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食品・化学メーカー、製薬に活路 「不況に強い」拡大へ

2010年3月20日1時47分

写真:協和発酵キリンが7月に稼働させる抗体医薬品の原料製造設備=群馬県高崎市、同社提供協和発酵キリンが7月に稼働させる抗体医薬品の原料製造設備=群馬県高崎市、同社提供

図:  拡大  

 景気に左右されにくい医薬品を巡り、「異業種」からの参入組が急速な事業拡大を続けている。存在感を高めつつあるのが食品メーカーと化学メーカー。いずれも内需低迷や原材料高で本業を取り巻く環境が厳しく、得意分野を応用して製薬大手と差別化を図る戦略だ。

 味の素は4月1日、開発、生産、販売の三つに分かれていた医薬品事業を集約し、「味の素製薬」を新設する。社長に就く豊田友康専務は「兼業メーカーは本業を生かした特色ある開発力が強み。効率を高めながら事業を拡大する」と設立の狙いを語る。

 味の素の強みは、うまみ調味料などに使われるアミノ酸の活用。すでにアミノ酸を使った栄養剤や消化器系などの治療薬をそろえ、規模も製薬中堅並みだ。ただ、医薬品事業は味の素本体と子会社に分かれ、新規事業計画の決定に時間がかかっていた。

 意思決定を迅速にできる新会社では、海外展開を拡大戦略の柱にする。海外では「味の素ブランド」の調味料が浸透しており、食品事業の営業拠点を足がかりに東南アジア進出を検討。医薬品売上高を5年以内に2割増やし、1千億円に引き上げる考えだ。

 技術で差別化を図るのはビール大手キリンホールディングス傘下の協和発酵キリン。2008年に協和発酵工業とキリンファーマが合併し、がん治療の効果が期待される抗体医薬品で主導権を狙う。

 ヒトの免疫の仕組みを使う抗体医薬品には細胞培養技術が不可欠だが、キリン側がビール事業で培った発酵技術と、協和発酵側のバイオ技術の相乗効果が強みだ。19日には、抗体医薬品の原料になる動物細胞をつくる世界最大級の培養装置を、群馬県高崎市の研究所に備えたと発表。7月にも稼働を始め、血液がんの治療薬の開発を急ぐ。

 世界同時不況で化学品事業が総崩れした化学メーカーも医薬品強化に乗り出した。医療機器などと組み合わせた医療ビジネスを広げ、多角化を進める狙いがある。

 帝人ファーマは11年に痛風治療薬を国内で発売するなど、医薬品の品ぞろえを強化。空気浄化膜を使った酸素濃縮装置なども手がけており、医療機器の担当者が医薬品の営業もできるように研修するなど、薬と機器を一緒に売り込める態勢づくりを始めた。販売面の相乗効果で、18年の医薬品と医療機器の売上高合計を現在の2.5倍の3千億円に増やす計画だ。

 一方、旭化成ファーマも骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療薬などの製造・販売を年内に申請し、15年の営業人員を5割増の約1千人に増やす。医療ビジネスを拡大するため、医療機器を製造・販売するグループ会社との事業統合も検討するという。

■新薬開発に弱みも

 製薬業界に「異業種」の触手が伸びている背景には、医薬品は不況に強いうえ、利益率が高いことがある。世界同時不況で業績が急速に悪化した反省から、景気に左右されずに安定した収益を稼ぐ柱が不可欠との判断だ。

 新光総合研究所が東証1部上場企業1207社(金融を除く)の09年3月期決算を集計した結果によると、医薬品29社の売上高は前期比4.9%増。公益事業の電気・ガス(6.0%)に次いで増加率が高かった。売上高に対する経常利益の割合も全業種平均2.6%に対し、医薬品は16.7%だった。

 薬には厚生労働省が2年に1度決める公定価格がある。薬価と医療機関への流通価格の差は業界平均で8%程度と、家電製品などと違って値引きも限定的だ。日本には国民皆保険制度があり、「景気が悪くても診察を避ける傾向はあまりない」(医薬産業政策研究所)との見方もある。

 ただ、厚労省が4月から2年間試験導入する新しい薬価制度は、特許が切れた薬の価格が大幅に下がる。このため、短期間で開発費を回収できるような魅力的な新薬の開発競争が激化するのは必至だ。製薬準大手並みの医薬品事業を抱える異業種も増えつつあるが、例えば味の素の医薬品関連の研究開発費は約100億円と製薬大手の10分の1以下。「単独での開発には限界もある。製薬大手と連携するなど効率的に開発を進めないと、異業種からの参入組は中長期的に埋没する可能性がある」(アナリスト)との指摘もある。(寺西和男)

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