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規模の力で難局打開 住友信託・中央三井、統合発表

2009年11月7日0時30分

写真:会見の冒頭で握手する住友信託銀行の常陰均社長(左)と中央三井トラスト・ホールディングスの田辺和夫社長=6日午後4時、東京都千代田区、高橋雄大撮影会見の冒頭で握手する住友信託銀行の常陰均社長(左)と中央三井トラスト・ホールディングスの田辺和夫社長=6日午後4時、東京都千代田区、高橋雄大撮影

グラフ:  

 住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスは6日、11年春に経営統合すると正式に発表した。「三井住友信託銀行」として規模では業界首位に立ち、リーマン・ショック後の環境変化に対応する狙いだ。メガバンク傘下に入らない「独立路線」は、吉と出るか、凶と出るか。

 両社は11年4月に新しい持ち株会社「三井住友トラスト・ホールディングス」の下で統合。傘下会社のうち住友信託、中央三井信託など3銀行は12年4月に合併し、「三井住友信託銀行」になる。

 統合比率は未定だが、人事では「対等」を掲げ、持ち株会社の社長と合併行の会長を中央三井から、持ち株会社の会長と合併行の社長を住友信託から出し、取締役ポストも同数ずつ割り振る。

 両社の統合構想は10年近く前からあったが、戦略の違いが障害になっていた。法人営業に強い住友信託は企業合併・買収(M&A)による多角化路線を進み、中央三井は個人営業の重視に傾いていた。

 中央三井の田辺和夫社長は6日の記者会見で「金融危機以降の経営環境についての認識が一致し、経営方針の違いが障害にならなくなった」と説明。住友信託の常陰均社長も「未来志向で見れば、完全に合致している」と述べた。

 銀行の財務の健全性を示す自己資本比率をめぐる国際的な規制強化の流れもにらみ、常陰社長は「(統合で)リスク抵抗力はかなり出てくる」との見通しも示した。

 それぞれの事情もある。中央三井が7月に予定していた公的資金2004億円の完済は業績悪化で遅れ、株価も313円(6日終値)と低迷。政府は1株400円で普通株を保有しており、収益と株価を回復させないと返済のメドが立たない。田辺社長は「いつ返すとは特定できない」と述べ、完済が統合後にズレ込む可能性にも言及した。

 一方、住友信託は05年に不動産担保ローン最大手ファーストクレジットを約1300億円で買収したが、不動産市況が悪化。ファースト社は09年3月期に326億円の純損失を計上した。

 さらに、メーンバンクとして計908億円を貸している消費者金融アイフルと子会社ライフの私的整理入りも不安材料だ。アイフル関係者すら「住信は自らの規模を顧みずにつぎ込み過ぎた」と話すほどで、多角化・拡大路線に影が差していた。

■独立路線 強み生きるか

 今後の信託業界は、メガバンク傘下の三菱UFJ信託、みずほ信託と、2行を規模で上回る「独立系」の三井住友信託が、戦略を競い合う。

 信託銀行は、預金・貸し出しなどの通常の銀行業務も営むが、「専門」は顧客の財産を預かって運用・管理する信託業務だ。企業年金の運用や不動産売買仲介、株主名簿の管理、遺言の執行も担う。

 こうした業務には多額のシステム投資が必要なため「装置産業」とも言われる。今回の統合でも利点の一つとして挙げられるのが、システムにかかるコストの削減だ。

 統合で「規模の利益」を生かせれば、信託財産残高など大半の指標で首位に立つ三井住友信託の競争力は増す。住友信託の常陰社長は「合理化効果、収益効果は同業の統合の方が大きい」と強調した。

 三井住友信託は、出身財閥が共通する三井住友フィナンシャルグループ(FG)と親密さを保ちつつも、傘下には入らない。6日の会見でも、中央三井の田辺社長は三井住友FGへの合流について「今のところ全くない」と否定した。「信託は高度な信頼に基づく業務。社内風土が違うところと(再編を)やると摩擦が大きく、ハッピーではない」とまで述べた。

 メガバンクの意向を気にせずに済む独立系なら、新しいサービスを生みやすいとの指摘もある。常陰社長は「我々が自分で顧客を増やし、銀行業務を含めて総合的な処方箋(せん)を提供する」と強調した。

 一方、三菱UFJ信託やみずほ信託の幹部らは「信託業務でメガバンクの顧客基盤を生かせる」と指摘する。旧富士銀行系のみずほ信託の場合、銀行業務の大半をみずほ、みずほコーポレートの両銀行に委ねる一方、中核の信託業務で旧第一勧業銀行や旧日本興業銀行の顧客を開拓。首脳は「分担と連携がきちんとできれば、メガ傘下の利点は大きい」と言い切る。

 三菱UFJやみずほの幹部には「三井住友信託も結局は三井住友FGの傘下に入らざるを得なくなる」との見方も多い。

 みずほ信託が今の体制になってから、すでに6年半。三菱信託とUFJ信託の合併からも4年がたつ。大型再編としては「周回遅れ」の感もあるなかで、三井住友信託が独立系としての統合の利点を、早期にわかりやすく顧客に示せるかどうか。統合の真価が問われる。

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