投資信託が抱える課題の改善策などを話し合っている金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(以下WG)の検討状況を、前回に続いて紹介します。今回は、個人投資家への影響が大きいと思われる手数料について詳しく見ていきます。
預金金利の低下や世界的な株価低迷、円高進行の影響を受けて、日本の投資信託市場では高水準の分配金を支払う毎月分配型投信が人気を集めてきました。そして通貨選択型を筆頭に、複雑な仕組みを持った様々な高分配投信が販売されるにつれて、投信の手数料の水準も引き上げられています。
例えば、運用中の信託財産に一定の料率をかけた額を投資家が負担する手数料の「信託報酬」も年々、高くなっています。上昇しているだけでなく、問題点はほかにもあります。
料率は運用会社が出す資料に「年率1.492%」などと表記されています。実は、信託報酬は日割り計算で日々、信託財産から差し引かれています。このため、料率を見ただけでは、実際にいくら負担したのかを実感しにくいのです。そこでWGは、率ではなく信託報酬の実負担額で開示することを検討しています。
さらに、中長期にわたって投信を保有し続けた場合、手数料水準が高いと結果的に保有期間中の値上がり益を押し下げてしまう可能性があります。このためWGでは、類似した投信との比較ができるよう、累積費用の開示にも取り組むべきだとの意見が出ています。
また最近は、海外で設定された投信を組み合わせて一つの投信をつくる「ファンド・オブ・ファンズ」という運用形態が多く用いられています。組み入れた各投信の手数料は、「その他の手数料」として信託報酬の料率に上乗せされます。
ところが、現状では「その他の手数料」を運用報告書に記載するか否かなどの開示方法は、運用会社によって違っています。WGでは信託報酬の中に含まれる「その他の手数料」について、開示する内容の統一化を検討しています。
投信を保有するにあたり、手数料負担を避けて通ることはできません。また、個人では直接投資するのが難しい国・地域、資産への投資ができるので、相応の手数料を負担することは自然なことだともいえます。しかし、運用会社によって開示している内容がまちまちだったり、専門用語の羅列で実際の負担額が妥当なのか判断できなかったりと、現在の情報開示は投資家にとって理想的な姿だとはいえないでしょう。
WG出席者から出された情報開示の改善、充実に向けたアイデアは、投資家保護の観点からもぜひ実現してほしい内容ばかりです。ただ、WGの議論はまだ続いており、最終的に実現されるかは予断を許しません。
いずれにせよ、健全な投信市場の発展には、投資家の意見を反映することが重要です。個人投資家の方々には、投信への関心を高めていただくと同時に、疑問に感じる点については取引のある金融機関の担当者に積極的に質問していただきたいと思います。(リッパー・篠田尚子)