下落圧力がかかり続けてデフレの状態から脱することは難しいとの予想が多ければ、金利はマイナス圏のままで推移する。一方で、CPIが上昇すると予想する投資家が増えれば、金利は逆に上昇するというものだ。
安倍氏は、政府と日銀が一体となって物価目標2%を達成するという主張を繰り返している。前出の米系証券の関係者は、市場で主に取引されている2年や5年物が0.8%程度で足踏みを続けていたため、「現状は、消費増税ですら9割の織り込み。安倍総裁のファクターが加われば、もっと上が狙えると答えた」という。
ただ、そうした関心の高まりとは裏腹に、安倍氏の政策に対する期待が膨らんでいるかどうかははっきりしない。今月に入ってからは、市場筋によるとインフレ・スワップは平均的に2年が0.85%、5年物は0.74%と、水準そのものはあまり変化していないからだ。
別の証券関係者は「顧客のフローは活発。これからそうした期待が膨らむのなら、買いたいという海外の投資家は少なくない」と指摘する。しかしその一方で、「以前からポジションを張っていた向きからは、『格好の利食いの場』と、ここぞとばかりに売りを急いでいる」と明かす。
CPIは1980年代からのバブル景気でも平均1.3%程度の上昇だった。このため、市場では「2%、3%と上昇していくイメージはなかなか湧かない」(前出の証券関係者)との声が少なくない。
安倍氏の発言を受けるかたちで円安、株高に振れ、市場ではデフレからの脱却期待を形成しているようにも映る。だが、円金利市場では「安倍総裁が本気で物価目標2%を目指すなら、計算上は1.2%もの上値余地があるが、実際の政策遂行に不透明感が残るなかでは、そう思っているのはごく一部の参加者ではないか」(欧州系証券)と、冷めた声も強い。
(ロイターニュース 山口貴也 編集:伊賀大記)