台湾、「統一」アジア視野 外資と提携、ノウハウ吸収2008年03月10日 セブンイレブン、無印良品、キッコーマン、ミスタードーナツ、カルフール、楽天市場――。日系を中心に外資のノウハウを取り込み、成長してきた台湾の食品・流通グループが「統一企業グループ」です。台湾市場は小さすぎる、と国際化にもいち早く取り組みました。中国大陸、東南アジアに展開しており、「アジアの統一」が視野に入ってきました。
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「明日から、君には百貨店をやってもらう」 06年春。台湾でセブンイレブンを約4700店展開する統一企業グループの統一超商(台北市)の営業担当者だった洪金谷氏は異動を告げられた。ヤマト運輸と手を組んで台湾に「宅急便」を定着させ、統一超商に戻ってきたばかりだった。 それから1年余り。台湾第2の都市・高雄市に「統一阪急百貨」を立ち上げた。通常3年はかかる店舗設計を1年半でやり遂げ、運営する統一百華の総経理に就いた。協力する阪急百貨店側の責任者の山中真矢店長は「事業の理解力、執行スピードが早い」と驚く。 統一は、新規事業に進出する際、外資と提携しノウハウを吸収してきた。04年にはミスタードーナツ事業をダスキンと手がけ、ブームを巻き起こした。統一多拿滋(ドーナツ)の喜多見雅・総経理は「統一抜きで(ダスキンの)台湾での成功は考えられなかった」と話す。 「製造から販売まで一貫して手がける世界でもまれな企業体」と東京工業大の鍾淑玲准教授は評する。即席めんで台湾国内の5割近いシェアを占め「統一の商品がないと店が成り立たない」(関係者)ほどだ。 「統一の成長は台湾経済史のミニゲージ」(林蒼生総裁)。その成長は戦後台湾の歴史と重なる。
■より広い中国へ進出
92年、食品で中国本土へ進出を果たす。林総裁は「台湾の市場は非常に小さい。その危機感が後押しした」という。当初はコストがかさみ赤字事業だったが、高品質でブランドを確立。中国本土で即席めんのシェアは1割強、茶飲料でも2割のシェアを保ち、約30カ所の生産拠点を持つ。 06年には台湾と中国本土のグループ売上高の割合が逆転した。スーパーマーケットやスターバックスでも参入し、利益でも中国本土の方が稼ぐ。 キッコーマンやキリンビール(資本関係は解消)とは、中国に共同で進出した。とはいえ、林総裁は「中国で一緒に投資しようと誘っても、日本市場は需要があるうえ競争も激しく、動いてくれない」と嘆く。 「アジアの統一」を狙い、00年代前半から、ベトナムで飼料工場や即席めん工場に投資し、スーパーも出した。フィリピンのセブンイレブン運営会社も買収。タイ、インドネシアでも事業展開し、3〜5年で東南アジア事業を軌道に乗せる計画だ。 林総裁はいう。「台湾は地理的にも、経済発展度からもアジアの中間。アジアを一つの市場ととらえるべきだ。その経済圏で、台湾は各国のブリッジ(架け橋)になりうる潜在力を持っている」
■製粉から食品製造、そして流通
67年に小麦の製粉メーカーとしてスタートした。高清愿・現董事長が創業。飼料や即席めん、調味料にも手を広げた。飼料は日清製粉、しょうゆはキッコーマン、食用油は日清製油(現日清オイリオ)、乳製品は明治乳業から技術を吸収した。「社会の発展や成熟に応じて、消費習慣は変わる」(林総裁)との発想で、数百の製品を展開するようになる。 70年代に高董事長と林総裁は欧州を視察した。そこで「経済が成熟すれば、販売業者が力を持つ」と痛感する。そこで流通業にも本格参入。日本や欧米での成功企業のうち、台湾市場にマッチしそうなモデルがあれば、相手先に積極的に商談を持ち込んで提携を得る手法で拡大した。 80年には、米サウスランド社との契約でセブンイレブン1号店を開業。零細商店ばかりの台湾で近代小売業の草分けとなった。日本で1号店が誕生した6年後だ。 86年には100店舗を突破して黒字化を達成した。世界で最もコンビニ密度の高い台湾で、5割近いシェアを誇る。仏カルフールとの合弁「家楽福」、スターバックス、無印良品も展開。マツモトキヨシなどを参考にドラッグストア「コスメッド」で流通部門をグループを支える柱に育てた。いずれも台湾で先駆けて参入した「先行者メリット」が事業を支える。 半導体からバイオ、建設業などへの多角化も進め、100社以上を抱えるグループに成長。06年の連結売上高は2577億台湾ドル(約8500億円)、当期利益は62億台湾ドル(約205億円)だ。
<視点>日本企業に教訓も
外資のノウハウを利用したことに、「他人のふんどしで」とマイナスイメージも感じられるかもしれない。だが、スケールの小さい台湾で視野を広く持ち、世界の動きを見ながら先手を打ってきたことが、今の統一企業の成功をもたらした。 日本の食品や流通企業も、海外進出で成功する余地はまだ大きい。これからは、ノウハウを提供したはずの統一に学ぶべきことも多いと思う。「アジアが一つのマーケットになる時代が必ず来る」。林蒼生総裁の言葉に重みを感じた。
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