現在位置:asahi.com>ビジネス>経済を読む> 記事

国内テレビ撤退 「名門」ビクター、資金力及ばず

2008年04月17日

 日本ビクターが国内の家庭用テレビ事業から撤退する方針を固めた。戦前に国内で初めて業務用テレビ受像機を開発した「名門」も、激しい競争に耐えられなかった。技術志向企業の「退場」は何を物語るのか。

図

  

図

  

 ◆技術力、鈍る恐れ

 ビクターの国内のテレビの売上高は年々減り、07年度で300億円にとどまる見通しだ。同社の連結売上高の5%に満たない。業界内でのシェアも3%にとどまる。10月のケンウッドとの統合に備えた不採算部門の見直しとしては、「国内テレビ撤退」は当然の選択にも見える。

 しかし、電機メーカーにとってテレビは「ブランド形成の顔」(日立製作所の大沼邦彦副社長)だ。しかも、ビクターは音響・映像の老舗(しにせ)。1939年の業務用テレビ受像機や76年のVHS方式ビデオデッキなど業界に先駆けて製品を投入した歴史を持つ。

 それだけに、国内のテレビ売り場から「Victor」のロゴが消えるのは、国内市場の様変わりを印象づける。

 部品を調達できれば製品化が簡単なデジタル製品は、内外メーカーが入り乱れて競争。激しい価格下落が続き、巨額の設備投資による量産化でコストを下げられるかどうかが生き残りのカギを握る。

 薄型テレビでは、液晶ではシャープやソニー、プラズマでは松下電器産業が、資金力を背景に大きなシェアを握ってきた。一方で、国内市場は、普及率の上昇と裏腹に、これまでのような伸び率は望めなくなってきている。

 プラズマテレビの開拓者のパイオニアも3月にパネル生産からの撤退を発表。「技術力はあっても、量を売れない中堅以下は振り落とされる」(アナリスト)という現実がはっきりしてきた。

 資金力の前に「名門」が撤退を余儀なくされる例は、デジタル業界以外にも広がる。軽自動車の草分け的存在だった富士重工業は10日、軽の開発・生産からの撤退を発表。森郁夫社長は「感情的には難しい判断だったが、国内市場がシュリンク(萎縮(いしゅく))している事実は認めざるを得ない」と話した。

 ビクターは薄型テレビでも、1秒間のコマ数を2倍にして映像のもたつきを減らした製品を初めて投入するなど、開発競争を引っ張ってきた。販売力や資金力で勝負が決まり、技術志向の企業の脱落が続く市場になれば、「メーカーの技術力が鈍ったり、消費者の選択肢を狭めたりするおそれがある」(業界関係会社)との指摘も出ている。

 ◆経営統合後も苦境続く?

 ケンウッドとの経営統合に大筋合意しているビクターは、2社の強みを持ち寄ることで生き残りを目指す。

 ビクターはハードディスク駆動装置(HDD)を記憶媒体に使ったデジタルビデオカメラやプロジェクターなど、ケンウッドはカーナビや通信機器に強みがある。両社は昨年10月に、カーナビや家庭用オーディオ分野での技術開発を共同で進めるための合弁会社を設立した。

 ビクターのテレビ事業は、現在の売り上げの約7割を占める海外では、欧米を中心に強化。映像表示技術は他の新製品にも生かせるとみる。

 一方で、昨年秋に従業員の早期退職を募集し、約1400人を減らした。プリント基板事業から撤退するなど、映像や音響の分野への経営資源の集中も急ぐ。

 ただ、両社が強みとする製品でもライバルは多い。デジタルビデオカメラではソニーなどと、カーナビでは松下電器産業など、それぞれブランド力のあるメーカーと戦わなければならない。

 両社の08年3月期の予想売上高の合計は、単純合算で8千億円程度と上位メーカーの1割以下だ。みずほ証券の張谷幸一シニアアナリストは「統合後も体力で上位メーカーに劣る状況は変わらず、中長期的に業績は厳しい」とみる。

PR情報

このページのトップに戻る