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三菱ジェット、覚悟の離陸 巨額投資「10年は赤字」

2008年03月29日

 三菱重工業は28日、小型ジェット旅客機「ミツビシ・リージョナル・ジェット(MRJ)」の事業化を正式に決めた。設計・販売の新会社を4月1日に設立し、トヨタ自動車や三菱商事などから出資を受ける。経済産業省も開発費の3分の1程度を負担する。70年代前半に生産中止になったプロペラ機YS11以来の国産旅客機事業が動き出すが、当面は赤字続きとみられ、受注見通しも含めて課題は多い。

 「全日本空輸の発注も得られ、事業化の見通しが得られたと判断した」

 28日の記者会見で佃和夫社長はほほえんだ。

 新会社名は「三菱航空機株式会社」。名古屋市に本社を置き、社長に戸田信雄・三菱重工取締役が就く。当初の資本準備金は30億円で1年後をめどに1000億円に増資。3分の2を三菱重工が負担し、100億円を出す方向のトヨタ自動車のほか三菱商事、三井物産、住友商事、日本政策投資銀行も出資する見通しだ。

 機体製造は09年からで初飛行は11年、就航開始は13年の計画。型式証明の取得や顧客サポートでは、米ボーイングの支援を受ける。

 だが、事前に掲げた「100機程度の事前受注」に対し、固まったのは前日に25機発注を決めた全日空だけ。日本航空は「性能やアフターサービスが確認できない」と判断を先送りした。

 小型旅客機市場はカナダ・ボンバルディアとブラジル・エンブラエルの2社の寡占だ。2社はサポート体制が充実しているうえ、シェアが高い機種の方が航空会社も部品を調達しやすい。

 2社は世界に販売網を張り巡らせ、顧客ニーズをつかんでいる。エンブラエルは昨年、日航からMRJと同クラスの小型旅客機15機を受注する際、パイロットを付け商談をまとめた。団塊世代の大量退職に悩む日航にきめ細かく目配りした。

 佃社長は「MRJは米リース会社や東南アジア、中近東の航空会社から高い評価を得ている。1000機程度の受注をめざしたい」と強気だが、2社は久々に旅客機を製造する三菱重工にとって強大な存在だ。さらに、ロシアや中国のメーカーも小型旅客機市場に参入する方針を打ち出しており、これら新興国メーカーが価格競争をしかけてくる可能性は十分ある。

 経産省が08年度に最大約140億円を助成し、5年間で総額500億円の支援を見込むものの、1500億〜1800億円の開発費は巨額だ。同社の航空宇宙部門の営業利益は130億円(08年3月期見通し)。佃社長も「10年間は赤字の苦しい時代が続く。原動機事業などの売り上げを伸ばし支えたい」と話す。

 三菱重工は、国産大型ロケットH2Aの衛星打ち上げ業務も手がける。衛星も受注競争が激化しており、利益を出すまで時間がかかる。

 リスクの大きな「二正面作戦」は、失敗すれば経営の屋台骨を揺るがしかねない。

 三菱重工も開発主体に出資したYS11は12年間で生産を終え、後に360億円の赤字が残った。佃社長は「手続きが長引き、顧客が逃げたのがYS11の失敗の原因」とし、「反省に立ち事業を進めたい」と強調した。

     ◇

 〈MRJ〉 86〜96席と70〜80席の2機種を開発。機体に炭素繊維複合材を使う。従来機より燃費を約30%改善し、騒音も抑える。航続距離は最大3600キロで、米国や欧州域内路線もカバーできる。「日の丸旅客機」と言われるが、エンジンを米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)が生産するなど、部品の6〜7割は海外メーカーが担う。価格は1機30億〜40億円。同クラスの小型旅客機は今後20年間に世界で5000機程度の需要が見込まれている。

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