写真・図版 2月13日、大手製造業の中で、国際会計基準(IFRS)への移行表明が相次いでいる。中でも市場の注目を集めているのが、デンソーの決断だ。写真はフランクフルト・オートショーのトヨタブース。2013年9月撮影(2015年 ロイター/WOLFGANG RATTAY)

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 [東京 13日 ロイター] - 大手製造業の中で、国際会計基準(IFRS)への移行表明が相次いでいる。中でも市場の注目を集めているのが、デンソー<6902.T>の決断だ。筆頭株主のトヨタ自動車<7203.T>は米国会計基準を採用する代表的な企業だが、将来的にIFRS適用を決めるのではないかとの観測を呼んでいる。

 金融庁はIFRSの任意適用の拡大を推進しているが、大手製造業が移行すれば、徐々に採用する企業が広がっていく可能性もある。

 「デンソーの動きは、大きな意味を持っているのではないか」――。大手証券の関係者はこう話す。デンソーのIFRSへの移行が、筆頭株主であるトヨタ自動車のシフトを予見させるとの思惑を生んでいるためだ。

 もっとも、意向表明したのはデンソーだけではない。4―12月期決算発表に合わせて、日立製作所<6501.T>や東芝6502.T>も米国会計基準からIFRSへの移行を公表した。

 理由の1つが、グループ内でばらばらだった会計基準の統一化だ。例えば日立グループでは、日立製作所は米国基準だが、日立建機<6305.T>や日立化成<4217.T>などの上場子会社はいずれも日本基準で、採用する会計基準がまちまちだった。日立グループは、日立製作所を含めて上場10社が足並みをそろえてIFRSに移行することになった。日立は「グローバルに経営しているなかで、グローバルの水準に合わせてきちんとした数字を出して投資家に示したい。グループ各社は日本基準だったが、日立グループとしてIFRSに統一して、グループ内の経営スピードが上がるのを期待している」(広報・IR部)とコメントした。

 東芝は、グループ全体でIFRSを採用することで「問題意識を共有して、財務規律を重視し、財務体質の強化に努める」(広報・IR室)としている。

 トヨタも事情は同じだ。トヨタ本体は米国会計基準を採用するものの、日野自動車<7205.T>やダイハツ工業<7262.T>は日本基準を採用しており、会計基準はばらばらだ。トヨタの広報は、会計基準についての検討状況については「コメントできない」としている。

 <会計基準の「乗り換え」を促す要因>

 米国基準からIFRSへの乗り換えを促す要因の1つは、近く見込まれる米国基準の制度変更だ。米国基準のルールを決める米財務会計基準審議会(FASB)は2010年、金融商品に関する新しい会計基準についての公開草案を公表した。

 日本企業にとっては、持ち合い株式の評価損益の扱いが焦点となる。「米基準のままだと、持ち合い株式の損益がPL(損益計算書)にヒットするような制度変更が行われる可能性がある」と、野村証券・シニアストラテジストの野村嘉浩氏は指摘する。 

 現在の米国基準は、持ち合い株式の評価損益は「その他の包括利益」(OCI)に含まれるため、基本的には持ち合い株式を売却しない限り、当期純利益は影響を受けない。OCIは損益計算書ではなく「包括利益計算書」に記載される。

 しかし、改革案では毎期、持ち合い株式を時価評価して当期純損益に反映させなくてはならない。米国基準を採用し続ければ、持ち合い株式の時価評価で当期利益が上下するリスクに直面しかねない。

 一方、IFRSでは持ち合い株式の評価損益をOCIに分類すると指定することができ、売却しても当期純利益は影響を受けない。野村氏は、米国基準の変更について今年半ばにも最終的な結論のドラフトが出ると予想しており、持ち合い株のPLに対する影響を抑えたい企業が先んじてIFRSに移る可能性があるとみている。

 トヨタの時価総額は26兆円超。日本を代表する製造業がIFRSへ移れば、雪崩を打って採用する企業が増える可能性もある。東証によれば、現時点でIFRS採用企業は予定も含めて66社。3月期決算企業は本決算で会計基準について考え方を表明する。

 三菱電機<6503.T>や、パナソニック<6752.T>、ソニー<6758.T>、ホンダ<7267.T>など、米国基準には日本を代表する製造業が名を連ねており、今後、動向が注目されそうだ。

 

 (和田崇彦 布施太郎 編集:田巻一彦)