写真・図版 9月12日、日銀が7月末の金融政策決定会合で「政策修正」を決定してから、1カ月余りが経過した。市場機能の低下防止を狙って長期金利の変動幅拡大などを打ち出し、発表直後は円債市場の流動性が回復したものの、足元の長期金利は0.1%前後で再びこう着感を強めている。写真は都内で昨年6月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

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 [東京 12日 ロイター] - 日銀が7月末の金融政策決定会合で「政策修正」を決定してから、1カ月余りが経過した。市場機能の低下防止を狙って長期金利の変動幅拡大などを打ち出し、発表直後は円債市場の流動性が回復したものの、足元の長期金利は0.1%前後で再びこう着感を強めている。

 日銀は政策修正の効果を見極めるには一定の時間経過が必要というスタンスで、一部の市場関係者が求める一段の変動幅拡大には距離を置いている。 

 <長期金利が再びこう着>

 日銀が7月31日に示した「政策修正」では、長期金利の一定の変動幅拡大を容認する一方、当分の間、極めて低い長短金利水準を維持するとした「新たなフォワードガイダンス」の導入も盛り込んだ。

 黒田東彦総裁は同日の会見で、ゼロ%を中心に上下0.1%となっていた長期金利の変動幅について「その倍程度に変動し得ることを念頭に置いている」と表明。上下0.2%程度の変動を許容する方針を示した。

 長期金利は、直後に一時0.145%に急上昇したものの、日銀がすかさず予定されていなかった国債買い入れを実施したこともあり、その後はおおむね0.1%前後での推移が続いている。

 こうした市場の現状に対し、日銀は市場機能の低下も時間をかけて累積してきた副作用の1つであり、その改善には一定の時間が必要とみている。

 また、日本の実体経済や株式・外為市場や米金利動向など日本の国債市場を取り巻く環境に大きな変化がなかったことも、長期金利の変動幅が限定的だった要因と分析している。

 <市場の変動に期待>

 ただ、現在の長期金利の推移について、日銀内には「もう少し変動があってもいい」(幹部)との指摘もあり、0.1%程度の長期金利水準に意図的に誘導しているわけではなさそうだ。

 今後、日銀の見通しに沿って経済・物価情勢が改善したり、米金利が上昇するケースなどでは、長期金利の上昇を容認するとみられる。

 日銀は9月に入って残存期間10年までのゾーンの国債買い入れ回数を減らす一方、1回当たりの買い入れを増額した。

 直近の買い入れ額を前提にした場合、月間の買い入れ額は全体で8月よりも減り、年間の日銀の国債保有増加額は、年間40兆円弱まで縮小する方向。

 こうした弾力的な金融市場調節を駆使しつつ、国債市場の需給や環境の変化に伴って、価格の変動率や取引量がどのように変化していくのか、政策修正の効果を慎重に見極めていく考えだ。

 <副作用対応ありきではない>

 一方、市場の一部では、政策修正後も長期金利がこう着し、流動性が回復していない点を指摘し、今回の「政策修正」では副作用対応として力不足であり、現在の上下0.2%程度の長期金利変動幅を一段と拡大すべきという声もある。

 だが、日銀はそうした対応には距離を置いている。

 日銀は、今回の「政策修正」について、物価見通しを下方修正した結果、金融緩和のさらなる長期化が避けられないと判断し、これに対応して積み上がる副作用への対応策を示したと位置づけている。

 変動幅のさらなる拡大を求める一部市場関係者の意見に対して、別の幹部は「副作用の存在を最優先に考えて政策調整したわけではない。あくまで物価見通しの下振れと、それに伴う金融緩和の長期化の想定が先」と述べる。

 一段の副作用対策が議論の俎上(そじょう)に上るには、7月末に想定していた2%達成時期のさらなる先送りの可能性が高くなるなど外部環境の変化が必要との立場とみられる。

 経済・物価見通しに大きな変化がない中で副作用対応に動けば、名目の長短金利を低位に誘導し、金融緩和の効果を狙うという現行のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の根幹が、なし崩し的に揺らぎかねないという危惧もありそうだ。

 もっとも、今回の措置が市場機能の低下という副作用対策として有効だったかのかどうか、その成否はこれから試されることになる。

 

 (伊藤純夫 編集:田巻一彦)