写真・図版 12月20日、日銀の黒田東彦総裁は記者会見で、ゼロ%程度としている長期金利目標の引き上げを議論するのは時期尚早と指摘した。写真は都内で11月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

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 [東京 20日 ロイター] - 日銀は20日の金融政策決定会合で、現行マイナス0.1%の短期金利と同ゼロ%程度の長期金利目標を柱とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の据え置きを賛成多数で決めた。国債買い入れ額も年間約80兆円をめどに保有残高を増加させるペースを維持する。

 海外経済や輸出・生産などの持ち直しを背景に景気判断を上方修正した。

 市場で取り沙汰されている長期金利目標の引き上げについては「時期尚早」と一蹴しつつ、トランプ相場による円安を背景に来年1月に物価見通しを引き上げる可能性も示唆した。日銀政策運営の焦点は追加緩和から金利引き上げなど出口方向に急転しつつある。

 <金利目標引き上げ、時期尚早>

 景気判断は「緩やかな回復基調を続けている」とした。これまでは「新興国経済の減速などの影響から輸出・生産面に鈍さが見られるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」となっていた。

 市場ではトランプ相場を受けた急激な円安と金利上昇により長期金利目標の引き上げが取り沙汰されているが、黒田東彦総裁は会見で、金利目標は「毎回の決定会合で議論される」との原則を述べつつ、「2%目標への距離はまだ遠く、具体的に議論するのは時期尚早」とけん制した。

 市場では「仮に米連邦準備理事会(FRB)が来年6月利上げを実施し、米長期金利が3%に到達、 かつ日本のコア消費者物価指数(CPI)が1%が視野に入っているような状況が重なれば、長期金利目標引き上げは検討されよう。まだ先のことになりそうだ」(SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏)などとの見方が聞かれた。

 <任期中、出口議論の可能性も>

 日銀は前回10月31日━11月1日の決定会合で2%目標の達成時期を2018年度に延期し、18年4月までの総裁任期中の達成を断念したと解釈された。今回は任期までに「具体的な出口論が出るか否かについても、今から申し上げられない。議論になる可能性もあるし、そうでないかもしれない」と含みを持たせた。

 米大統領選後の円安について「円安は輸入物価を通じて物価押し上げに作用する」と指摘。わずか1カ月強で10%程度の急激な円安が進んだが、現時点で「円安が行き過ぎて問題になるとの見通しは持っていない」とした。日銀が公表している試算によると、10%の急激な為替変動は1年半程度で0.45ポイント程度物価に影響を与える。今回の円安の影響については、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で経済・物価見通しを示す来年1月末の「次回会合で議論する」という。

 <円安容認発言か>

 会見中、現在のドル/円は今年前半の水準に戻しただけで、驚くほどではないという趣旨の発言があり、「ドル/円が上昇したのは、こうした発言を円安容認と受け止めた可能がある」(外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也氏)との指摘があった。

 一方、黒田総裁が会見で長期金利目標を「ゼロ%程度」ではなく、「0.1%」や「1%」と 言い間違い、一部市場関係者の間で話題となった。

 

 (竹本能文、伊藤純夫)