大丸×松坂屋 交流店長、奮闘中2008年03月27日 Jフロントリテイリングへの経営統合で、百貨店大手の大丸と松坂屋が両社本店の店長を相互に派遣しあってから、半年が過ぎました。ライバル会社で経験を積んだやり手百貨店マンがお互いの総本山の改革を進めるという人為的な「外圧」は旗艦店を変えつつあります。
■老舗百貨店 統合で大胆人事
「自分がどちらの会社の人か分からないようにしてやろうと思う」。Jフロントリテイリング社長兼最高経営責任者(CEO)の奥田務さん(68)はこう笑う。 昨年9月以降に実施した計約100人の人事交流の目玉が松坂屋名古屋店長の本多洋治さん(59)と大丸心斎橋店長の熊木敏さん(55)。本多さんは大丸神戸店長、熊木さんは松坂屋全体の品ぞろえなどを決めるMD本部長だった。 人事制度や情報システムも2年後までに統合し終えるが、計700年の歴史を持つ百貨店の老舗(しにせ)同士。例えば、売り上げ分類一つとっても、店頭と外商の2分類の松坂屋に対して、大丸は定価、特価、特販などと区分する。「売り上げの責任を重視するか、質を重視するか」(本多さん)と社内文化も異なる。互いの旗艦店トップの人事交流は、組織の融合は一筋縄ではいかないと判断した奥田さんの秘策だ。 売上高営業利益率4・1%と業界最高水準の効率経営の大丸に学びたい松坂屋と規模拡大を狙う大丸。百貨店「冬の時代」の生き残りをかけた最前線の2人を追った。
■大丸→松坂屋名古屋店長 本多洋治さん(59) 「神戸モデル」周辺店にも
百貨店では国内最大の松坂屋名古屋店を担う。分店格だが、業績が低迷する名古屋駅、岡崎、豊田の周辺3店舗を合わせた効率化を目指す本多さんは試行錯誤の日々だ。 前任の神戸店長時代、分店で赤字の新長田店を黒字にした。「神戸でできることができないはずはない」。3店長を神戸に出張させ、従業員の働き方を見てもらった。赤字の岡崎店は08年2月期、黒字に転換する見込みだ。 店ごとの売り場責任者に仕入れも兼任させるなどで計46人を確保、大半を名古屋店に振り向けた。 名古屋店でも昨年9月の着任と同時に婦人雑貨売り場から営業改革にも着手。販売を催事などと切り離して接客に専念させる枠組みをつくった。 だが、「仕事が忙しくなり、人が減っただけ。一つもいいことがない」。1カ月後に聞いた販売員の一言が「一番こたえた」と振り返る。 効率化をはやるあまり、催事の運搬補助を外部委託する手はずが後手にまわり、売り場担当が運搬にかり出される事態になったのだ。「大丸の教科書を松坂屋流に読み替える」ことにじっくり半年をかけ、従業員の理解も得て3月から改革を全売り場に広げることができた。 3月からは外商改革にも取り組む。「外商は明らかに松坂屋の営業力が上。組織体系は変えたが、外販担当は1人も減らしていません。この店の生命線ですから」
■松坂屋→大丸心斎橋店長 熊木敏さん(55) お客様目線 売り場に徹底
「大丸にどっぷりつかると見えない所がある。違った目線で見れば店舗の課題を明らかにできる」と熊木さん。効率経営の大丸だが、品ぞろえや売り場づくりは課題で、「『最大のお客様満足』を掲げているが、それができているかどうかは別問題だ」と話す。 レジメンタル(斜めじま)のネクタイが展示されていた売り場で、同じ柄の紫地の有無を販売員に聞いたところ、その色地の品物が出るまで20分以上かかった。「提案する以上、それに合わせた商品展開をしなければいけない。似た色柄が近くにあれば、お客様自身が数分で選べるはずだ」 業界羨望(せんぼう)の大丸流経営に「業務が明確に分かれ、仕事内容が明確になってスピード感がある」と驚きながら、「仕入れと販売のコミュニケーション不足」を感じることも。だからこそ、店内の巡回を日課にし、すぐに販売員に声をかける。 煙たがられることがないのは、「『お客様はこうやと思うから、自分はこう考える』という目線からの指示なので、納得できるのです」と食器・調理用品の責任者稲生智子さん(30)。 今月示した08年度方針に「見やすく、買いやすい売り場づくり」を盛り込んだ。女性客の目線より高い位置にあるマネキン。引っ張り出そうとするとラックが動くほど密に掛かった衣料品――。目についた課題改善に向け、意識改革を目指す。
■視点 統合手法に差も
「線路と貨車は同じ。両社の差は積み荷の違いになる」。奥田さんの言葉から、統合による変革の激しさがよく分かる。 対照的なのは4月1日に経営統合する三越と伊勢丹。当初大規模な店舗の人事交流はせず、情報システムから慎重に統合を進めていく方針だ。 2大陣営の手法の差はどう業績に出るのか。「消費低迷で音を上げる所が出る」と次の合従連衡を見込む声もある。百貨店は目が離せない。
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