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[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、「控えめ(modest)」、「住宅ローン(mortgage)」、「インフレ(inflation)」の3つの言葉を巧妙に使うことで自らに時間的猶予を与えた。
今回のFOMCについては、声明が、早ければ9月にも緩和策縮小を開始するお膳立てを示すとの予想が多かったが、この3つの言葉は景気回復に対するFRBの自信に疑問を生じさせる結果につながった。
FRBは、景気回復は続いているとの認識を示す一方、月額850億ドルの資産買い入れを継続する意向をあらためて表明。リスクとして控えめな成長、住宅ローン金利の上昇、低インフレをあげた。
バーナンキ議長が6月19日に示した債券買い入れの年内縮小開始、2014年半ばでの終了の可能性に関する言及はなかった。
ジェフリーズのマネーマーケットエコノミスト、トーマス・シモンズ氏は「近い将来のある時点でFRBが緩和縮小を開始することは明らかだが、道のりは長い。全般的にFRBのスタンスはまだかなり緩和的だ」と述べた。
背景にあるのは米経済の状況だ。
これまでにもバーナンキ議長は、資産買い入れ縮小の時期は経済状況次第で、FRBの予想するペースでの成長が前提との認識を繰り返してきた。
今回のFOMC声明では、「緩やか(moderate)」としてきた回復ペースが「控えめ(modest)」にやや下方修正された。上半期の米経済が予想を下回ったことを踏まえたと考えられる。
第1・四半期の米成長率は年率換算で1.1%、第2・四半期は1.7%にとどまっている。
民間のエコノミストは、FRBが考える今年の成長率2.3─2.6%の下限に達するには、下半期は平均3.1%の成長が必要とみている。これはかなり難しく、ロイターによるエコノミスト調査では、今年後半の成長率は2.45%と予想されている。
7月と8月の雇用統計で非農業部門雇用者が大幅に増加すれば、緩和縮小をすぐにでも開始する確証が得られるかもしれない。
しかしバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミスト、マイケル・ハンソン氏は、経済成長がもしさえない伸びにとどまれば、FRBは成長見通しの大幅下方修正を余儀なくされると指摘。「FRBは、成長とインフレの見通しを引き下げる一方で、緩和縮小の開始を口にすることになる」と述べた。
そのような矛盾したメッセージは、5月と6月のような市場の混乱を招くおそれがある。FRB高官は6月と7月上旬に発言を繰り返し、急上昇した長期金利の押し下げに苦心した。
ハンソン氏は「あのような状況が繰り返される可能性がある。ただ、あの時市場は、9月の縮小開始を規制事実のように考えすぎた感がある。今は一部が織り込まれつつある」と述べた。同氏は12月の緩和縮小開始を予想している。
<住宅市場のハードル>
一部のFRB当局者は、債券買い入れの開始が9月でも12月でも大きな違いはないとの見解を示している。
懸念要因の一つと考えられるのは、最近好調さが目立つ住宅部門だ。住宅価格は1年以上にわたり上昇を続けている。
ただ、長期債利回りの上昇により、30年物の住宅ローン固定金利は5月以来1%ポイント超上昇し、4.6%をやや下回る水準まで達した。住宅市場回復の土台はもろいことが露呈する可能性が高まっている。
米抵当銀行協会(MBA)によると、住宅ローンの申請件数は、5月にリセッション後の最高を記録して以来13%減少している。中古住宅販売も6月は予想外の減少となった。エコノミストは、住宅ローンの増加がなければ低迷は続くと予想している。
アメリカ大和証券のエコノミスト・マイケル・モラン氏は「FOMCは住宅ローン金利の上昇に言及した。上昇が住宅部門にもたらす下振れリスクに神経質になっていることを示唆している。成長のエンジンとされる住宅市場の下振れリスクを懸念するなら、問題の対応に自信がもてるようになるまで緩和縮小は見送られる」とみている。
<インフレの重要性を再確認>
おそらく最も注目すべき点は、FRBがインフレへの懸念をあらためて示したことだろう。
バーナンキ議長はこれまでも、景気悪化の要因になるとして過度に低水準のインフレ率の危険性を指摘してきた。
5月に議長が緩和縮小を示唆した時には、この懸念は消えたように思われた。唯一の問題は、インフレがFRBが掲げる2%の目標に向かって上昇しているのではなく、さらなる低下の兆候がみられることだ。
FRBは一時的と強調しているが、それでも9月の緩和縮小開始を遠ざける要因であることは間違いない。
今回のFOMCでディスインフレに対する懸念をあらためて示したのは、物価をめぐる懸念から緩和縮小に関する6月の決定に異議を唱えたブラード・セントルイス地区連銀総裁への配慮かもしれない。
ただバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのハンソン氏は、今回の言及は低金利をめぐる当局者の潜在的な懸念を反映したものとみている。さらにそれ以上に重要なのは、問題がFRBのコントロールできないところにあることを改めて示したことだという。
「実質的なインフレの上昇は、コモディティ価格が主導した2011年までさかのぼる。しかしこの時は新興国市場の景気が回復し、欧州もまだリセッションに陥っていなかった。今とは大きな違いがある」と指摘した。
(Steven C. Johnson記者;翻訳 中田千代子;編集 田中志保)