写真・図版 11月11日、タカタが直面するエアバッグ問題は、スウェーデンに本社を置く自動車安全システム世界最大手のオートリブにとっては、千載一遇の商機かもしれない。都内で11月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

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 [ストックホルム 11日 ロイター] - タカタ<7312.T>が直面するエアバッグ問題は、スウェーデンに本社を置く自動車安全システム世界最大手のオートリブ<ALV.N>にとっては、千載一遇の商機かもしれない。

 オートリブは世界最大手ではあるが、これまで日本市場ではタカタの牙城を切り崩せないでいた。日本では、長年培ってきた関係が物を言ういわゆる「系列」文化が根強いため、日本の自動車メーカーとタカタの間に割り込むことが難しかった。

 ところが、ここに来て潮目が変わった。米規制当局は、タカタがエアバッグを膨らませるためのガス発生剤として使用している硝酸アンモニウムが、エアバッグの異常破裂を引き起こした要因、との見方を発表。これを受けて、日本の自動車メーカーが相次いで、タカタ製エアバッグ部品のインフレーター(ガス発生装置)の使用停止を決定した。

 ホンダ<7267.T>やトヨタ<7203.T>、日産<7201.T>がタカタを拒んだことで、日本の自動車安全業界の勢力図が大きく変わるかもしれない。

 ある業界関係者は「タカタの大得意先のホンダが、今後はタカタから(インフレーターを)調達しない、と宣言したことの持つ意味は大きい」と指摘。「両社は一緒に成長してきたようなものだ」と話した。

 オートリブはすでに動き出している。オートリブは今年、リコール対象となったタカタ製インフレーターの交換部品の生産能力増強に向け、売上高の1%にあたる9000万ドルを投資。今年と来年で、主にホンダ向けに、最大2000万個の交換部品を供給する見通しという。

 ハンデルスバンケン・キャピタル・マーケッツのアナリスト、ハンプス・エンゲルラウ氏は「タカタ問題を受けて、オートリブの市場シェア拡大チャンスは、かつてないほどに大きい」との見方を示している。

 受注は早くも急増。前部座席エアバッグの新規受注の世界シェアは過去2四半期に50%を記録し、以前の約30%から急上昇した。

 <オートリブへの乗り換え必至>

 オートリブのデータによると、いわゆるパッシブセーフティー製品の同社シェアは2014年、日本で20%程度だった。欧州と北米ではその2倍で、日本を除くアジアでは35%を超えている。なかでも、エアバッグ事業は、売上高全体のおよそ3分の2を占めているという。

 タカタは昨年、第2位のグローバルプレイヤーだった。ZF・TRW(旧TRWオートモーティブ)が続き、ほかに豊田合成<7282.T>、日本プラスト<7291.T>、芦森工業 <3526.T>、ダイセル<4202.T>などが大手だ。

 タカタは先週、インフレーターへの硝酸アンモニウム使用を2018年末までに段階的に中止する方針を表明。ただアナリストは、ブランドイメージの立て直しには長い時間がかかる、との見方を示している。

 ライバルにとって、チャンスは大きい。バリエント・マーケット・リサーチは、タカタ製インフレーターの市場シェアは2020年には5%となり、2014年の22%から大幅に落ち込むと予想している。

 特に大きな商機は、数年後の新モデル車へのエアバッグ供給であり、オートリブは有利な位置に立っている。オートリブはこの20年、現地サプライヤーの買収を通じ日本市場で2位の地位に上り詰めた。

 DNBのアナリスト、クリスター・マグナーガード氏は「タカタ問題で手こずらされた自動車メーカーが今後、慎重になることは必至。無名の会社ではなく、より安全な選択をしようとするだろう」と述べた。

 一方、タカタの危機は、供給業者が直面する問題も浮き彫りにした。それは、質を犠牲にすることなく、増産に対応するということだ。

 ノルデア・インベストメント・マネジメントのマティアス・レイジョン氏は、オートリブは生産を拡大した際にも「生産チェーン全体で品質を死守しなければならない。これはチャレンジだ」と語った。

 

 (Johannes Hellstrom記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦)