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エコシップ就航へ 前畑造船・IHIMUの電気推進タンカー CO2、1割減

2007年11月02日

 道路を走る電気自動車と同じように、電気で航行する電気推進船(スーパーエコシップ)の導入が始まっている。前畑造船(長崎県佐世保市)とアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(IHIMU、東京)は電気推進船では初の石油タンカーを建造中だ。スクリューを回したり、荷役機械を動かしたりと、すべてを電気で効率よくまかなう。水の抵抗が少ない船の形にできるため、燃費もよく、環境を汚す物質の排出を減らすこともできる。

■エンジン不要で船尾すっきり

 長崎・佐世保港の一角。前畑造船で注目の小型石油タンカー、なでしこ丸(全長70メートル、749トン)が内装の仕上げ中だ。11月末に商運海運(大阪)に引き渡され、就航する。大型船建造が主力のIHIMUが設計。内航船の建造実績が少ないため、前畑造船に共同建造を持ちかけた。

 一般の船はスクリューをディーゼルエンジンで回し、荷役や照明などの電力は別に発電機を積んで供給する。電気推進船はディーゼル発電機でモーターを動かし、スクリューを回すほか、船内の電力も供給する。

■発電効率的

 なでしこ丸は4台の発電機を積む。船は航行や出入港、停泊時の荷役など場面によって必要な力が違う。電気推進船は必要に応じて動かす発電機の数を変えて、それぞれの発電機を効率のよい回転域で動かすことで燃料のむだが少なくなる。

 これに対し、一般の船は最も大きな力が必要になる航行時に合わせたエンジンを装備。低稼働時には効率が落ちていた。

 「お尻が引き締まった形」。前畑造船の田頭慎一常務は、なでしこ丸の船尾をこう表現する。一般の船はエンジンとスクリューをシャフトで一直線に結んでいるため、エンジンを設置する場所が限られた。

 一方、発電機とモーターを電線で結ぶ電気推進船は発電機の配置が自由だ。なでしこ丸は発電機、配電盤、モーターを3層に分けた。機関部の容積は同規模の船の7割程度で、水の抵抗を受けにくい船型が実現した。

 電気推進システムに抵抗の少ない船型を合わせることで、燃費は一般の船より約1割改善し、窒素酸化物(NOx)の排出は約3割、二酸化炭素(CO2)は約1割の削減が見込める。

 電気推進船は乗組員数も少なくてすむ。なでしこ丸の乗組員は8人。機関部をコンパクトにした分で、石油の積載容量2千キロリットルを確保しつつタンク部は衝突に強い二重構造にできた。エンジン推進船で同様の二重構造にするなら、タンクの容量を減らすか、船を大型にして乗組員を3人増やす必要があった。

■コスト課題

 騒音や振動が少ない電気推進船は、これまで海洋調査船や豪華客船の一部で採用されたことがあった。これを国内を航行する内航海運にも広げようと、国土交通省が「スーパーエコシップ」と名付けて01年度から造船業界と研究を始めた。

 06年に第1号としてJR西日本宮島連絡船(広島県)の旅客船みやじま丸が就航。なでしこ丸は4隻目だ。内航海運は国内物流の約4割を占めており、省エネが進めば運輸部門全体のCO2排出削減が進むからだ。

 ただ、内航海運業者の約9割が中小企業で、古い船の更新に慎重な例が多く、一般の船より1〜3割増になる建造コストが普及の課題だ。

 このため、鉄道建設・運輸施設整備機構が船主と共同発注して、購入費の最大8割を負担し、船主が機構側に使用料を支払う制度もある。同機構によると、電気推進船は9隻目まで建造計画が具体化している。前畑造船の田頭常務は「実績が評価されれば、電気推進船の市場が広がるはずだ」と期待する。

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