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銀行、カネ余り深刻 使い道困り国債へ 損失の可能性も

2010年6月9日1時48分

グラフ:  

 銀行が過去最大規模の「カネ余り」にあえいでいる。お金を借りて投資しようという企業の意欲が低調なためだ。日本銀行が成長分野への融資拡大を銀行に促そうとしているが、現状ではその効果は未知数だ。銀行は使い道に困ったお金で国債を買っており、将来、国債の価格が下がって損失を抱える危険も意識され始めている。

■余るカネ、150兆円に近づく

 日銀が8日発表した5月の貸出・資金吸収動向(速報)によると、国内銀行の月中平均の貸出残高は396兆1237億円で前年同月よりも8兆3867億円減った。昨年は、2008年秋以降の金融危機の影響で、企業がコマーシャルペーパー(CP)や社債を発行しづらくなり、運転資金などを確保するために銀行からの借り入れを増やしていた。それが一段落し、借金を返す企業が増えた。

 一方、預金の平均残高は544兆2860億円で、前年同月より15兆9268億円増えた。企業の売り上げが改善し、手元資金が増えた分をとりあえず預金しておく、という動きが広がったためと見られ、「企業は金融危機の教訓で、いざという時に備えている」(日銀)という。

 この結果、預金残高が貸出残高を上回る「カネ余り」の額は148兆円を超え、過去最大となった。1年前から2割も増え、150兆円の大台に近づいている。04年から120兆円前後で横ばいが続いていたが、ここに来て一段とカネ余りが深刻化している。

■日銀の成長分野融資、効果未知数

 成長が見込める分野にお金が回らない限り、日本経済の成長も望めない――。政府や日銀は、銀行の背中を後押しする姿勢をみせている。

 政府は昨年末、環境や健康など六つの分野の成長を促す「新成長戦略」の基本方針を発表。今後、法人税率の引き下げなど具体策を盛り込んだ計画を出す予定だ。

 この戦略に弾みをつけようと、日銀は5月、環境やエネルギーなどの成長分野に投融資する銀行に、超低金利で貸し出す新制度を打ち出した。9月からのスタートが見込まれている。

 だが、企業が研究開発などのために借り入れを起こして事業を発展させる意欲が落ち込んでいる現状では、実際の効果は未知数だ。大手銀行幹部は「問題意識の共有は大事だが、すぐ効果が出るとは思わない」と指摘する。有望企業が見つかり次第、融資する態勢をとってきた。にもかかわらず、これまで貸し出しを伸ばせずにいたからだ。

■ギリシャ危機でリスク意識

 融資先を見つけられずに余ったお金は、国債市場に流れ込んでいる。銀行の4月の国債保有残高は136兆7266億円で前年同月より3割近く増え、過去最大だった。

 安全資産とされる国債だが、持ちすぎる危険もある。日銀は今年3月のリポートで、銀行の国債残高の増加について「金利リスクが蓄積されている」と指摘。特に、比較的利回りの高い運用期間5年超の国債を地方銀行が買い増していることを危険視した。今後、日本の財政赤字への懸念などで国債価格が下落(長期金利が上昇)するようなことがあれば、損失を被る恐れがあるからだ。

 折しも市場では、ギリシャの財政危機をきっかけに、国債を持つリスクが意識されるようになった。

 日本国債は95%を国内投資家が持ち、外国人投資家が約7割を持つギリシャ国債と事情が異なる。だが、少子高齢化などで日本の預金が減り、邦銀のカネ余りはいずれ解消されると予想されている。そうなると、国債市場は有力な買い手を失い、国債価格の下落を招く恐れがある。(志村亮)

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