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中国企業の日本買い急増 技術・ノウハウの吸収狙う

2010年3月1日1時31分

写真:中国メーカーの傘下に入り、事業拡大をめざす日興電機工業の自動車向け電装品生産ライン=神奈川県秦野市中国メーカーの傘下に入り、事業拡大をめざす日興電機工業の自動車向け電装品生産ライン=神奈川県秦野市

図:  拡大  

 中国企業による日本企業の買収が目立ち始めています。中国は日本の技術やノウハウを取り込み、成長のテコにしたい考えで、国を挙げて買収を推進しています。日本にとっても、中国の資金や市場に期待できるという利点があります。企業再生の好機ととらえ、中国企業の傘下入りを決める日本企業も出てきました。

     ◇

 日興電機工業(神奈川県秦野市)の草野耕二社長は昨年夏、大株主の大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ(大和PI)から連絡を受けた。「中国の同業者が、株式の取得に強い関心を示している」

 日興電機は1933年創業。ディーゼルエンジン向け電装品で成長した。だが、事業拡大による資金繰り悪化などから99年、会社更生法の適用を申請し、上場廃止。2001年に大和PIが出資し、経営再建をめざしてきた。

 中国企業からの関心に、日興電機の草野社長は「正直、抵抗感があった」と明かす。「中国企業の傘下に入ったら、日本メーカーが取引の継続に拒絶反応を示さないか」と心配した。

 昨年11月、草野社長は自らその企業、寧波韻昇(浙江省)の本社を訪ねた。寧波はオルゴール製造で世界首位クラス。事業を急拡大中で、自動車向けの電装品のほか、次世代ハイブリッド車向け部品なども開発中だという。

 草野社長は寧波幹部と話し合いを重ね、工場や研究所から社員食堂まで見学。幹部に自社の業績が芳しくないことを話すと、幹部は「全然気にしない。技術に期待する」。草野社長は「ものづくりに熱心な日本企業的な風土がある」との印象を持った。

 中国の自動車産業は成長を続けている。競争も激化し、製品の品質向上が最大の課題だ。寧波の幹部は「自社開発だけでは間に合わない」と訴えたという。

 草野社長にも、中国事業の拡大が再生のカギを握るとの思いがあった。中国メーカーと組めば、共同開発や販路拡大に有利だ。「日興電機の将来も広がる」と社内に説明した。大和PIも「次の成長に有利なら」と後押しした。寧波は今年1月下旬、日興電機の発行済み株式の約8割を取得した。

 日興電機には寧波から取締役など計5人が送り込まれたが、全員が非常勤。旧経営陣はそのままで、約200人の従業員の雇用は保たれた。寧波側からは「日本の経営は任せる」と言われた。将来の目標は「再上場」で、中国事業を復活の牽引(けんいん)役に期待する。

     ◇

 中国企業による日本への直接投資残高(企業買収に、支店・工場の設置などを加えた額)は07年、08年に大きく伸びた。さらに企業合併・買収(M&A)助言会社のレコフによると、中国企業による日本企業のM&Aの総額は09年、08年の4倍を超す285億円となった。

 昨年6月には、家電量販店のラオックスが中国量販店の傘下入りに合意した。日本ではラオックスの店舗網で中国人観光客向けの免税販売を強化し、中国ではラオックスの商品管理のノウハウを生かす狙いだ。

 今年2月23日には、ゴルフクラブのしにせ「本間ゴルフ」(東京都港区)が、中国流通大手などが出資するファンドの傘下に入ると発表した。日本の工場で手作りする高級クラブが売り物の本間ゴルフは「中国市場での販路拡大が見込める」と話す。

 中国企業の攻勢の背景には中国の国策がある。06〜10年の「第11次5カ年計画」では対外投資を積極化することが掲げられ、海外企業買収に対する政府審査の基準などが緩められた。多国籍企業を育て、海外の技術やノウハウを取り込んで自国産業の付加価値を高める戦略だ。

 ある外資証券の担当者によると、中国企業からの照会が多いのは「技術を持つ製造業」。薄型テレビなど日本の「技術の粋」が凝縮されているものに関心が高いようだ。

 こうした中国の姿勢に、日本経済の停滞が重なった。技術力があっても景気低迷で不振に陥る企業が増えている。日興電機や本間ゴルフも一度倒産して再生を目指している。再生には設備投資などの新たな資金が不可欠だが、リーマンショック以降、国内や欧米の投資資金は潤沢でなく中国の存在感が増している。

 真壁昭夫・信州大教授は「日本は産業再編が遅れている。中国企業が入ることで再編が促され、日本企業も強くなる」と言う。

 ただ、「買われる側」に中国企業への抵抗感は根強い。M&Aを仲介する経営コンサルタント会社幹部は「買収の申し出を伝えても、相手が『中国』というだけで断られることが多い。大規模なリストラをされるのでは、という警戒感がある」という。

 政府内などには、日本の技術が中国へ流出することへの警戒感もある。買収してノウハウだけ手に入れ、会社を解体してしまうような悪質な買い手は国籍に関係なく存在する。経済産業省幹部は「買われる側は相手と時間をかけて交渉し、買収後の経営体制や狙いをただし、不幸な買収を防ぐしかない」という。(畑中徹、山川一基)

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