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続く金融不安、滞るユーロ スペイン「無人の街」を歩く

2010年6月10日1時21分

写真:人がまるでいないマドリード郊外のセセーニャの住宅開発地域=有田写す人がまるでいないマドリード郊外のセセーニャの住宅開発地域=有田写す

 欧州の金融に不安が漂っている。単一通貨ユーロを使う国のうち、スペインやギリシャなどが借りまくり、ドイツやフランスなどが貸し込む。そんな仕組みが一昨年の金融危機で行き詰まり、今年の財政危機で凍り付いた。9日には東京株式市場で今年最安値を記録。世界経済の不安要因となっている現場を歩いた。

 SF小説のようにある日突然、街から住民が消え去ってしまったら、こんな風景になるのではないか。そう思わせるのが、スペインのマドリード郊外にあるセセーニャの宅地開発地域だ。マンション群に、人の姿はほとんどない。「うちの棟は120戸分あるが住んでいるのは30家族。もっと入ってもらわないと困るんだけど」と住民の男性(64)はいう。無人の棟も目立つ。

 スペインのあちこちに見られる住宅バブルの残骸(ざんがい)の一つだ。2003年ごろから住宅建設が引っ張る好景気が続き、08年の金融危機ではじけた。金融機関は今、その後遺症に苦しんでいる。

 とくにひどいのが、全国に45行あり、金融部門の半分を占めるカハスと呼ばれる貯蓄銀行だ。日本の郵便貯金が林立し、貸し出しもするイメージだ。地方政府が経営権を握るところが目立ち、公共性のある融資をするのが建前だが、住宅ブームを好機とみて貸し込んだ。不動産関連融資は貸し出しの6割にのぼる。

■貯蓄銀、大半が倒産状態

 貯蓄銀行協会は「貸し倒れに備え、十分な引当金をつんでいる」というが、ファン・カルロス国王大学のファンラモン・ラリョ教授は「不良債権が表に出ないよう期間をのばして貸し続けてきた。ほとんどの貯蓄銀行は倒産状態といっていい」と見る。スペイン中央銀行は、比較的健全な貯蓄銀行に合併させて危機をしのごうとしている。ただ、すんなりと進むかどうかは分からない。

 99年に通貨ユーロに加わって以来、お金を借りるときの利息は、欧州中央銀行(ECB)が決める低めの金利に基づくことになった。一方でインフレ率は高め。実質的にゼロ金利かマイナス金利になり、借りた方が得になる環境が生まれた。住宅バブルの種がまかれた。

 国内の預貯金では貸し付けはまかなえず、外国からの借り入れが03年から増え始めた。09年末のスペインの国と民間に対する貸し付けでは、ドイツが2400億ドル(22兆円)とトップで、フランスが2200億ドル(20兆円)と続く。それぞれ、自国の国内総生産(GDP)の7%、8%にあたる規模だ。両国はギリシャにも貸し込んでいる。

■貸手の独仏銀にも波及

 マドリードの証券会社M&Gのニコラス・ロペス調査部長は「国内の借り入れ需要が乏しいドイツなどの銀行がスペインの銀行にお金を貸し、今度はスペインの銀行が住宅ローンを組む人にお金を貸した」。ユーロの中心国のお金が南欧に流れ、消費を促す。輸出で中心国はうるおう。通貨統合が生んだそんな仕組みは、しかしもう動かない。

 欧州財政危機で5月初め、ギリシャだけでなくスペインの銀行もお金を調達しにくくなった。健全とされる同国最大のサンタンデールでさえ、1%も2%も上乗せ金利を求められた。そうした国の国債をたくさん持ち、民間への貸し出しも多いと見られた独仏の一部銀行も危ないと見られ、お金の出し手が減った。

 ロンドンの資金ブローカー、ICAPのエコノミスト、ドン・スミス氏は「銀行はお金を他行に貸そうとせず、抱え込む。金融危機の直後に現れた傾向が、また復活している」という。お金の流れが滞れば景気も滞る。それは金融危機で証明ずみだ。(マドリード=有田哲文)

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