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「温室ガス削減もう無理」鉄鋼・電力業界が予防線

2009年12月24日1時1分

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 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の政治合意がまとまり、先進国は2020年の自国の削減目標を来年1月末までに一覧表に書き込むことになった。鉄鋼や電力など日本の一部産業界からは、鳩山政権が掲げる「1990年比25%削減」の見直しを求める声が噴出している。温室効果ガスの削減は「これ以上できない」と、各業界は予防線を張るのに懸命だ。

 「削減目標は90年比25%削減ありきでなく、早急に再検討すること」。日本鉄鋼連盟の宗岡正二会長(新日本製鉄社長)は21日、政府に削減目標の見直しを求める見解を発表、会見でも「日本だけが突出した目標を掲げると、日本の産業構造に大きな影響を与える」と強調した。日本製紙連合会の芳賀義雄会長(日本製紙グループ本社社長)も同日の会見で「国際競争力の低下につながる」と、25%削減を見直すよう求めた。

 電気事業連合会の森詳介会長(関西電力社長)も19日に出したコメントで「『すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が前提』という基本原則を崩さず」などと強調し、安易な25%削減の書き込みを牽制(けんせい)した。

 鳩山由紀夫首相が9月に国連で「90年比25%削減」を公約し、麻生前政権の「8%削減」がほごになったことで、鉄鋼や電力などのエネルギー多消費業界は大きな衝撃を受けた。巻き返しに出たのは12月のCOP15直前だった。

 まず、鉄鋼連盟が11月下旬、20年時点で500万トン減らすという独自の二酸化炭素(CO2)削減目標を発表。500万トンは日本の鉄鋼業界が排出するCO2約1億8千万トン(08年度)のわずか2.8%で、鳩山政権に対して「削減できない」と宣言した形だ。さらに鉄鋼連盟や電事連など9団体で、京都議定書の暫定延長などに反対する文書を作り、政官界への働きかけを強めていた。

 COP15開催中の今月15日には日本経団連として、20年のCO2削減目標を各業種自らが公表・実施するとした「低炭素社会実行計画」を発表。「最大限の目標水準であることを対外的に説明する」としているが、従来の自主行動計画の延長に近い。

 日本のCO2排出量の約8割は企業・公共部門で、家庭からは約2割にすぎない。環境NGO「気候ネットワーク」は電力・鉄鋼を中心にした161の発電所・工場が日本の排出の5割を占めるとし、「経団連の『自主行動』まかせでは25%削減はおろか、50年までの目標の80%削減につながらない。強制参加の排出量取引制度の導入が不可欠だ」とする。

 環境省も、民主党のマニフェストにある「排出量取引市場創設」の設計を急ぐ。同省幹部は「経団連の計画は、やりますという宣言だけ。市場ができれば、この計画にくさびを打ち込める」と語る。

 産業界も一枚岩ではない。朝日新聞の11月の主要100社アンケートでは「25%削減」に賛成が25社と、反対の18社を上回った。京都商工会議所の立石義雄会頭(オムロン会長)は21日出したコメントで「25%の削減目標に向けた努力を続けるべきだ。政府は『何を、いつまでに、どうするか』を示す必要がある」と早急な制度設計を求めた。(編集委員・小森敦司)

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