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ベトナム、原発導入急ぐ 東南アジア初、受注狙う日仏

2010年1月17日1時24分

写真:原子力分野での協力の覚書などを結ぶために初めてベトナムを訪れたフランスのフィヨン首相(前列左)と、迎えたベトナムのズン首相(同右)=昨年11月12日、ハノイ、矢野写す原子力分野での協力の覚書などを結ぶために初めてベトナムを訪れたフランスのフィヨン首相(前列左)と、迎えたベトナムのズン首相(同右)=昨年11月12日、ハノイ、矢野写す

 東南アジア初の原子力発電所の稼働に向け、ベトナムが本格的に動き出した。経済成長を支える電力確保はベトナムにとって至上命題。日本やフランスなどが受注を狙うが、安全性の情報をめぐる透明性確保など課題も多い。

 「現代の技術では、チェルノブイリのような事故は起こり得ない」

 昨年10月中旬、原発の建設予定地がある南部のニントアン省で開かれた投資セミナーで、チェット国家主席が地元住民や日本企業関係者に語りかけた。セミナーは同省や日本貿易振興機構(ジェトロ)などの共催だが、国家主席がこうした場で演説するのは異例で、原発導入にかける思いの強さが表れた形だ。

 ベトナムはこれまで水力・火力発電で電力を賄ってきた。だが、「ドイモイ(刷新)」と呼ばれる改革・開放政策で1990年代から経済成長が続き、電力不足が深刻化。2015年ごろには近隣国からの輸入に頼らざるを得なくなるとみられている。

 解決策として政府が打ち出したのが原発建設だ。ホーチミン市東方にある同省の沿岸部2カ所で100万キロワット級の原子炉4基を建設。20〜21年にまず2基を、21〜22年に残り2基を稼働させる。国会も昨年11月に承認。総事業費が1兆数千億円にのぼる巨大プロジェクトが動き出した。将来的には、50年までに発電量の2割を原発で賄いたい考えだ。

 近く事業化調査を外国企業に発注する見通しで、この調査を受注した企業がある国のメーカーが本体工事を受注する可能性が高い。

 受注に向けた競争はすでに始まっている。日本のメーカーや電力会社などでつくる日本原子力産業協会は2000年にベトナム原子力委員会と協力覚書を結び、人材育成や国内法整備などに協力。日本の機関がベトナムから受け入れた研修生などは、07年までに400人を超えた。

 日立製作所や東芝なども日本への受注を目指して「一体」になって動いているという。協会の小寺充俊・国際部調査役は「ベトナムでの原発受注は日本のプラント輸出の試金石になる」と期待する。

 日本政府も、経済産業省が08年5月にベトナム政府側と原子力協力文書を締結するなど支援を強化。昨年11月に日本で開かれた日・ベトナム首脳会談でも、原発建設への協力推進が話し合われた。

 旧宗主国のフランスも活発に動いている。11月中旬にはフィヨン首相が企業幹部を引き連れてベトナムを訪問。原子力の平和利用だけでなく航空や鉄道、防衛、教育など幅広い分野で政府間の覚書を締結し、包括的な経済協力をアピールした。ロシアの国営原子力企業とベトナム電力公社も12月、原発建設に向けた協力で合意した。

 ベトナム側は「資金面や人材育成で協力が得られるかや、技術面での安全性の実績などを考慮してパートナーを決めたい」(政府高官)との姿勢だ。

     ◇

 世界で新たに原発の導入を計画、検討している国はアジアや中東、アフリカなどで20カ国以上あるとされる。86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発の事故以降、世界的に脱原発の流れができたが、最近は火力発電などの温暖化への影響が懸念され、再び「原発ブーム」になりつつある。

 東南アジアでは現在、ベトナムのほかにインドネシアとタイが20年前後の原発導入を検討している。だが、建設予定地の住民らによる反対運動や安全性への懸念から、実現に向けた具体的な道筋はまだ見えていない。

 共産党が一党支配するベトナムでは、党や政府が推し進める政策への反対表明は難しいのが実情だ。産業貿易省エネルギー担当のフォン部長は「建設予定地の住民には、自治体を通じて原発の安全性についてよく説明している。目立った反対論は出ていない」と話すが、ベトナムでは政府の意向に反する運動は厳しく規制されている。

 英国際戦略研究所(IISS)のマーク・フィッツパトリック上級研究員は「他国に比べて安全性の確保に注意が払われないようなら、結果的にベトナムのためにならない」と指摘。党や政府の意向から独立した原発の管理機関を設立し、NGOなどにも情報を提供することが必要と訴える。(竹中和正、ハノイ=矢野英基)

■東南アジアでの原発導入に向けた主な動き

(英国際戦略研究所などによる)

ベトナム   2020年の稼働を目指し、事業化調査を発注予定

インドネシア 17年ごろの稼働を目指したが、反対運動などで遅れ

タイ     20年の稼働を目指すが、明確な見通しは立たず

フィリピン  1980年代に建設を進めたが凍結。現政権は導入を再検討中

マレーシア  20年以降の必要性を「認識」。開発に意欲的

カンボジア  フン・セン首相が将来的な建設に意欲的

ミャンマー  ロシアが研究炉を提供する予定

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