写真・図版 4月18日、日銀は17日公表した「金融システムリポート」で、金融システムに対する警戒レベルを一段引き上げた。都内で1月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

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 伊藤純夫

 [東京 18日 ロイター] - 日銀が17日に公表した「金融システムリポート」は、低金利環境の長期化を背景に金融機関が積極的にリスクを取っている一方、地域銀行を中心にリスクに見合った収益が確保できず、自己資本比率とストレス耐性が低下しているとの分析結果を明記した。

 金融システムに対する警戒レベルを一段引き上げたと言え、バブル期とは違ったかたちで不均衡が蓄積されていることに対し、日銀が警戒感を強めていることが鮮明になった。

 今回は、新たに5年後に発生したショックへの耐性をチェックするテスト結果も公表。5年後をメドに経営指標の改善を求める日銀の姿勢が透けて見える。

 日銀は同リポートで、日本の金融システムの現状に対し「安定性を維持している」としつつ、さまざまな分析結果をもとに、金融システムリスクが多方面から蓄積されつつあることを指摘した。

 分析の中で最も特徴的なのは、リーマンショック級のイベントが発生した場合のストレステストについて、これまでの足元に加えて5年後に発生したケースも新たに示したことだ。

 その結果は、相当に厳しい内容だ。ショックが発生しなくても、これまでと同じペースで企業の借り入れ需要が低下すれば、5年後には地銀(国内基準行)の2割、10年後に6割が最終赤字に転落。

 5年後にショックが起きた場合は、半数超の地銀の自己資本比率が、6%以下(規制水準は4%)に低下すると試算した。

 低金利環境の長期化や貸し出し競争の激化を背景に、地域金融機関は信用力の相対的に低い「ミドルリスク企業」向け融資を積極化。ショックの発生とともに信用コストの増大につながりやすい構造が浮き彫りになった。

 今後も地域の人口・企業数の減少が続き、低金利環境と本業収益の減少が継続する可能性が大きい。

 減少する本業収益をカバーしてきた信用コストの低下と、有価証券の益出しの基調にも「変調の兆し」が顕在化。生き残りをかけた再編への決断が遅れれば、「立ち枯れ」かねない現実をあえて描き出した側面がありそうだ。

 <自己資本低下で融資抑制の可能性>

 不動産融資にもリスクが潜む。銀行の不動産業向け貸し出し残高は、すでにバブル期を上回っているが、地域金融機関では貸出全体に占める不動産業向け融資の比率が高い。

 近年は、アパート・マンションローンなど期間の長い貸し出しを中心に不動産融資を拡大し、中には中長期的な物件の収益性を度外視した融資も少なくないとされる。

 人口減少の進行によって、空室率上昇や賃料値下げなどに直面すれば、不良債権化するリスクもある。日銀によると、不動産融資に積極的な金融機関には「自己資本比率が低めの先が多い」という。

 同リポートでは、金融の「過熱」と「停滞」の有無を可視化した「金融活動指標(ヒートマップ)」において、「不動産業向け貸出の対GDP比率」に唯一、過熱を示す赤色が灯った。ただ、金融活動に「全体としてバブル期のような過熱感はうかがわれない」とした。

 それでも分析結果からは、過度なリスクテイクを行なっている地銀を中心に、将来のショックに対するぜい弱性が増している実態が浮かび上がる。

 個別にみると、ショック発生時に大幅な自己資本比率の低下に直面する地銀もあり、そうした銀行は「たとえ規制水準を上回っていても、自己資本比率の底上げを企図して貸出を大幅に減らすことが予想される」という。

 金融庁は3日、地域金融機関の健全性を確保するため、おおむね5年以内のコア業純が継続的に赤字となるケースや、自己資本比率が4%を下回ることが見込まれる場合には、立入検査や業務改善命令を出すことができるようにすることなどを柱とした早期警戒制度の見直し案を公表した。

 金融庁、日銀ともに5年先を1つのめどとした収益性や自己資本のシナリオを重視する姿勢を鮮明にしている。金融面の不均衡が静かに着実に蓄積する中で、金融当局が足並みをそろえて地銀経営陣に早期の決断を促しているようにもみえる。

 

 (編集:田巻一彦)