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ガンプラ、国産一筋30年 品質こだわり4億個

2010年4月19日2時12分

写真:最高峰ブランドである「PG」シリーズのガンプラ「ダブルオーライザー」。部品数は1031点。価格は税込み2万6250円と群を抜く最高峰ブランドである「PG」シリーズのガンプラ「ダブルオーライザー」。部品数は1031点。価格は税込み2万6250円と群を抜く

写真:1980年に発売した当時のガンプラ。現在も同じ価格で販売している1980年に発売した当時のガンプラ。現在も同じ価格で販売している

写真:自動操作の機械で、次々と色とりどりのプラモデルのパーツがつくり出されている=静岡市のバンダイホビーセンター自動操作の機械で、次々と色とりどりのプラモデルのパーツがつくり出されている=静岡市のバンダイホビーセンター

 アニメ「機動戦士ガンダム」に登場する人気ロボットのプラモデル「ガンプラ」が7月、発売30年を迎えます。製造元の玩具メーカー、バンダイがこれまでに売り上げた4億個は、すべて「メード・イン・ジャパン」。他社にない加工技術と職人技で、国内生産にこだわります。

 プラスチックが焦げたようなにおいが漂い、人の姿がほとんど見当たらない。そんな薄暗い工場で、1日におよそ1万個分の「ガンプラ」は作り出されていた。

 日本の玩具店だけでなく、韓国や中国向けの輸出も含め、このバンダイホビーセンター(静岡市)の工場がガンプラの中核的な生産拠点だ。

 大量生産の秘密は、24時間動き続ける17台の多色成形機にある。東芝と共同開発した特殊な機械だ。色や材質の異なるプラスチックを同時に加工することができ、いくつかの部品をまとめた「ランナー」と呼ばれる1枚のパネルを18秒で成形していく。平均するとランナー7、8枚でガンプラ1個分だ。

 普通のプラスチック加工は、色や材質ごとに生産工程が分かれるが、この機械を使うと例えば赤、青、黄、白の4色の部品を簡単に1枚のランナーにまとめることができる。4色の成型機でプラモデルを生産しているのは、世界のメーカーでバンダイホビーセンターだけだという。

 このムダを省く量産システムに、職人の技を加えたのがガンプラの特徴だ。表面に凹凸があってはならない部品は、ベテラン社員や協力会社の熟練工がヤスリで金型をわずかに削ってつくりだす。こうしてガンプラは、よりアニメに近い関節の動きを表現できるというわけだ。

 高い品質を維持しながら生産コストを抑えるため、工場内では経費削減を徹底している。部品として使わないランナーの軸部分は、できるだけ細くしてムダを減らした。できあがったランナーは、バーコードで管理された約1万個のケースに自動的に収納され、人手を介さず所定の棚に運び込まれる。成形機へ材料を運ぶのも自動操縦だ。

 プラモデルメーカーは1990年代ごろから、ほとんどの生産拠点を人件費が安い海外に置くようになった。「ミニ四駆」で知られるタミヤはフィリピン、自動車模型の青島文化教材社は中国に、それぞれ生産の中心を移した。

 バンダイもガンプラ以外のおもちゃは、従業員1千人以上が働くタイの工場でつくっている。それでもガンプラの国内生産にこだわるのはなぜか。佐々木克彦ホビーセンター長は「ガンプラはファンの目が肥えていて、常に最先端が求められる。メード・イン・ジャパンの信頼感そのものがブランド価値になっている」と指摘する。

■初期モデル、今も健在

 ガンプラが歩んできた30年間で、プラモデルを取り巻く環境は大きく変わった。主要な販路だった町中の模型店は、個人経営が多く、店主の高齢化や後継者問題に直面するケースが増えた。家電量販店での売り上げが増えるなど販路が広がった半面、テレビゲームなどほかの玩具との競争も厳しくなっている。

 経済産業省の工業統計表によると、「プラスチックモデルキット」の出荷額は、98年の199億円に対し、2007年は113億円。それでもバンダイの上野和典社長は「ガンプラの世界観を深掘りすればファンはまだまだ開拓できる」と強気だ。

 部品を手でひねればパネルからすぐ外せる加工方法や、接着剤を使わずにパチッと合わせるだけで組み上がる設計は、「子どもでも簡単に作れる商品を突き詰めた結果」(上野社長)という。

 取引先の模型店に「認定制度」も導入。熟達した店員が初心者から愛好家までプラモデル作りの腕前にあわせて指導したり、認定店だけで売る専用商品を開発したりして、新たなファンの掘り起こしをねらう。

 今のシリーズは主に五つ。発売当初のシリーズや初心者向けに加え、部品数500個前後で中級者向けの「MG」、超精巧で1千個以上の部品を使うものもある「PG」と広がった。価格は数百円〜2万5千円以上と様々だ。

 一方で、昔のモデルにもこだわり、金型が壊れるなど特別な理由がない限り、生産は打ち切らない。「原作のシリーズが形を変えながら続いている。最近のファンがガンダムの歴史をさかのぼって昔の商品を求めることが多い」(大榎直哉・製品設計マネージャー)からだ。

 ホビーセンターの地下には約1万個もの金型が保管されている。イベントや過去の作品のDVD発売などに合わせて再生産することもあり、80年の発売当時のガンプラも消費税抜きで300円と、当初と同じ価格で売る。進化と歴史を併せ持つのがガンプラの最大の強みだ。

 80年代の「ガンプラブーム」を支えた当時の子どもたちは今、30〜40代の子育て世代。上野社長は「親子2代でガンプラを楽しんでもらえるようにしたい」と期待する。

■世界に誇る「アニメ+技」―記者の視点

 小学生のころ「ガンダム」の再放送があり、よく見ていたのを覚えている。当然、ガンプラを買ったこともあるが、最近の精巧なガンプラを取材で目の当たりにして、「もはや玩具の域を超えている」とうならされた。日本のものづくり企業の多くが生産拠点を海外に移している中で、ガンプラが国産だということにも驚いた。

 ガンダムが放映されていない海外でも、インターネットの動画を通じて、ガンダムの知名度が上がっているという。競争力のある日本発の「アニメ」と、ものづくりの技。この結びつきがさらに強まれば、世界に誇れる成長分野になるのではないか。(内山修)

■バンダイと「ガンプラ」の歩み

1969年  プラモデル生産を開始

1979年  「機動戦士ガンダム」がテレビ放映

1980年  ガンプラ1号商品を発売

1981年  ガンプラブーム。50種類以上の商品展開

1984年  ガンプラの累計販売が1億個を突破

1985年  4色成形機を初めて導入

1990年  部品数が多い「HGシリーズ」発売

1999年  ガンプラの累計販売が3億個を突破

2006年  バンダイホビーセンターが稼働

2010年  ガンプラの累計販売が4億個に(3月)

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