写真・図版6月25日、三菱重工業は、カナダの航空機・鉄道車両大手ボンバルディアから小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収することで合意した。写真は18日、パリの航空ショー会場でスペースジェットを背に取材に応じる三菱航空機のアレックス・ベラミー最高開発責任者(2019年 ロイター/Pascal Rossignol)

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 [パリ/モントリオール 25日 ロイター] - 三菱重工業<7011.T>は25日、カナダの航空機・鉄道車両大手ボンバルディア<BBDb.TO>から小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収することで合意した。ボンバルディアが持つ保守管理サービス網と世界的な顧客基盤を活用し、なかなか進まなかった小型ジェット市場における基盤確保に向けて取り組みを加速させる狙いだ。

 MRJ(三菱リージョナルジェット)という名で始まった日本勢として50年ぶりに旅客機市場に復帰するという一大事業は、納期が当初計画から7年も遅れるなど壁にぶつかっている。ただボンバルディアが市場から撤退したことで、三菱に再びチャンスが巡ってきた。

 先週のパリ国際航空ショーでは、三菱重工子会社の三菱航空機がMRJから名称を「スペースジェット」に変更するとともに設計を手直しした新たな機種(65─88席)をお披露目し、搭乗客が頭上の荷物入れにキャリーバッグを入れられるようになる天井の高い客室などをアピール。その際に同社最高開発責任者でボンバルディアの元幹部でもあるアレックス・ベラミー氏はロイターに「市場参入に際して最も手ごわい障壁の1つは、顧客との関係づくりとそれを維持するためのサポート態勢を築くことだ。(メーカーが)成功するか失敗するかは、製品サポートにかかっているとわれわれは承知している」と語った。

 特に1日に最大で10回飛行するような最も消耗を強いられる小型ジェット機においては、こうしたサポート力の重要性が物を言う。

 ボンバルディアは、コスト面の負担に耐えられずに市場からの撤退を余儀なくされた。スペースジェットよりはやや規模が大きいボンバルディアの110─130席の「Cシリーズ」は設計面で称賛を浴びたが、本格的に商用化したのは、それを1ドルで取得して「A220」に改称した欧州エアバス<AIR.PA>だった。

 そしてボンバルディアは今回、CRJ事業を三菱に売り渡して小型旅客機市場から完全に手を引くことになる。

 三菱も小型機開発は大幅な予算オーバーだが、ある業界筋は「日本勢はより長くゲームを続けることができた。三菱はボンバルディアよりも資金が潤沢だ」と説明した。

 <苦肉の策>

 元来はボンバルディアとブラジルのエンブラエル<EMBR3.SA>の牙城だった小型旅客機市場に、三菱が殴り込みをかけたのは2003年だった。

 三菱が開発したのは70─90席程度の2つの機種。他のメーカーと同じように、主戦場である米国で、小型機を運航するリージョナル航空会社が大手航空のパイロットに委託できるのは最大76席までの旅客機に制限されるという労使協定が、緩和されると期待していたのだ。

 ところが案に相違してこの協定は維持されたため、より大型の機体は米国外でしか販売できない一方、70席程度の機体では米国では小さ過ぎて競争力を持てないという苦境に立たされた。協定の一部項目が適用されると、座席数は65席に抑えなければならないケースさえも出てくる。

 さらに協定で最大離陸重量が8万6000ポンドに設定されているので、三菱の旅客機やエンブラエルの最新鋭機「E175」など新型でエンジンが大きくなった機種には特に厳しいハードルとなっている。

 そこで三菱は、従来の「MRJ70」の設計を根本から見直し、米国では3クラスで65─76席、欧州では1クラス88席として運航できる「M100スペースジェット」を生み出した。以前より機体は大型化したが、新素材を使って重量を抑えている。ベラミー氏は「斬新で最適化された旅客機になるだろう」と胸を張った。

 三菱は、エンブラエルの「190」に対抗する目的で、100席弱の「M200」の生産も検討中だ。 

 (Tim Hepher、Allison Lampert記者)