夢と魔法も腕次第 25周年TDL試練2008年04月15日 東京ディズニーランドが15日、開園25周年を迎える。隣の東京ディズニーシーとあわせ入場者は年間2500万人超。ただ、少子高齢化やレジャーの多様化の波は、テーマパークの「勝ち組」も無縁ではない。「夢と魔法の王国」も、次の一手の工夫に水面下でもがいている。
■ミッキー地方巡業? 脱舞浜へ 「あいさつ、スマイル、言葉遣い、アイコンタクト。礼儀正しさの要素は、この四つです」 14日昼、東京ディズニーリゾート内のホテルの一室に講師の声が響く。耳を傾けるのは20代を中心にした男女50人。大手百貨店丸井グループの従業員らだ。企業や学校向けの研修「ディズニーアカデミー」で、東京ディズニー流のサービスの肝を学んでいる。子どもの目の位置を知るため、座った高さで、相手方に見下ろされる経験もする。 アカデミーが始まったのは05年秋。利益への貢献度はまだわずかだが、TDRの目指す「多角化」に向けての試行錯誤の一つだ。 東京ディズニーの運営会社オリエンタルランドは79年、本家の米ウォルト・ディズニー社と業務提携。83年に千葉県・舞浜地区で、32のアトラクションでスタートさせた。初年度の入園者数は993万人。01年に「シー」が開業し、いまは合わせて67のアトラクションがひしめく。開発費だけで約5千億円。ホテルや複合商業施設「イクスピアリ」、モノレールなど地区全体の整備も進め、07年度の来園者は2542万人と当初の2.5倍に膨らんだ。 7月には三つ目の直営ホテルを開業。10月には、カナダ発祥のサーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の専用劇場もできる。200ヘクタールの敷地は、30年前には何もない埋め立て地だったとは想像できないにぎわいだ。 しかし、舞浜地区の開発余地もほぼ限界。オリエンタルランドの福島祥郎社長は「これ以上大きく来園者を増やすことはできない」と話す。 舞浜の集客力を維持しつつ、「脱舞浜」に取り組む――。それが課題だ。 昨年春には、ディズニーキャラクターを使った新しい屋内型エンターテインメント施設を、地方につくる構想を打ち出した。商業ビルに、ショーやゲスト参加型プログラムを用意して、食事や買い物も楽しめる趣向だ。 「福岡、九州の経済発展のためにもぜひ誘致したい」。福岡市で複合商業施設「キャナルシティ博多」を開発した福岡地所の桑野隆裕常務は、キャナル近くにつくる予定の新商業施設への進出を求め、手を挙げている。他の地域からの誘致運動もひっきりなしで「今年中には場所を決める」(福島社長)という。 ただ、「脱舞浜」は、そう簡単ではない。 全国約50カ所でミッキーマウスのぬいぐるみなどを販売する「ディズニーストア」は07年3月期決算で赤字に転落。自力での立て直しは難しいと判断し、経営支援会社リヴァンプと組み、今年度の黒字転換を目指している。 ディズニーブランドを使わないオリエンタルランド独自の取り組みも苦闘中だ。イタリア料理店やバイキングレストランなどを首都圏に出店。過去にはスープ専門店「スープストックトーキョー」の運営会社にも出資、外食のノウハウを探る。高級時計専門店にも乗り出したが、いずれも大きな成功には至っていない。 00年には「非ディズニー」のキャラクタービジネスにも手をつけ、独自のキャラクター「ネポス・ナポス」を開発したが、ほとんど世間には認知されていない。福島社長は「新しいものをゼロからつくるのは難しい」と話す。
■リピーターこそ「ライバル」 一方、舞浜の足場固めに向け、地道な努力が続く。 「ホテルの壁が風よけになり、大きく育つのです」 東京ディズニーシーの出入り口近くに立つ、ヒマラヤスギに、団体客の視線が一斉に集まる。植栽担当と園内ツアー担当の女性2人が、園内に植えられたオリーブやハーブの説明を続ける。 1時間半をかけて園内の花や草木を見て回る「フラワー&ツリーツアー」。人気のアトラクションは素通りだ。「シー」内の24万本の樹木と100万本の草花を生かし、年齢層の高い客の来園を狙う。 いまは、大きな集客には結びつかないが、すでに来園者の約16%は40歳以上。少子高齢化を見すえると、若者だけに注目していては、足をすくわれかねない。既存のファン層をつなぎとめようと、06年から取り組みをはじめた。 ミュージカルショーに、お客に出演してもらったり、フラダンスやバンドチームを応募してステージで披露してもらったり。参加型イベントでも工夫を凝らす。「細かい積み重ねが結果として数になる」からだ。 ただ、来園者への徹底したサービスを基本に置く姿勢は変わらない。「キャスト」と呼ばれる約1万8千人の準社員らが、お客にぶつからないよう立ったままゴミを拾い、雨の日にもベンチをふいて異常の有無を確かめる。顧客の約9割を占めるリピーター(何度も来園する客)をひきつけ、テーマパークの「勝ち組」として君臨してきた原動力だ。福島社長は「ライバルはお客様。目の肥えた来園客に、いかに期待通りのサービスを提供するかだ」と話す。
■出不精増加? パーク受難 動かない風車の手前にはがら空きの駐車場が広がり、「立ち入り禁止」の看板が寂しく立つ。 長崎県西海市の長崎オランダ村跡地。01年に閉園したこのテーマパークができたのもTDLと同じ83年だった。92年に、同県佐世保市のハウステンボス(HTB)に発展。同年度は年間入場者375万人を記録した。 一時は「東のディズニー、西のテンボス」と言われたが、息切れ。03年に会社更生法の適用を受け、ファンドの支援で再建中だ。 05年に美容サービスを提供するスパ施設を開設。今春からは、高齢者向けに施設内の和食を充実させた。「テーマパークから軸足を移し、展示会なども含めた交流の場として長期滞在型のリゾート施設を目指す」(東園基宏HTB社長)という。 83年は日本の「テーマパーク元年」と言われ、地方活性化の起爆剤にと各地にパークができた。87年にできたリゾート法(総合保養地域整備法)が自治体主導の開発を加速。安易な構想も多く、バブル崩壊後に破綻(は・たん)が相次いだ。 一部では厳しいリストラを経て「再生」の兆しもある。リゾート法指定第一号で、01年に破綻した「シーガイア」は06年度に初の営業黒字を達成。世界最大を誇った屋内プールは閉鎖し、展示場機能や温泉施設を強化し再起を図る。大阪市の第三セクターだったユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、米ゴールドマン・サックスのテコ入れで回復基調だ。 とはいえ、少子高齢化や価値観の多様化など、リゾート地やテーマパークを巡る環境が好転したわけではない。レジャー産業に詳しい柳田尚也・社会経済生産性本部主任研究員は「若者はネットや携帯電話に時間とお金を掛け、車離れを起こしている。休日は家で過ごす層が増えているのではないか」と指摘する。(高野真吾) PR情報ビジネス
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