背水MS、次の手急務 グーグルとの差、拡大懸念2008年05月05日 【ニューヨーク=丸石伸一】米マイクロソフト(MS)が米ヤフーの買収を断念した。IT業界の「巨人」がネット業界でも覇権を目指したが、ヤフーの反発は強かった。ただ、ネット検索最大手グーグルの背中が遠い現実は両社とも変わらず、再編を模索する動きは続きそうだ。
「ゴールに向かって前に進み続けることができると確信している」 MSのスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は3日、前向きな談話を出した。だが、出遅れたネット事業を成長軌道に乗せるのは前途多難だ。 MSがネット事業の拡大を急ぐのは、急拡大するネット広告市場で収益を着実に上げられる体制を築くためだ。年間売り上げ500億ドルにも達する「巨人」が、売り上げ規模では1〜3割程度のヤフーやグーグルとの競争に目の色を変えているのは、ネット広告市場が「3年後に倍増し、約800億ドルにまで達する」(バルマーCEO)と予想するからだ。 その市場で先行するグーグルの存在感は大きい。米調査会社によると、米ネット広告市場の07年のシェアは、グーグルが28%で、MSの7%やヤフーの16%を上回る。 グーグルは、検索語に関連した広告を表示させ、広告がクリックされるごとに広告収入を得る「検索連動型広告」で先行、着実に稼ぐ事業モデルを確立した。世界の検索シェアは6割を超え、MSの20倍にも達する。 グーグルはネット広告市場での高い収益力を武器に、MSが有料で売るワープロや表計算ソフトに似たサービスなどをネット上で無料で展開。MSの収益基盤にまで踏み込んできており、のんびりしてはいられない。 大きな差を一気に詰める「最善の策」(米アナリスト)とされたのが、検索シェア1割強を握る業界2位のヤフーの買収だった。 ヤフーとの買収交渉が決裂するのは、少なくとも2度目。07年2月にも打診していた経営統合などを断られ、今度は買収提案を公にして決断を迫った。買収額引き上げでヤフーを交渉のテーブルに引き出し、今月2日に本格交渉に入ったが、最後まで買収額で折り合わなかった。 MSには敵対的買収を仕掛ける選択肢も残されていた。だが、決着がつくのは、早くてもヤフーが株主総会を開く7月ごろ。ヤフー買収にてこずる間にグーグルとの差が一段とついてしまうことへの懸念が、撤退を決断した理由の一つとみられる。 ヤフー買収という勝負手に失敗した今、さらに積極的な対策に出なければグーグル追撃はおぼつかない。MSは今後も、別の企業の買収や提携を模索すると見られる。その候補には、「メディア王」ルパート・マードック氏率いるニューズ社傘下のマイスペースや、ヤフーとも交渉しているとされる米娯楽・メディア大手タイムワーナー傘下のAOLなどが挙がる。 ■ヤフー、危機続く恐れ MSの買収提案に対するヤフーの抵抗は強かった。別の企業との提携を模索し、有力企業としてグーグルやタイムワーナーなどが相次いで浮上した。当初は「買収額引き上げのための工作」(米アナリスト)との見方も多かったが、創業者のジェリー・ヤンCEOらの独立経営維持へのこだわりは強かったようだ。 しかしヤフーにも不安は残る。 ヤフー株はMSの買収提案後、MSが提案した1株当たりの買い取り額31ドル近くまで急騰し、その後も高止まりを続けている。買収に期待する株主の意に反してMSの攻勢をはね返したことで、株価が今後急落し、ヤフー株主から訴えられる可能性もある。 事業面でも、グーグルの独走を止めることができない状況に変わりはない。08年1〜3月期決算は増益率が前年同期比3・8倍にものぼったが、これは株式を保有する企業の上場にともなう利益などでかさ上げされたもの。本業の収益力が大きく改善したわけではない。成長路線が描けない状況は深刻で、米アナリストからは「MSへの身売り以外に選択肢はない」との厳しい声も出ていた。 しかも、MSが巻き返し策に打って出てくるようだと、ネット検索でグーグルに次ぐ2位の座も脅かされる恐れがある。 このため今後も、グーグルとの業務提携やタイムワーナーとの資本提携など、交渉中で可能性の高い案件を早急に実現していく必要がある。 リストラなど思い切ったコスト削減策も欠かせない。「これですべてのエネルギーを最も重要な改革に集中できる」。ヤンCEOは、MSの撤退を受けて発表した談話の中で強調した。今後、MSの買収提案などを上回る魅力的な将来像を打ち出せなければ、株主の不満が高まるのは必至だ。独立経営を脅かされるような危機は今後も続く恐れがある。 PR情報ビジネス
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