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北朝鮮、外資を渇望 羅先特区てこ入れ

2010年3月14日1時55分

図:  拡大  

 【ソウル=稲田清英】経済の悪化が伝えられる北朝鮮が、外国からの投資誘致に力を入れ始めた。とくに韓国の専門家などの注目を集めているのが、20年近く前に経済特区に定めたものの、誘致が進まなかった「羅先(ラ・ソン)地域」だ。中ロ国境に近いこの地域を北朝鮮は、外国資本の導入と貿易拡大の拠点として育てたいと考えている模様だ。

■苦しい経済、打開へ焦り

 「羅先地域を対外貿易の拠点にしようとする動きをみると、北韓(北朝鮮)は海外からの投資誘致に相当な努力をしているようだ」

 韓国統一省関係者は2月末、海外メディア向けの説明会でこんな見解を語った。

 朝鮮中央通信が、「金正日(キム・ジョン・イル)総書記が羅先を現地指導した」と報じたのが昨年12月。1991年に「自由経済貿易地帯」に定めて以来、金総書記の訪問が報じられたのは初めてだ。「重要な対外貿易基地の一つ。貿易を急速に発展させるため、市場を絶えず広げていくべきだ」などと現場に指示したという。

 施政方針にあたる北朝鮮の主要3紙の新年共同社説は今年、「対外貿易の積極展開」を強調。今年に入り北朝鮮側からは「羅先市が平壌市と並ぶ中央政府直轄の特別市に」「韓国の食品加工会社の南北合弁方式での羅先進出を初承認」など、相次ぎ「羅先」の動きが伝えられた。韓国メディアも「北朝鮮が羅先の港の一部埠頭(ふ・とう)の使用権を中国に続きロシアに認める」などと動向を報じている。

 韓国の研究機関の資料などによると、北朝鮮の北東部にあって日本海に面する羅先の経済特区の面積は、約750平方キロメートル。段階的に物流、輸出加工、金融などの産業を振興させようとした。しかし、道路や電力といったインフラ整備は進まず、核問題などによる国際的な孤立もあって、企業の進出はあまり進んでこなかった。

 その開発に今、再び力を入れるのは、好転の兆しがない経済の苦境が背景にあるとみられている。

 北朝鮮は工業生産が不振なうえ、慢性的な食糧不足に陥っている。昨年11月に実施したデノミネーション(通貨単位の変更)も、交換額が制限されるなどして民間部門が弱り、生活必需品などの供給が進まずに、むしろインフレを呼ぶなど混乱。市民生活は厳しさを増しているとされる。

 韓国のシンクタンク、企業銀行経済研究所の研究委員は「平壌から遠い羅先なら、ある程度開放しても体制を脅かす心配が少なく、外資を呼び込めれば経済全体への波及効果が見込めると判断したようだ」と指摘する。

 軽工業と農業の重視を示す北朝鮮だが、経済立て直しには外貨が必要だ。「『強盛大国の大門を開く』とする2012年が迫るなか、あらゆる手段を模索する焦りがのぞく」(韓国の北朝鮮研究者)との指摘もある。

■「核あっては難しい」

 国連による経済制裁もあり、思惑通りに投資が呼び込めるかは未知数だ。韓国対外経済政策研究院の洪翼杓・専門研究員は「対米関係の改善や核問題の解決なしには難しい。ただ羅先開発は、東北3省の振興と大型港湾の確保をめざす中国と利害が一致する。インフラ支援や中国企業の投資は見込めるのではないか」と指摘する。

 また、北朝鮮が認めた羅先での南北合弁企業の設立も、韓国企業の北朝鮮進出は関連法で韓国政府の許可が必要。核問題解決を最優先にする李明博(イ・ミョン・バク)政権は慎重に検討する方針だ。

    ◇

 〈北朝鮮の過去の「開放」政策〉 北朝鮮が羅津・先鋒(現在の羅先)地域を特区に定めたのは1991年12月。韓国統一研究院の資料などによると、02年以降には中国国境に近い北西部の新義州や、韓国に近い南西部の開城、南東部の金剛山も特区に指定された。一連の動きは中国の開放政策を参考にしたともいわれる。

 だが南北関係の悪化で、貴重な外貨獲得源だった開城と金剛山での観光事業は08年以降、中断している。

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