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企業覆う三重苦 海外発「原材料高・円高・米景気」

2008年04月29日

 企業の業績に暗雲が漂う。輸出に支えられて活況を取り戻した工業地帯でも、業種によって明暗が分かれ始めた。原材料の高騰、円高、米国景気の減速。海外発の「三重苦」に、長く続いた増収増益決算も打ち止めになりそうな気配だ。

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中東へ輸出される三菱車。資源高は産油国の需要を膨らませる一方、素材産業の収益を圧迫。輸出産業の先行きにも暗雲がたれ込める=岡山県倉敷市の水島港

 ■新興国頼み…活況工業地帯にも影

 赤、白、紺の乗用車が列をつくり、サウジアラビア向けの巨大な船に吸い込まれていく。瀬戸内海に面した岡山県倉敷市の水島港。三菱自動車水島製作所で生産された「ランサー」の積み出しだ。

 三菱自動車の08年3月期決算は営業利益が前期の2・7倍で、過去最高を更新。輸出が4割伸びたのが大きい。水島はその主力拠点だ。

 リコール隠しの発覚後、国内工場の閉鎖が検討され、水島にも不安が広がった。それから4年。近くで居酒屋を経営する男性(44)は「お客さんの表情が明るくなった」と「復活」を実感する。

 昨年夏に欧米でサブプライム危機が表面化した後、米国に代わって新興国の需要が日本経済を下支えしてくれるのではないか、との期待が広がった。実際、日本からの07年の自動車輸出は、米国とEU(欧州連合)向けが前年割れした一方、中近東が4割増、ロシアが7割増。その支えもあって、自動車大手の08年3月期決算はおおむね好調だった。

 ただ一方で、新興国の発展は急速な資源高に結びつく。原材料を海外から輸入する産業にとってはマイナスだ。水島コンビナートに集積する素材産業にも暗い影が見える。

 三菱化学子会社のヴイテックは水島工場の塩化ビニル樹脂の生産設備を5月いっぱいで廃棄することを決めた。中国向けなどの塩ビ輸出から撤退する。原材料の原油の値上がりで採算が悪化。さらに、「最後は円高に背中を押された」(川崎芳夫社長)。

 東京製鉄の岡山工場は、ゴールデンウイークの稼働率を例年の半分程度に抑える。連休中は電力料金が安く、例年ならフル生産だ。しかし、主原料の鉄スクラップが年明けから4割以上も値上がり。「こんなことは記憶にない」と従業員。アジア向け輸出も、新規契約を停止中だ。

 好調の三菱自動車も、こうした流れとは無縁ではいられない。円高や鋼材価格の値上がりを意識し、09年3月期の営業利益は一転して45%減るとの見通しを発表した。

 ■責任転嫁「ババ抜き」の色彩

 企業決算は、どこが負担をかぶるかという「ババ抜き」の色合いが濃くなっている。

 「企業努力で吸収できない部分は、価格転嫁をお願いするしかない」。08年3月期の営業利益が1割近く減った住友金属工業の本部文雄副社長は28日の記者会見で、鋼材値上げに理解を求めた。

 鉄鋼原料は今春から石炭が3倍、鉄鉱石も65%値上がりし、鉄鋼業界全体のコスト増は約3兆円。大手4社の利益合計の2倍にあたる。価格を十分に転嫁できなければ、もうけが吹っ飛んでしまう。

 鉄鋼各社は、車1台分にあたる鋼材1トンにつき3万円の値上げを自動車や家電メーカーなどに打診。新日本製鉄の増田規一郎副社長は「(自動車などの)最終製品まで値上げしていかないと経済が壊れる」と話す。

 しかし、素材産業の思惑ほど、消費者の財布のヒモは緩くない。「下流(組み立て産業)の我々に押しつけるのはとんでもない話。お客様が値上げなんて許してくれない」(ホンダの福井威夫社長)。商品価格の値上げが難しければ、コストは企業内で吸収せざるを得ない。

 自動車や電機各社は、すでに原材料高による減益を09年3月期決算に織り込んでいる。ホンダが750億円、松下電器産業が360億円、三菱重工業は180億円。鋼材の負担増はできるだけ減らしたいのが本音だ。

 米経済の失速も、じわりと効いてきた。シャープの佐治寛副社長は、「サブプライムの影響は金融関係だけで終わると見ていたが、米国で思ったより液晶テレビが売れなかった」。米住宅市場の落ち込みで、建設工事に必要なトラックの販売も減る。日野自動車の近藤詔治社長は「北米はコスト削減をいくらしても黒字にならない」とぼやく。

 円高も重荷だ。増収増益を見込む松下電器でも、円高だけで3千億円分の売り上げの下押し圧力になるという。海外市場への依存が強い自動車業界では、ホンダやマツダが3割の減益を予想する。

 財務省の統計では、資本金10億円以上の企業の経常利益は01年度の15・3兆円から06年度には32・8兆円に倍増した。だが賃上げは進まず、内需は盛り上がらないまま。今後の収益源に企業が期待するのは、結局、新興国市場だ。

 松下電器の大坪文雄社長は「新興国の成長率は依然高い。悲観一色になる必要はない」と指摘。スズキの鈴木修会長も「今年77万台を見込むインドの年間販売台数を3年かけずに100万台にしたい」と話す。(山本精作、堀口元)

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