写真・図版 12月13日、ドル/円の年間値幅が、過去最小の10円未満となる可能性が高まってきた。写真は昨年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

[PR]

 [東京 13日 ロイター] - ドル/円<JPY=>の年間値幅が、過去最小の10円未満となる可能性が高まってきた。狭いレンジ相場の中で目立ったのが、過去最大級の逆張りをみせた個人投資家の相場巧者ぶり。上値で売り、下値で買うレベルが相場の流れを読み切ったタイミングとなった。ただ、来年は相場を急変させるリスク「灰色のサイ」の存在も警戒されており、逆張り戦略が引き続き有効かは不透明だ。

 <2強のドルと円>

 2018年のドル/円(EBSベース)は、13日時点で年初来の値幅が104.56─114.55円の上下9.99円と、過去最小だった2015年の10.01円を下回っている。年末まで約2週間を残しているが、1970年代に変動相場制が始まって以来、最小値幅更新となる可能性が大きい。

 その最大の理由は、ドルと円が今年最強の2通貨だったことだ。ドル買いと円買いがぶつかり合う形となり、ドル/円という通貨ペアでは動きが小さくなった。

 ドルは、米国の強い経済と利上げによる金利高で、米株や米債などドル資産を求める動きが増加。ドルインデックス<.DXY>は昨年末比で5.3%の上昇と、主要通貨で最も上昇した通貨となった。

 また、貿易を含む米中摩擦懸念で資金の逃避先となりやすかったことも、ドル高の要因だ。

 次いで強かったのは円だ。ドル/円が注目を集めがちだが、実は、ドル以外の通貨に対しては今年、軒並み円高になっている。対ユーロで約4%強、対ポンドで約6%強の円高が年初来で進行。リスク回避の際の「逃避買い」は以前ほどは目立たなくなったものの、対ドル以外ではしっかり需要を集めている。

 <流れをつかんだ個人投資家>

 プロが苦戦を強いられる狭いレンジ相場の中で、目立ったのは絶妙な個人の逆張りだ。

 ドル/円が104.56円の年初来安値をつけた3月にかけて、個人は年始からドル買いを活発化。金融先物取引業協会の集計によると、店頭FX(外国為替証拠金取引)53社を通じた買い建て額は、2月に円換算で過去最大級の3兆円超へ膨らみ、差し引きでも遡及可能な2008年11月以降で4番目の買い越し幅を記録した。

 4月以降、ドル/円は上昇に転じ、10月に年初来高値114.55円をつけた。下値での個人のドル買い戦略が成功した相場展開となった。

 しかし、9月に入ると、個人投資家はドル売りに転じる。

 利上げを始めた米国のドルと、大規模緩和中の円の取引は、金利差からドル買い/円売りに傾くのが定石。しかし9月の持ち高は、差し引きで約2年ぶりにドル売り/円買いへ転じ、その規模も過去最大に膨らんだ。

 ドル/円は10月4日に年初来高値114.55円をつけた後、月後半にかけて111円台まで3円下落。個人は小幅ながら再び買い越しへ転じ、利益を確定した。

 あるFX会社の幹部は「9月の大規模な個人の売りは、各社で幅広く見られた。逆張りスタンスは相変わらずと言ってしまえばそれまでだが、勘だけではなく、うまく流れをつかめるようになってきた」と話す。

 <「灰色のサイ」、来年は暴れ出すのか>

 だが、来年も逆張りが効果的な戦略となるとは限らない。大きなリスクが顕在化すれば、大底を読み切る以外の逆張りは「大けが」となりかねないためだ。

 その来年、キーワードとなりそうなのが「灰色のサイ(グレーライノー)」だ。

 これまでの経験や知識から予想できない事象の発生を意味する、極めて珍しい「ブラックスワン(黒い白鳥)」のリスクに対し、「灰色のサイ」はよく知られており軽視されがちだが、いったん暴れだすと止められないような大きなリスクを指す。

 欧州では、イタリア政治や英国の欧州連合(EU)離脱問題が極めて不透明。日本を含むアジアは米中貿易摩擦問題が直接、間接的に大きな影響を及ぼしかねない。「唯一確実なのは、不確実だということ」(バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ)という。

 ソシエテ・ジェネラルのグローバルストラテジスト、アルバート・エドワーズ氏は以前、南アフリカの動物保護区を訪れた際、ライオンやヒョウ、サイ、ゾウなどより、野牛のほうが危険だと忠告を受けたことがあるという。

 「明らかに危険な他の動物に比べて(人が野牛には)油断することが原因。死に至らしめるのは油断であり、同じことが投資家の間でも発生している。緩和マネーを主因とするマクロ不均衡は誰もが知っているが、投資家はそれを無視し続けている」とエドワーズ氏は話している。

 

 (基太村真司 編集:伊賀大記)