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[東京 26日 ロイター] - 中国当局が短期金利上昇の「火消し」に回ったにもかかわらず、市場の不安は晴れない。金融改革実現へ中国の本気度が感じられ、成長率鈍化など短期的な影響は避けられないと警戒されているためだ。
一方、米国では堅調な経済指標が続いているものの、金利上昇の影響が懸念され始めてきた。日本は企業決算発表と参院選を前に材料が乏しくなっており、外部環境に不透明感が強まる中、日本株には押し目買いは入っても上値を追う買いは乏しい。ドル/円もレンジ相場色が強くなっており、円安の後押し効果が薄れている。
<中国株下落で失望広がる>
中国株式市場の滬深300指数<.CSI300>は6日ぶりに反発して始まったが、その後、間もなくマイナス圏に沈むなど不安定な展開。上海総合指数<.SSEC>も下げ幅を縮める場面があったものの、プラス圏には浮上せず、徐々に軟化した。中国株が弱含むのと連動するように、買い先行で始まった日経平均<.N225>も崩れ、日中高値から350円以上、下落した。「きょうこそは中国株が切り返すとみて、日本株を買っていた短期筋が投げたようだ」(国内証券)という。
中国人民銀行(中央銀行)は25日、一時的に資金不足に陥った銀行に対し、必要なら資金を供給する考えを示したほか、既に一部の金融機関に資金を供給したことも明らかにし、短期金融市場の動揺を抑える姿勢を打ち出した。また人民銀幹部は、市場金利を妥当な水準に誘導する方針を示した。
欧米市場では、人民銀行による「火消し」を好感し、株価は反発したが、当の中国では金融改革の副作用への慎重ムードが変わらなかったことで失望感が広がっている。「人民銀行が動いたのは、シャドーバンキングなどへの警告という所期の目的は達成されたということなのだろう。ただ金融改革に対しての当局の本気度は高いようだ。妥当な金利水準というのがどの程度かも読めず、市場では金融改革が及ぼす影響に対しての警戒が強い」と楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏は指摘する。
20日に一時28%まで上昇した指標金利である7日物レポ金利(加重平均)は、26日の市場では8%付近まで低下している。ただ、急騰前の3─5%に対し高止まりしているほか、一時12%まで上昇するなど依然として不安定だ。
<急ピッチの米金利上昇>
前日の欧米市場では、5月の新築1戸建て住宅販売や米耐久財受注など米経済指標が堅調だったことも株価を後押しした。これまでの市場であれば、堅調な米経済指標は、金融緩和の早期縮小観測を強めるため、株売り材料とされることもあったが、前日は素直な反応をみせた。
「量的緩和第3弾(QE3)の早期縮小を示唆したバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の判断が正しかったのか市場はみている。議長の想定通り、経済指標が改善していけば、市場もQE3縮小を早く織り込み、リスクオン方向に反応しやすくなるだろう」(マネックス証券チーフ・エコノミストの村上 尚己氏)という。
ただ、米金利の上昇が止まらいことが懸念要因だ。10年米国債利回りは25日の市場で2.6%台まで上昇。モーゲージやジャンク債などの金利も上昇している。米経済の実力からすれば、3%程度の金利であれば妥当範囲との見方もあるが、2カ月足らずで1%程度上昇したピッチの速さには警戒感も出ている。景気が回復し、金融緩和も縮小方向となれば金利が上昇するのは自然な動きだが、好調な住宅市場などに冷や水をかける懸念もある。また金利上昇(債券下落)で損失を受けたヘッジファンドなどが、穴埋めのために他資産を売却する動きににも注意が必要だ。
ゴールドマン・サックス証券の推計によると、東証1部企業の売上高総額のうち、米国に依存する割合は約8%であるのに対し、中国に依存する割合は約6%。米国経済が加速すれば、中国がソフトランディングに向かう限り、日本企業の企業収益への影響は限定される(25日付リポート)という。ただ、米国が堅調であれば、中国リスクを抑える期待を持てるが、米経済まで減速すれば、アベノミクスだけで日本経済を支えるのは難しくなる。
T&Dアセットマネジメント・チーフエコノミストの神谷尚志氏は「欧州はもともと財政緊縮政策をとっているほか、中国もある程度の短期金利上昇を許容すれば経済を圧迫する。米国は経済が堅調だからこそQE3を視野に入れたが、米金利上昇もあり、自律的成長に乗れるほど強くはない。市場が荒れれば当局からなだめるような発言や行動が出るかもしれないが、日本を取り巻く環境は厳しく、積極的にリスクをとれる状況ではない」と述べている。
(伊賀大記 編集:北松克朗)