2009年6月6日1時26分
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【グラスゴー(英)=有田哲文】英国など欧州の株主総会が荒れている。株価下落で資産を失った株主の怒りが経営者に向き、既に支払われた前年の報酬まで批判の的となっている。株主と経営者との関係は完全に壊れ、株主の権限を強めるなど新しい企業統治を探る動きもある。
5日、英スコットランドのグラスゴーで開かれた英金融大手ロイズ・バンキング・グループの株主総会。個人株主からは壇上の経営陣に厳しい声が飛んだ不満の声が相次いだ。
会場前でビラを配っていた株主の一人、トニー・ジョンソンさん(68)は「配当も貯蓄も失った。経営者は退任してもらいたい」と述べた。
「厳しい環境でも、株価を維持してる銀行が、ほかにあるじゃないか」「あなたたちの犯した失敗と、あなたたちの受け取った報酬、この関係をどう考えるのか」
ロイズの株価は、08年9月に経営難の金融大手HBOSを買収してから下落が続き、事実上の国有化で価値が薄まった。ここにきて持ち直したとはいえ、買収当時の4分の1にすぎない。
英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルが5月19日にロンドンとハーグで開いた株主総会。利益は減ったのに08年のトップの報酬が上がり、年間1032万ユーロ(14億円)になった。6割が報酬報告に反対票を投じた。
拘束力はなく、経営陣はもらったお金を戻す義務はない。だが、反対に回ったオランダの株主グループVEBの副ディレクター、エロル・キーナー氏は「経営陣は株主に耳を傾けるようになってきたようだ」と手応えを感じる。
株主投票の委託を手がける英マニフェストによると、英系企業だけで1月から5月まで否決は4件にのぼる。
アイルランドの金融大手アライド・アイリッシュ銀行の総会では会長に卵が飛んだ。投げた男性株主は悪びれもせず、英BBC放送に語った。「私の年金が消えてなくなった。ものわかりのいい世の中じゃなかったら、経営陣は縛り首になっているところだ」
ただ、個人株主へ助言をしている英セブン・インベストメント・マネジメントのディレクター、ジャスティン・スチュワート氏は「株主は自分たちの間違いも認めないといけない」と指摘する。「高い配当をもらい、リスクを考えずに満足していた。とくに機関投資家は、好成績がずっと続くと考え、物言わぬ株主になっていた」からだという。
利益をあげて配当をもらえる限り、株主は経営者の高額報酬を黙認する。経営者はますます目先の利益を追う。荒れる株主総会の背景には、そんな構図への反省もある。
経営陣の報酬を投票で決めるようにするなど、もっと株主権限を強めるべきではないか――。株主の影響力が比較的弱かったドイツでも、法整備に向けた検討が始まった。株主は企業の行動をどこまで監視すべきか、できるのか。金融危機は企業統治のあり方をめぐる議論を迫っている。