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CO2排出削減、苦しむ電力業界 電気料金値上げ懸念も

2009年8月18日1時10分

写真:試運転中の東京電力柏崎刈羽原発7号機。営業運転のめどは立っていない=新潟県柏崎市、刈羽村試運転中の東京電力柏崎刈羽原発7号機。営業運転のめどは立っていない=新潟県柏崎市、刈羽村

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 国内の二酸化炭素(CO2)排出量の約3割を占めるとされる電力業界が、排出削減に苦しんでいる。業界で自主的に決めた削減目標は、08年度からの5年間の平均で90年度実績より2割減らすことだが、初年度は1割程度の削減にとどまった。未達成分は海外などから排出枠を買って穴埋めするしかなく、電気料金の値上げにつながる懸念もある。

 国内で最大の排出産業である電力業界の08年度のCO2排出量は3億9500万トン。前年度より5%減ったものの、90年度と比べると43%増えた。

 電力会社には利用者への供給義務があり、販売電力量を自ら減らすのが難しい。このため、業界の削減目標はCO2排出原単位で設定した。08年度の原単位は、90年度の417グラムから10%減の372グラムだった。主に海外から買ったCO2排出枠6350万トン分を引いた3億3150万トンで計算されている。

 電力会社の排出削減は、原子力発電所の稼働率に左右される。排出枠を反映させた原単位で目標の2割減を達成したのは、四国と九州の両電力だけ。ともに原発の稼働率が84%で、国内平均の60%を大幅に上回り、火力発電所で石炭や石油を燃やす量を減らせた。逆に北海道や北陸、沖縄の3電力は9〜22%増えた。北陸電力が最も増えたのは、志賀原発(石川県)がトラブルなどで安定した運転ができず、代わりにCO2排出量が多い石炭火力発電所を稼働させたためだ。

 業界全体の3割を排出する東京電力の原単位は90年度比12%減の332グラム。08年度は柏崎刈羽原発(新潟県)の7基がすべて止まったままで、原単位を減らせたのは、2480万トンの排出枠を償却して実際の排出量を相殺したからだ。

 05年に先進国に温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書が発効したのを受け、電力業界は06年、08〜12年度の5年間平均で90年度に比べて原単位を20%程度減らす目標をたてた。初年度である08年度は1割減どまりだったが、業界関係者は「目標は5年間の平均で20%減。達成に向けて努力している」とあきらめていない。電気を使うさまざまな企業が、電力会社の原単位を自社のCO2排出量の計算に使っていることも、業界への削減圧力になっている。

 しかし、原発の稼働率の向上は簡単ではない。東京電力の柏崎刈羽原発は7号機で燃料棒から放射性ガス漏れが見つかり、1〜5号機も運転再開のめどがたっていない。中部電力も11日の地震で停止した浜岡原発(静岡県)の運転再開が、最速でも9月以降になるとの見通し。目標期間の最終年度である12年度までに、新たに稼働する原発は北海道電力の泊3号機と中国電力の島根3号機だけだ。

 このため、目標達成の切り札は、排出枠の購入となりそうだ。電力10社は09年3月期で排出枠の償却費用に計1001億円をあてた。この負担を電気料金に転嫁しているのは、関西、中部、中国、四国、沖縄の5電力。仮に排出枠の償却費用をすべて料金に織り込めば、標準的な家庭の1カ月の料金でみると関西電力で23円、中国電力では99円になる。上乗せしていない5電力も今後の料金改定で転嫁する可能性が高い。業界では「都市ガスなどとの競争上、そのまま転嫁するのは難しい」とされ、電力会社の利益を圧迫する要因にもなりそうだ。(諏訪和仁)

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 〈二酸化炭素(CO2)排出原単位〉 1キロワット時の電気を発電したときのCO2排出量。CO2排出量を販売電力量で割って算出する。1キロワット時は、7〜10畳用のエアコンで冷房を2時間使った場合や、32型液晶テレビを7時間視聴した場合の消費電力にあたる。

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