投資信託のリスクなどを十分に理解していますか? 運用、販売会社がつくる資料や投資家への説明は「難しすぎる」ともいわれますが、それを改善しようとする動きが出てきました。今回から、投資家にとって「わかりやすい投信」の実現に向けた投信関係者の検討状況を紹介します。
2008年のリーマン・ショック、そして欧州債務問題は、いまも世界経済に影を落としています。日本の投信は、投資先の7割強を外貨建ての海外資産が占めていますから、大きな損失を被った投資家も多かったと思われます。この間、運用手法が複雑で高リスクの投信は格段に増えましたが、投資家への情報提供は特段変わりませんでした。
そうした中で動き出したのが、金融行政の重要テーマを話し合う金融審議会の「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(以下WG)です。投信業界の関係者や専門家らが集まって今年3月から、投信が抱える課題について議論しています。
WGで指摘されたのは、投信など金融商品の説明に専門用語が多く使われ、投資家が理解できないでいる実態です。平易なことばで初めて投資する人にもわかりやすい情報提供に努めるべきだ、との意見が大勢です。
投資家に提供される投信の情報としては、基準価格の上昇率や支払われた分配金の金額などがあります。これらは、どの投資家にも運用成績の良しあしが比較的イメージしやすい情報でしょう。
しかし、各種報告書に記載されることがある「標準偏差」はどうでしょうか。標準偏差は投信の収益額の変動率を数値化した統計指標です。専門家はリスクを表す指標としてよく使いますが、「これでは実感が湧きにくい」と批判されています。
そこでWGでは、最悪でいくら損失が発生するかを「想定最大損失額」として算出、公表するという案が出ています。人気の高分配型投信も投資先の違いで「最悪のケース」にばらつきが出て、投資家が比較しやすくなると見られます。
投信の運用責任者であるファンドマネジャーの情報を詳細に開示するべきだ、との意見もあります。ファンドマネジャーの氏名や経歴などの情報は、大切なお金の運用を任せられるかどうかを投資家が判断するのに役立つ、という見方です。
最近は、日本株だけに投資するといったシンプルな資産構成の投信が減る一方、複数の資産や地域に投資する投信が増えています。通貨選択型のように為替やデリバティブの力を借りて高水準の分配金を捻出する投信も登場しました。組み入れ資産がそれぞれどの程度、運用成績に反映されているかがわかりにくくなっています。
このため、WGは投信に組み入れた資産の騰落率を単純に示すだけでなく、投信全体の運用成績に各組み入れ資産がどの程度寄与しているか数値化し、公表することも検討しています。
WGの議論はまだ続いていますが、検討結果が実際に、情報提供の改善や充実につながることが期待されます。次回は、WGでさかんに議論されている投信の手数料について詳しく見ていきます。(リッパー・篠田尚子)