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第一生命上場、沸く市場 4月1日株式会社化

2010年3月17日0時11分

写真:108年続けた「相互会社」の看板をおろす第一生命の本社=東京都千代田区108年続けた「相互会社」の看板をおろす第一生命の本社=東京都千代田区

 生命保険2位の第一生命保険は4月1日、相互会社から株式会社に変わり、東京証券取引所第1部に上場する。契約者のうち約150万人が株主になり、国内で株主の最も多い企業になりそうだ。時価総額も1兆円を超える見通し。株の代わりに現金を受け取る契約者もおり、1兆円前後が配られる。消費浮揚を期待する声もある。

■株主は150万人に

 神奈川県内の60代の男性は、第一の終身死亡保険などに20年以上加入している。昨年秋、第一から株式を1株持つか、1株相当の現金を受け取るかをたずねる通知が届いた。「株主になって業績を見守るのもいいかな」と考え、株を受け取ることにした。

 株式会社化で、第一は1千万株を発行する。2009年3月末までためてきた利益を基準に、全部で823万人いる契約者の貢献度を計算。契約期間が短かったり、約束した運用利回りが実際の利回りより高い「逆ざや」になっていたりする契約は低く見積もり、306万人を1株以上の貢献度があると見なした。このうち約半数が株の保有を希望。希望者には無償で株を割り当てる。

 残りの株式は市場に売り出す。売って得たお金は、株でなく現金の受け取りを希望した契約者と、貢献度が1株分に満たなかった契約者に配分される。売り出し価格は1株12万5千〜15万5千円と想定されており、配られる現金の総額は1兆円前後に達する見通しだ。

 株を受け取ることにした大半は「株式の売買経験がない契約者」(第一幹部)で、証券業界は注目する。野村証券は08年に専従のチームをつくり、第一生命専用の特別口座を開発。株式初体験の契約者への対応を進めてきた。

 契約者に配られる1兆円前後の現金総額は、麻生政権が実施した定額給付金の総支給額(1.9兆円)に迫る。「現金の動き方次第では個人消費にプラスに効く可能性もある」(クレディ・スイス証券の市川真一チーフ・マーケット・ストラテジスト)

 1998年のNTTドコモ以来の「大型上場」とあって東証も異例の措置をとる。4月1日は売買が殺到して混乱するのを避けるため、売り注文と買い注文を合わせて価格を決める機会を午後1時の1回に限定。初値が決まったら直ちに立ち会いを終えることにした。第一は6月に初めて開く株主総会のため、約3万人を収容できる幕張メッセ(千葉市)の会場を予約済みだ。

■生保他社、行方を注視

 日本の大手生保は相互会社が主流。多くは戦後の組織替えによるものだが、第一は1902年の創業から相互会社を続けてきた。

 ただ、非営利が基本の相互会社では、契約者から預かった保険料をリスクの高い投資に回しにくい。その点、株式会社化して市場から調達した資金なら思い切った投資もできる。

 今後、少子高齢化で国内保険市場は成長が望めない。08年度の生保業界全体の個人保険契約高は939兆円。ピークだった96年度の約6割まで落ちている。斎藤勝利社長は「海外会社の買収など、成長追求の手段として株式会社が最も優れる」という。

 ただ、株式会社化したからといって成長が約束されるわけではない。市場を納得させる成長戦略が欠かせないが、第一からはまだ具体案は示されていない。今後は株主への配当負担ものしかかる。格付け会社ムーディーズジャパンの三輪昌彦氏は「株式会社化に対する我々の態度は中立的。大事なのはこれから何を始めるかだ」と話す。

 第一を除くと、相互会社の生保は5社。上場時の手数料収入を狙う証券各社は「次の株式会社化」を促す働きかけを強めている。最大手の日本生命は「相互会社でも成長の余地はある」(幹部)と今のところ消極的だが、住友生命の佐藤義雄社長は「経営戦略上、有力な選択肢。常に研究している」と可能性を否定しない。(志村亮、都留悦史)

   ◇

 相互会社 保険業法に基づいて設立され、保険契約者を社員とする社団法人。非営利が目的で、保険料を払う契約者同士で支え合うことを基本理念とする。株式会社の株主総会に似たものとして、契約者の代表による意思決定機関の総代会がある。

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