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債権放棄、銀行「のめぬ」 日航再建交渉本格化

2009年10月19日3時15分

 日本航空の再建計画を巡り、前原誠司国土交通相が選任した専門家チームと金融機関との交渉が本格化している。厳しい資産査定で一気に財務改善を目指すチーム側と、債権放棄を迫られる金融機関との主張にはまだ隔たりがある。日航がどう身を削り、金融機関がどこまで負担をのむか。企業再生支援機構の活用など、公的支援をどう使うかも焦点だ。

■政府側は進展強調

 国交相の専門家チーム「JAL再生タスクフォース」の5人と金融機関幹部は18日、東京都品川区の日航本社で再建計画について意見を交わした。金融機関側は「(チームが求める)債権放棄はこのままではのめない」と主張した模様。一方、チーム関係者は「金融機関とは穏当に話し合いが進んでいる」と事態が進展していることを強調した。

 両者が議論を重ねているのは、13日にチームが日本政策投資銀行、みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友の計4行に説明した「中間報告」。日航の経営体質の改善とともに、債権放棄など金融機関の負担が盛り込まれた。4行には今年3月末時点で計約3700億円の融資残高があり、日航の全借入金の3分の2に当たる。

 チームは「障害となるあらゆるレガシーコスト(過去の負の遺産)を一気に削減」(中間報告)する姿勢で、まず金融機関に支援を要請する。これに対し大手行幹部は「銀行に頼む前に、チームはまだやることがあるだろう」といらだちを募らせる。

 中間報告には、年金などの退職金債務の圧縮や社員数の削減が盛られたが、OBや労働組合との交渉はこれから。実現性が明確でない再建計画のもとで借金棒引きを認めれば「預金者や株主に説明がつかず、株主代表訴訟も起こされかねない」(大手行幹部)との懸念がある。

 大手行の姿勢の根底には、これまでの日航支援の経緯もある。銀行団が拡大路線を支え、最後は4千億円の債権放棄に応じたダイエーの例とは異なり、「政府の指導にしぶしぶ付き合わされ融資残高が膨らんだ」との意識がある。

 政府が全額出資する政投銀には「大手行の反発が続けば、その負担を背負わされかねない」との懸念もある。過去の日航支援でも、大手行との調整が難航しては政投銀が泥をかぶる構図が繰り返され、約2300億円を融資する最大の貸手になった。

 「政府系」とはいえ、経営原則は逸脱できない。また政投銀の財務が悪化すれば、税金による資本増強を余儀なくされ、国民負担につながる。所管する財務省幹部は「関係者の間で公平公正な負担にすることが必要だ」とくぎを刺す。

 債務調整の先行きが不透明ななか、政府やチームは16日に業務を開始したばかりの官民出資ファンド、企業再生支援機構の活用も浮上している。機構は1兆6千億円の政府保証枠を使い、自ら出資や融資ができる。金融機関にとっては、機構による債権の買い取りで負担が軽減され、債権放棄した際に発生する損失を課税所得から差し引く無税償却もできる利点がある。

 チームの「中間報告」には、経済産業相が選ぶ実務家が債務調整し、機構同様に無税償却ができる事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)の活用も盛り込まれた。機構を使わないでADRで債務調整する場合は、改正産業活力再生特別措置法(産業再生法)を用いて公的資金を注入する案が有力だ。

 産業再生法を利用した出資の出し手はやはり政投銀。機構の場合も損失が発生すれば税金が使われる。日航の再建計画の行方は、大手行の判断とともに政府の関与が大きく鍵を握っている。チームと金融機関は近く改めて会合を開く予定だ。

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