現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス・経済
  4. コラム
  5. 経済を読む
  6. 記事

金融不安、敏感な市場 東京、再び円高・株安に

2010年6月8日1時30分

図:  

図:  

 7日の東京金融市場は、再び円高・株安に見舞われた。菅直人新政権の発足を控え、円安・株高に転じたと見られた矢先に浮上したハンガリーの財政問題。南欧から東欧への不安の「伝染」に、市場は敏感に反応した。

■ハンガリー懸念で再燃

 「我々は今年、対国内総生産(GDP)比で3.8%の財政赤字水準を堅持する」

 ロイター通信などによると、ハンガリーのマトルチ経済相は7日、2008年に資金支援を受ける代わりに国際通貨基金(IMF)と約束した条件の順守を強調し、ハンガリー財政への不信感をぬぐうのに懸命になった。

 ハンガリーの財政不安が浮上したのは4日。同政府関係者が「前政権が財政数値に不正を加えていた」と表明。さらに、「前政権を除けば、財政赤字をGDP比3.8%以内に抑えることが可能だと主張する者は国内には誰もいない」との発言もあり、国際金融市場に波紋を起こした。

 ハンガリーの09年のGDPはギリシャの3分の1程度に過ぎず、ユーロにも加盟していない。仏独英の欧州連合(EU)主要3カ国の金融機関のハンガリー向けの貸出残高(09年末)は450億ドル(約4兆1千億円)で、海外向け全体の1%に満たない。

 にもかかわらず、ハンガリーの問題がユーロの信認を揺さぶる事態になったのは、ハンガリーと同様に財政赤字の削減を条件にIMFなどから資金支援を受けたギリシャも、今後IMFとの「約束」を守れなくなるのでは、との連想を呼んだことだ。

 さらに、ハンガリーに焦点が当てられたことで、欧州の財政不安は東欧諸国にも広がった。仏独英の貸出残高を東欧全体でみると、3500億ドル(約32兆円)以上にまで膨らむ。

 とくに、EU加盟国であるオーストリアの金融機関が、東欧への貸し出しに依存していることも不安を高めている。ハンガリーへの貸出残高は仏独英に迫る370億ドル(約3兆4千億円)で、オーストリアのGDPの約1割にのぼる。チェコやルーマニアにも計約1千億ドルを貸し出しており、「オーストリアの金融機関の経営が悪化するとの観測が強まれば、欧州全体の金融不安に発展しかねない」(中村正嗣・みずほ総合研究所シニアエコノミスト)と見られている。

■反応「失望感の表れ」

 午前の取引から円高ユーロ安・ドル安と株安が進んだ7日の東京市場。「また弱い者たたきが始まった」。国内証券のアナリストは苦笑した。先週は、円安論者とみられる菅新首相の誕生で円安・株高が進んだが、この日だけで帳消しになった格好だ。

 市場の反応について、みずほ証券の三浦哲也チーフマーケットアナリストは「財政指標への信頼感を失う事態がギリシャだけにとどまらないという失望感の表れ」と見る。

 一方で、ハンガリーはギリシャと違ってユーロ加盟国ではないので、通貨政策や金融政策の自由度を持つ。すでにIMFの支援を受けてもいる。このため「市場の反応は行き過ぎ」(国内証券)との見方があるが、「市場が欧州の様々な問題に神経質になっている証拠」(日本の金融当局幹部)とも言える。

 日本の投資家にも無縁ではない。ハンガリー政府とハンガリー国立銀行は、日本国内で円建て外債(サムライ債)を発行しており、アイ・エヌ情報センターによると、計2千億円の残高がある。主に機関投資家が持っているとみられるが、ハンガリーの財政不安でサムライ債が値下がりすれば、損失処理を迫られる可能性がある。

 今後、最も心配されるのは、欧州発の金融市場の混乱が日米欧の病み上がりの実体経済を冷やすかどうかだ。

 日本銀行の白川方明総裁は6日、G20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で「今の段階では実体経済に対する影響が顕在化しているわけではないが、注意深く見ていく必要がある」と述べた。

 折しも、4日発表された5月の米雇用統計が市場予想より悪かった。このため、市場では世界経済のエンジン役の米経済の先行きにもじわりと不安が高まってきた。

 日興コーディアル証券の河田剛シニアストラテジストは「特に対ドルのユーロ安の影響は大きい」として米国企業の収益が下ブレする恐れを指摘。「これまで主流だった世界の景気回復シナリオに疑問符がついた」と心配する。(吉原宏樹、大日向寛文、座小田英史)

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介