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トヨタ、不信の連鎖警戒 豊田社長、米から中国に直行

2010年3月2日1時38分

写真:1日、北京での記者会見に臨むトヨタ自動車の豊田章男社長=AP1日、北京での記者会見に臨むトヨタ自動車の豊田章男社長=AP

図:  拡大  

 米国などでの大規模リコール(回収・無償修理)を巡り、トヨタ自動車の豊田章男社長が中国・北京で異例の記者会見を開いた。先進国市場の低迷が続くなか、世界最大の自動車市場である中国で品質への懸念が広がるのを食い止めるためだ。

■最大市場、成長支える「頼みの綱」

 トヨタのアクセル関連のリコールは世界累計1千万台規模に対し、中国は約7万5千台。豊田社長は公聴会があった米国から日本に戻らず中国に直行し、中国を優先する姿勢を示した。業績回復の原動力となる成長市場であるとともに、豊田社長にとっては失敗が許されない縁の深い市場だからだ。豊田社長は記者会見で中国事業を担当した経歴を披露し、「思い入れがある中国で期待に応える車づくりを目指したい」と強調した。

 もともとトヨタの中国事業は順調とは言いがたい。1980年代に中国側から現地生産の誘いを受けながら、米国投資を優先して断った。これが尾を引いて合弁工場の認可が遅れ、ホンダに現地生産開始(99年)で先を越された。劣勢を挽回(ばんかい)するため、中国有力メーカー、第一汽車との合弁をまとめ、乗用車の現地生産開始(2002年)につなげたのが、01年にアジア本部長に就任した豊田氏だった。

 トヨタの昨年の中国販売台数は約71万台と、米国(177万台)の半分にも届かない。だが、成熟化した先進国に比べ、中国は今後も販売の増加が見込める。昨年の新車市場は1364万台と、米国を抜いて世界一。今年は1500万台に達する見通しだ。

 一方、08年秋のリーマン・ショックに直撃された北米市場は回復が遅れている。しかもトヨタは大規模リコールによる逆風を受け、1月の米国販売台数(1営業日あたり)は前年同月比8.7%減と、市場の伸び(同15%増)を下回る「一人負け」の状態だ。

 それだけに中国をはじめとする新興国は、トヨタの成長を支える「頼みの綱」というわけだ。

■リコール、中国で連日報道

 中国でのリコールは欧米より少ないが、トヨタ車の意図せぬ急加速を追及する米国発の報道が関心を集め、「トヨタ不信」が広がる構図だ。

 「買おうと思っていたけど、やめることにした」。RAV4のリコールが正式に始まった2月28日、北京市北部のトヨタディーラーでRAV4を試乗した王強さん(30)はこう話した。トヨタ車に乗って3年。「米国での大規模リコールのニュースを見ると、トヨタはちょっと心配。次はドイツ車にするよ」

 男性販売員(25)は「いま売っているのは改修済み。リコールにはなりません」と来店客に強調する。1月に約240台売ったRAV4は、2月は約80台。「リコールの問題はやはり響いている」

 中国でもトヨタのブランドイメージは高い。トヨタ車に手が届かず、中国車に「TOYOTA」のロゴの模造品をつける人もいるほどだ。しかし、中国メディアもリコール問題を連日大きく報じ、負のイメージが拡大しつつある。

 国営新華社通信は先月、「トヨタと問題の粉ミルクは同種の病」との論評を配信。トヨタの大規模リコールは、08年に中国で起きた粉ミルクへの有害物質メラミン混入事件と同様に、「企業が目先の利を求め、品質と安全をおろそかにした例だ」と断じた。中国中央テレビも28日夜に放送したニュース番組「世界週刊」で、豊田社長を「謝罪男」と呼んで特集。昨年8月に米カリフォルニア州でレクサスが暴走して4人が死亡した事故を改めて映した。

 影響はトヨタにとどまらない。中国の大手ポータルサイト「新浪網」で約20万の回答があったインターネット調査。米ホンダのエアバッグ不具合によるリコールにも触れ、「トヨタやホンダの車を買うか」との質問に「買わない」との回答は7割に達した。「日本の他のブランドへの影響は大きいか」との質問には「非常に大きい」との回答は6割を超えた。

 イメージが急激に悪化した要因の一つに、中国ではリコールが根付いていない事情もある。04年に施行されたリコール制度では、欠陥を隠したり、当局への報告を怠ったりしても罰金は3万元(約40万円)以下。「中国では主体的にリコールを届け出たがらない傾向がある」(上海証券報)という。(琴寄辰男、奥寺淳=北京、中川仁樹)

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