写真・図版 景気後退の予兆として注目される3カ月物米財務省短期証券(Tビル)と10年国債の利回りの逆転(逆イールド)が、10月11日に解消した。写真は取り引き終了後のニューヨーク証券取引所で画面を見るトレーダー。10月2日、ニューーヨークで撮影(2019年 ロイター/Lucas Jackson)

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 Jonnelle Marte

 [ニューヨーク 22日 ロイター] - 景気後退の予兆として注目される3カ月物米財務省短期証券(Tビル)<US3MT=RR>と10年国債<US10YT=RR>の利回りの逆転(逆イールド)が、11日に解消した。投資家が景気の先行きに楽観的になったと解釈することもできるが、今回の逆イールド解消は市場のテクニカルな要因で引き起こされた面がある。このため一部の専門家は、米景気の足場が依然としてぜい弱かもしれないと警戒している。

 債券利回りは通常、期間の長い銘柄が短い銘柄を上回っている。しかし、先行き不安が高まると長期債が買われて利回りが下がり、短期債の利回りが長期債を上回る逆イールドが起きる。

 また、米国債市場では1955年以降、景気後退の前には常に逆イールドが目にされ、逆イールドが発生してから実際の景気後退入りまで数年を要する場合もある。

 いずれにしても逆イールドと景気後退の相関が高いため、過去1年間に米国債の利回り曲線のところどころで逆イールドが発生すると、投資家の間で緊張感が高まった。

 サンフランシスコ地区連銀が昨年公表した調査リポートによると、3カ月物TBと10年債の逆イールドは、景気後退の前兆として最も信頼度が高いと指摘されている。この現象は今回、5月末に始まった。

 <残る先行き不透明感>

 3カ月物TBと10年債の逆イールドが解消した10月11日は、世界経済に対する楽観論が台頭して長期債の利回りが上昇した。

 この日は、米国と中国が通商協議を巡って「第1段階」の部分合意に達し、両国の緊張が緩和するとの期待が高まった。さらにその数日後、英国と欧州連合(EU)が英国のEU離脱条件を巡る協議で合意した。

 ただ、ストラテジストは米中通商問題と英国のEU離脱問題は、まだ協議が継続中だと指摘する。

 バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの米金利ストラテジー責任者、マーク・カバナ氏は「最近の動きは、霧が晴れるのに役立った」と説明しながらも、先行きは相変わらず不透明で、企業や消費者はまとまったお金を使うことに不安を感じていると述べた。

 小売売上高や製造業景況感指数の悪化も、米景気減速への懸念を強めた。

 <FRBの短期債購入、影響した可能性>

 最近の米国債利回りの動きは景気見通しの反映ではなく、米連邦準備理事会(FRB)の政策と結びついている側面が大きい。FRBは11日、短期金融市場の流動性を高めるため、月600億ドルの資産購入を開始すると発表した。アナリストの話では、FRBの資産購入でTビルは価格が上昇し、利回りが下がっている。

 レンディングツリーの首席エコノミスト、テンダイ・カプフィゼ氏によると、最近の逆イールド解消は、利回り曲線が景気の見通しとは関係なく動き得るという事実を改めて思い起こさせた。

 外国人投資家の売買動向も、逆イールド解消に一役買った。ドイツや日本などで国債利回りがすでにマイナス圏に入っているため、米国債は資金の逃避先として買われて長期ゾーンの利回りが押し下げられた、とオックスフォード・エコノミクスの首席米国エコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は分析している。 

 利回り曲線は、景気後退入りが明確になってFRBが利下げを開始する前に、いったんスティープ化することが珍しくなく、逆イールド状態がずっと続くとは限らない点にも注意を要する。

 例えば、利回り曲線は2006年夏に逆イールドとなったが、07年春には通常の傾斜に戻り、その後は「グレートリセッション」を通じてこの状態が続いた。01年の景気後退が始まる前にも、利回り曲線が一時的にスティープ化した。

 サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は最近、今のような低金利環境では利回り曲線が、景気後退入りの予兆として以前ほど信頼できないと述べた。

 TSロンバードのマクロストラテジスト、ニコル・ヘーン氏は、最近の逆イールド解消について「安全地帯に入ったという保証はない。数年以内の景気後退入りは大いにあり得る」と強調した。