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中国提携、技術提供カギ ダイキンとエアコン最大手

2009年11月2日1時57分

写真:格力の家庭用エアコン工場。自社ブランドのほか、世界数十社から生産の委託を受け、相手先のブランドでも生産する=広東省珠海市、吉岡写す格力の家庭用エアコン工場。自社ブランドのほか、世界数十社から生産の委託を受け、相手先のブランドでも生産する=広東省珠海市、吉岡写す

写真:格力の工場の近くで建設が進むダイキンとの合弁金型工場=広東省珠海市、吉岡写す格力の工場の近くで建設が進むダイキンとの合弁金型工場=広東省珠海市、吉岡写す

図:  拡大  

 家庭用エアコンで世界一の生産台数を誇る中国メーカー、珠海(チュー・ハイ)格力(コー・リー)電器(広東省珠海市)が今年、ダイキン工業と提携しました。中国でも省エネ規制が強まり、日本の技術が勝ち残りのかぎになると考えたからです。ダイキンは技術を提供するかわりに、新興市場でも通用する価格競争力を得る決断をしました。「環境」がキーワードになりつつある「日中合作」の現場を訪ねました。

■環境規制も動機

 格力の本社や主力工場は、マカオのすぐそばの珠海市にある。トン小平(トン・シアオ・ピン、トンは登におおざと)が約30年前、改革開放の先兵に選んだ経済特区の一つだ。80万平方メートルの広大な敷地に、約2万人が働く。

 家庭用エアコンは、年産2千万台。創業18年で、日本市場の年間販売台数の3倍近くを1社で作る巨大企業に成長した。日本円で4万円未満の商品が主力。自社ブランドのほか外資系の数十社から委託を受けて生産、輸出する。まさに、世界の工場だ。

 中国のエアコン業界はかつて数百社がひしめいていた。国際競争よりも激烈とされる中国内のつぶし合いを切り抜けてトップに立つ格力が、日本のエアコン大手ダイキン工業と組んだ狙いは「インバーター技術」にある。創業時から格力を率いる技術者会長、朱江洪氏は「日本との技術力の差はよく分かっている」と認める。

 インバーターは省エネの要になる技術だ。エアコンの心臓部にあたる圧縮機を制御し、きめ細かく室温を調節できる。日本は家庭用エアコンの100%がインバーターを搭載しているが、中国は1割足らず。格力も製造はしているが、機能は日系に及ばない。

 環境規制に乗り出した中国政府は、販売補助金と規制強化のアメとムチで、電気製品の省エネを急ぐ。そのスピードは業界が想定した以上だという。エアコンもエネルギー効率の等級別表示を始めて、低い機種の販売を停止する方向だ。

 格力は今回の提携で、インバーター付きで5万円前後の商品の開発を目指す。従来より3割以上安い。「技術がないのはカネがないより怖い。ダイキンの数十年の蓄積を1年で獲得し、さらに自力で発展させる」と朱会長。毎年20億元(約260億円)の開発費を投じ、30歳以下を中心に研究者2千人を抱えている。

■新興市場狙い先手

 「エアコンのベンツ」――。中国で高級イメージを大事にしてきたダイキンは、「虎の子」のインバーター技術を中国メーカーに売って、何を得ようとしているのか。

 井上礼之会長は「安く作る技術とそれによって得られる市場」と明快だ。現地の安い部品と安い労働力を使って基幹部品を生産し、ダイキンの世界の工場に供給する。

 世界同時不況や冷夏で、先進国の市場は販売不振に陥り、ダイキンは2期連続の減収減益の見通し。今後の成長のかぎを握るのは、新興国だけでなく先進国の市場でも「ボリュームゾーン(売れ筋価格帯)」の商品開発だ。

 ダイキンの生産規模は格力の4分の1。日本の業界ではインバーター技術の移転を「ひさしを貸して母屋を取られる」と疑問視する声もある。ダイキンの技術陣も当初は、反対した。

 中国に技術を渡せば、模倣品があっという間に広がりかねないからだ。だが、井上会長が「中国の環境規制は想像より速く進んでいる。うちがやらなくても他社がきっとやる」と押し切った。

 丸屋豊二郎・日本貿易振興機構理事(中国担当)は「中国に技術をどこまでいくらで売り、次に何を開発するか。日中間の技術差が縮まるなかで、環境・省エネ分野は主戦場の一つ」と指摘する。(吉岡桂子)

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