インターネットや本で勉強することはできても、個人投資家がプロの見方や意見を直接聞く機会は、そんなに持てるものではありません。今回はカブドットコム常務執行役で、ペンネーム「る〜さ〜!」として株式投資についての評論活動などをしている臼田琢美さんに、ネット投資家初心者へのアドバイスを語っていただきました。
‥‥ここ数年のネット投資家の急増ぶりには、目を見張るものがあります。業界に身を置くひとりとして、現状をどのように受け止めていますか。
「とても面白い時代になったと、素直に感じています。インターネットの普及によって、プロと個人投資家の持つ情報の差がうんと縮まった。企業業績だって、ついこの間まで新聞記事や、せいぜい有価証券報告書を参考にする程度だったのが、いまでは膨大な情報に簡単にアクセスできます。人の目に常にさらされているという意識は企業にも浸透し、情報開示を含め企業経営の透明性が高まってきた。幸い相場も堅調だし、株式投資に限っていえば、とても入りやすい環境が整ってきています」
‥‥プロと個人の持つ情報の格差が少なくなったということは、逆に腕の差が投資に成功するかどうかを分ける時代になったということですか。
「腕の差による勝ち負けは、いつの時代もつきものですからね。いまに始まったことではありません。私はかつて証券会社で営業に携わったこともありますが、同じ日に同じ値段で買った二人の投資家が、その後、一方は儲かり一方は利益が出ないなどというケースはあるものです。株式はギャンブルや宝くじに比べれば投資効率が良いと思いますが、それでも下手な人は負けます。もっとも最近のネット投資家は、そのあたりのリスクはよくご存知ですが」
‥‥リスクといえば最近のネット投資家は、投資信託から現物株、信用取引などといった段階を踏まずに、いきなりハイリスクの商品に手を出す人もいると聞いたことがあります。個人投資家の意識の変化を感じますか。
「あまりそういった実感はないのですが、私は常々、株式投資は最もリスクが高い商品から始めなさいとは言っています。少々乱暴な意見ですが、それがいちばん手っ取り早いと思っているのです」
‥‥ユニークな見解です。もう少し聞かせてください。
「株式投資でいちばん難しいのは、なんと言ってもリスク管理です。これはお分かりいただけますね。
負けの典型的なパターンのひとつをお教えしましょうか。
買った→価格が下がった→そのうち上がると思った→さらに下がった→売ると損だから我慢した→もっと下がった→いろいろな事情でお金が必要になった→仕方なく売った、大損した‥‥‥です。
このパターンを繰り返す人は、おおむね負け組です。なぜかというと、売り買いのタイミングを学習していないからです。
株ってイメージと違って、意外に下がらないものですよ。300万円分の株式を買って、全部紙くずになることはめったにない。我慢できるくらいの下げが多いのですが、それがいけない。いつまでも損や利益を確定できない人は、儲けることができません。
オプション取引などには、期日があります。誤った判断をすれば、はっきりと損をします。結果が出る。だから私は、少額でいいからオプション取引をしてみるといいと言っています」
‥‥オプション取引をはじめとするデリバティブ取引は、現物株よりうまくすれば利益は大きいかもしれません。でも損失も膨らむ可能性がある。初心者が手を出すには危険すぎませんか?
「確かにその通りですが、損を確定させるオプション取引もありますから。300万円分の現物株を買って280万円になったら、20万円の損です。その状態で、なんとなく持ちつづけている人も、多いと思います。
だったら、万一の損失額を例えば20万円に限定して、オプション取引をするといい。うまく行けば、リターンも大きい。修復できない損を生むような取引は論外ですが、リスクの高い取引を通じて株価の見通し、時間によって変化する資金の価値、情報の分析の仕方や動くタイミングが身をもって学べます。それから投資信託や現物株をみれば、それまでとは違った印象で接することができると思う。自分なりの投資手法を見つける近道でもあります。
株式投資に、誰がやっても儲かる方法はありません。当社の顧客で特定の銘柄にほれ込み、こつこつと買い増ししている方がいます。上がっていても買うときは買う。でも相場が右肩あがりの時期には、そうした手法はかなり効果的です。お上手だな、と思います。そんな投資の仕方もある。一方で、1日で手仕舞いし短い時間を最大限有効に使って稼いでいる人もいる」
‥‥じっと我慢しきれるわけでもなく、フットワーク軽く動けもしない。そういう人がまずい、と。
「私はよく食べ物屋にたとえるのですが、出店するときは、誰でもその地域の競合相手やお客さんの好みを考えます。株式でいえば、どの銘柄を買うか、がこれにあたります。どんな投資の初心者も、これは熱心に考える。
実際は、出店した後のほうが大変でしょう?自分の味がお客さんに受けているか気にしない経営者はいない。毎月赤字なのに、『いつかお客がくるだろう』と期待して、ただ何となく店を開ける店主も少ない。
でも株式投資の世界には、こんな方が結構います。そんな人は、儲かったら店を広げるのか、支店を出すのかも判断できない場合が多い。うまい人と下手な人の差は、買ってから出ます。ネット投資家には、ぜひ買った後の作業をしてもらいたい」